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禁じられた森

もっと深く。

もっと闇の中へ。

あなたにはもう、準備が整っている。

その手にはもう、ランタンが握られている。

霧の立ち込める 暗く肌寒い森の中へと、

さぁ、入ってお行きなさい。


きっとこの先あなたは暗闇の中で、

数々の恐ろしい怪物たちの姿を目にすることでしょう。

でもご安心なさい。

それらはすべて幻影にすぎません。

そのおぞましい姿が、

どれだけあなたの心を揺り動かし

過去の痛みや悲しみをよみがえらせ

今にも噛みつかれるのではないかというリアルさをもって

あなたに襲い掛かってきたとしても

彼らは、あなたに触れることさえできない幻、

霧のような存在にすぎないのです。


あなたはその霧の中を、そっと通り抜けていきなさい。

ひやりとする水の滴を、顔で、手足で、全身で感じなさい。

そうすればあなたは気づくのです。

「そうか、私はもう大丈夫なんだ」と。

何故なら、その幻影たちは、あなたに触れるとたちまち消えてしまう幽霊のようなものなのですから。

あなたはしばしその場に佇み、彼らの死を弔うかもしれません。

そう、それでいいのです。

彼らが望んでいるのは

「私はここに存在していたのだ」という記憶を残すこと

その存在をあなたに知って、認めてもらうこと

ただそれだけなのですから。

それが叶いさえすれば、彼らは安心して天国に行くことができる。

だから、彼らの存在を無視することなく

そっと 弔いの気持ちと共に

石碑となる小石をそっと供えてあげること

彼らの存在を、記憶を、生きた証を

そっと胸で感じてあげること

それが彼らが望んでいるすべて。

だからあなたは、怖がる必要などないのです。


過去の記憶を 過去の痛みを

風化させてはいけない

決して無きものにしてはいけない

さもなければ、彼らは何と浮かばれない存在なのだろうかと

そう思いませんか?

死者を感じよ

死者を弔え

彼らの記憶を、安らかに眠らせてあげるために

あなたの命を、さらに輝かせるために

Kana


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