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弱い紐帯の強みとしての社会福祉士


こんにちは。ライフキャリアカウンセラーのmaruねえです。

今日は私のもうひとつのお仕事である社会福祉士についてお話しようと思います。

社会福祉士ってどんな資格?

社会福祉法によると、下記のように定義されています。


 「社会福祉士」とは、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第47条において「福祉サービス関係者等」という。)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第7条及び第47条の2において「相談援助」という。)を業とする者をいう。

「スクールソーシャルワーカー(SSW)」
「医療ソーシャルワーカー(MSW)」
あたりが、よく耳にする職業ではないでしょうか。数年前にNHKの「仕事の流儀」でコミュニティーソーシャルワーカー(CSW)の勝部麗子さんが取り上げられてたり、同じくNHKでソーシャルワーカーを扱った「サイレントプア」というドラマも製作されたりして、少しずつ認知されるようになってきました。

資格を取得するためにはわりあい時間がかかります。最短ルートは大卒の人の場合で、養成機関に1年通って受験資格が得られます(実習あり)。学生の場合は福祉系大学での単位取得後に受験資格が得られます。大学を卒業していなくても、指定の施設での相談業務を4年以上経験後、養成機関に1年以上通えば受験可能です。

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学ぶ内容は、社会福祉法にあるあらゆる制度の成り立ちと支援の仕組み、そしてその実践です。

どんなところで働くかというと、地域包括支援センター、病院、社会福祉協議会、学校、母子生活支援施設、子育て支援センター、婦人保護施設、児童相談所、就労支援施設、企業、障害者支援施設、刑務所、法曹機関など、多岐に渡ります。主に高齢者、障害者、女性、子どもなどをを支援することが多いです。

名称独占資格なので(看護師や医師のように、その資格がないと業務が行えないのは業務独占の資格といいます)社会福祉士でなくてもできる仕事はたくさんありますが、福祉の専門家を育てる目的もあって作られた資格であり、今はだいぶ公的機関などの相談職としては要件に“社会福祉士必須”となるところが増えました。


私が社会福祉士になった理由


企業に勤務しながら大学に入り、心理学を学んだ私は、その次に臨床心理士資格を取るか、社会福祉士資格を取るか悩みました。心理を深めるか社会的支援を深めるか、どちらがやりたいことかなあとずっと考えていたんです。

 私はライフワークとして、NPO法人でもう20年以上シングルマザー支援に携わっているのですが、そこで求められるのは、一番は現実的な支援なんですね。生活していかなければならないわけですから。そこでは資格を取る以前からずっと実践としてソーシャルワークを先輩から学んだり実践したりしていました。その中で動きながら(もがきながら?)、制度の溝や矛盾、そして連携の曖昧さなどの課題を感じて、支援を繋いでいける社会福祉士資格を取ることに決めて、専門学校の通信制に通い始めました。

 学生は大多数は何らかの支援に携わっている方たちでした。私は大学も通信制だったので、どちらの学生生活もかなり幅広い年齢層の人たちと交流することができました。下は家庭の事情で働きながら通信に通う18歳から、上は70代の向学心旺盛な方まで、職種と背景も多様な方たちと知り合うことができたのは、貴重な経験でした。
 これからの進路に迷う高校生や若者がいたら、一旦社会に出てからでも、いつでも学び直しはできるし、通信制もなかなか面白いよ、視野が拡がるよと自信を持って伝えたいです。

ソーシャルワーカーとしての実際

話が若干それてしまいました。さて、無事に国家資格を取得し、やりたかった公的機関での女性の支援員となりました。実際に組織の中でやってみて思うことは、まだまだこの資格の専門性は発展途上だなということです。(これについては、また別の記事で書こうと思います。)

取り組む業務の内容は多岐に渡りますが、その中心は、当事者に寄り添いつつ、当事者の支援になりそうな他部署、他機関、家族、友人、地域など、色々巻き込んで今よりもよりよく生きることができるよう支援していくこと。そのための調整役という側面が大きいのかなと思います。困難を抱えた相談者、それが生活とメンタルと両方の側面での困難であれば、それはひとりで背負うことは到底無理な話です。少しずつ多くの人に関わってもらって、そしてみんなが少しずつ肩を貸しあうような支援というのが、一番自然でいいんじゃないかなあと思っています。

カウンセリングとこういったソーシャルワークの相談の大きな違いは、自分が相談者の足掛かりとはなるけれども、がっつり正面から取り組まないということです。カウンセリングは決まった日時に決まった時間という枠組みがあるからこそ、そこでじっくりとクライエントと向き合って、クライエント自身が自分を振り返ったり見つめ直したりできる。でもソーシャルワーカーは、もちろん相談にはのるけれど、横か斜め後ろぐらいを伴走しながら、たまに休むときに使う手すりみたいな役割で、相談者が色んなところで休めるように色んなベンチをたくさん作るようなイメージでしょうか。で、気が付いたら休めるようになった相談者が元気になっている、そんな存在がいいんじゃないのかなと思っています。

社会福祉士というものがある意味

人はひとりでは生きられません。そして困難を抱えた人は周囲に助けを求めにくい人が多い。時には周囲に攻撃的になったりすることもあります。でも、それはそこまでのことを体験してきたということ。そんな人たちが、「あれ、ひとりじゃないかもしれない。」「あれ、何かちょっと頼れるところが増えた気がする」「あれ、こんなこと、お願いしてもいいんだ」と、気づいて、少しでも生きやすくなってもらえる支援ができたらいいなと思っています。そうやって、私の手から離れて、元気にその人がいるところで穏やかに過ごせているのを見るときが、私が一番「よかったなあ」と感じる時です。そしていろんな人が関係して、少しずつつながる支援ができたとき、やってて良かったなあと感じます。

社会学者のグラノヴェッターは「弱い紐帯の強み」という概念を唱えました。家族や親しい間柄ではなく、少しずつの弱いつながりがたくさんある方が、有益な情報が得られたり、その人にとって必要なものが得られたりする、という考え方です。社会福祉士とは、当事者を中心にしてこの「弱い紐帯」をたくさんつないでいく仕事ではないかと考えています。そして、それは社会福祉士だけではなく、どの支援者や指導者にも必要な視点なのではないかなと思います。


最後までお読みいただいてありがとうございました。反応いただけると、とってもうれしいです。

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