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チットワールド 超異分野学会での最悪のプレゼン、過去最高の議論

こんにちは、さほ_チットです。

これから、”チットワールド”と題して、日記感覚で日々感じたことをまとめていきます。研究をしながら高校生活を送っている事、失語症を持つ父と向き合っている上で感じる事を、素直に、ありのまま、文章に書き起こしていきます。


私だから感じられる事を、皆さんに届けます。


5月19日、超異分野学会に参加しました!

超異分野学会の中で、私はサイエンスキャッスルスプラッシュの登壇者に選出されていました。中高生研究者が本気の研究を発信する場。

私は研究で、誰よりも叶えたい明確なものがある。”失語症の父との会話が難しい”凄く辛くて苦しくて、話せない父と話せないまま時間が過ぎていった過去からくる、強い想い。失語症を持っている方とも、楽しい会話、つまり言語障がいの有無関係なく雑談を楽しめる世界を創りたい。

この想いの元、研究をかれこれ3年間続けてきた。

でも、今日のサイエンスキャッスルスプラッシュでの私は違った。

こんな世界を創りたい」って言えなかった。
不安と嘆きで、実現したい世界を語れなかった。
色々、わからなくなっていた。

正直、マイクを持つことを人生で、初めて怖いと感じた。

私の率直な感想 ↓ ↓ ↓

私はいつも、人前で話すときに”目の前にいる貴方の心に、想いを届けること”を目標に話している。

だって、大事な、貴重な、数分間を頂けるんだから。人の時間は有限だから、命と同等レベルに奪ってはいけないものかもしれないから。

〈発表1日前…〉

実証実験の初日。失語症の父が、初めてリハビリ施設へチットをもっていった。父が理解できるように、電源の仕組みから、壊れた場合の対処法まで、ゆっくり説明した。

私は、内心、学校から帰るのが楽しみでたまらなかった。ワクワクしていた。「どんな結果が返ってくるのかな?」「どう改善したら更によくなるかな?」「どのくらい使ってくれるかな?」

期待で心がいっぱいだった。

そして、学校から帰り、どうだったか尋ねた。失語症という倫理的に難しい障がいを扱うので、もちろん誘導的な研究にならないように、最善の注意を払った。

すると、数十秒考えた後、父から返ってきた返答は、「わからん。」多分、何かを言わないといけないと察して、頑張って発した一言なのだろう。

少しショックだった。どうしようか不安に思う。

続いて、5段階の評価項目からの評価を試みて貰った。しかし、項目の意味を全て理解できていなかったのか、「これ」と言いながら、険しい顔をして、指は二転三転している。

凄く不安を感じた。父が、私に正しい評価をするのが、難しければ、この研究は破綻ではないだろうか。もしかしたら、いらなかったのかな。

色んな考えが、頭を過ぎる。

デバイスの形状やデザインを考案する部分では、コストはかかるが、何パターンも試作を創る事で、体感で評価しやすいように工夫を行っていた。しかし、その日の経験というのは、”思い出すこと”、”1から言葉に起こすこと”、”目に見えない事”、様々な困難があった。


チットを評価してもらえないことは私の心に大きなショックを与えた。

私が創りたい世界が一生実現できないかもしれない

研究として、成り立たないかもしれない

当事者である父の考えが聞けなければ、勝手に押しつけている、1人が誰よりも満足できるモノではなく、ただのデバイスになってしまう。

もしかしたら、実はデバイスを全く使わなくて、私に気を遣ったのかもしれない

この研究に熱い想いをもっていて、3年間同じテーマを研究し続けてきたからこそ、色々な事が頭に浮かび、本当に色々わからなくなった


母は「パパが自由にチットを評価できたら、話せるってことだから、チットはいらないよね。」

たしかに。でも、かなり大きなもやもやが心に残っていた。

〈当日〉

超異分野学会 会場
1番前の席で、悩む


リハーサル中、スタッフさんが尋ねる。「緊張してますか?」
頑張って取り繕った。昨日の評価してもらえなかった事を悟られないよう。

プレゼンが近づくごとに、心拍数の高まりを感じる。


マイクを手に持つことが、人生で一番怖かった。


今まで、感じたことのない、恐怖をかんじた。

プレゼン中、私の研究を語りながら、昨日の失語症を持つ父からのフィードバックを得られなかったことを、何度も思い出した。

話しながら、フィードバックを得ることができないなら、”失語症を持った方と雑談する事は不可能では??”、私の中の悪魔が何度も自問してきた。話せば話すほど、わからなくなっていった。


気づけば、最後の一枚。夢を語る為に創ったスライド。


実現への不可能性が、心を押しつぶして、言えなかった。


唇の震えを抑え、早口で「モノづくりで、麻痺と失語の壁を越えていきます」それだけ、言い残した。

嫌なほど、はっきり覚えている。未来を語れなかったこと。

隣りの男の子に「お疲れ様、プレゼン上手かったです」って言われたとき、ありがとうとは言えず、「絶対にそんなことないです」、といった。


そのあと、ポスターセッションや超世代チャレンジが行われた。そこでは、”失語症者のチットの使用に対する、評価方法”について、話せそうな大人がやってきたら、包み隠さず、すべて相談した。

ありのままの自分を見せて、悩みを直接ぶつけたから、多くの研究者や会社の方が相談に乗ってくださった。

そして、色々な大学の方、会社の方、研究者の方が、協力を仰いでくださった。ここの部分なら手伝えるから、いつでもご連絡ください。共同研究を実施しましょう。様々なお声がけを頂けた。

漠然とした”評価方法”に対するもやもやに、皆さん本気でぶつかりに来てくださって、閉会式さえも足を運ばないまま、議論に没頭した。


主に頂いた協力の話では、会話データの分析を行うお話、チットへの感情導入に対するお話、アプリ開発であれば、いつでも手伝うというお話。

会話データの、専門家が行う会話分析により、普遍的で広義で解明が難しい”雑談”が明確になる。雑談が明確になればもう一度雑談について再定義できるし、会話の量がどの程度増えたのか数値的にみることができる。

チットへの感情導入により、毎回同じ音声が流れる仕組みではなく、毎回その時の気持ちに合わせての音の強弱が変化する、人間と人間がいて、チットがきっかけを創るだけの最も人間らしい雑談を創りあげる事ができる。

アプリ開発を行う事で、ハードウェアでは解決できなかった事も可能になるかもしれない。また、ハードウェアでありながらソフトウェアというのも、一般とは少しずれていて、凄く面白いかもしれない。

評価方法としては、当事者だけではなく周りの人の声を聴くこともいいかもしれないし、周りの声の質がどう変わったのか、会話の量がどのように変化したかを見ることで、解決するかもしれない。


長い目でみると、研究を始めた中学2年生のときでは、評価が難しい、デバイスを外でも使用してもらって評価しよう、とは思わなかったと思う。

だから、ここまで高度な疑問を持つことができたのは、自分として凄く誇らしいし、研究者としての成長を感じた。

また、超異分野学会の前日まで研究に没頭していたからこそ、今回のもやもや、プレゼンの失敗は起きていた。

また、このもやもやが生まれていなかったら、ここまで深い議論はできていなかったと思う。

過去最悪のプレゼンができ、過去最高の議論ができた日である。

まだまだ、研究者としては浅いですし、たくさんの悩みと向き合い、葛藤を重ねながら、成長していきたいと思います。


サイエンスキャッスルスプラッシュを聴いていた皆さんの5分を、過去最悪のプレゼンで奪ってしまった事は、本当に申し訳ありませんでした。

また、ポスターブースにて、過去最高の議論ができたことは、嬉しく思っております。ありがとうございました。


藤原咲歩は、こんなもやもやでは潰れたりしません。ご安心ください。

しかし、この分野は凄く難しい分野だからこそ、あまり手がつけられていません。10年かかったとしても、どんなに遠い道のりだとしても、”失語症を持つ方と、雑談ができる世界”の実現へ向けて、精一杯もがいていきます。

つまり、高校生で、研究が終わることはありません。
深化、進化、新化、し続けます。

あ…実現したい世界が語れるようになってる。。。。。
どうやら、この1日で凄く成長したみたいです。

これからも、応援よろしくお願いします。

藤原咲歩

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