田舎の公立中学校で外部指導者を導入してみた話④

今回で連載4回目となりました、実証レポート!

本記事では、7月の上旬に行われました地区中体連について書かせていただきます!

前回の記事では、多くの方からご覧いただきまして誠にありがとうございました!

1,2回目と比べて4倍ほどの数の閲覧数がついており、とても嬉しかったです!! まだ、ご覧いただいていない方は是非、ご一読ください!



第1回目:佐賀県鹿島市立東部中学校サッカー部で『sukusupo』の実証実験~第一弾~を開始!①|北原誠大/株式会社WIDE|note

第2回目:
佐賀県鹿島市立東部中学校サッカー部で『sukusupo』の実証実験~第一弾~を開始!②|北原誠大/株式会社WIDE|note

第3回目:
佐賀県鹿島市立東部中学校サッカー部で『sukusupo』の実証実験~第一弾~を開始!③|北原誠大/株式会社WIDE|note


1、地区中体連のレギュレーション

東部中学校が属する、鹿島・嬉野・藤津地区にはサッカー部が5チームあります。

地区中体連では、この5チームで五角形の予選リーグを戦い、勝ち点上位2チーム決勝に進出するというレギュレーションでした。

こんな感じです⇩

組み合わせ


そして、サッカーに関わりの無い方には、なかなか聞き馴染みのない「勝ち点」という言葉。

通常、Jリーグなどでは

勝利:勝ち点3、引き分け:勝ち点1、敗北:勝ち点0

として計算され、争われます。

ただ、今回の中体連予選では、60分で決着がつかなかった場合、即PK戦を行い、

勝利:3、PK勝ち:1.5、PK負け:1、敗北:0

として、計算されるルールでした。

このルールを正確に理解することが、予選突破を目指すうえで後々大切になりましたので詳しく説明をしました!

2、東部中サッカー部の立ち位置

次に、鹿島・嬉野・藤津地区における東部中サッカー部の立ち位置についてです。

前述したように、この地区には東部中、西部中、嬉野中、塩田中、大浦・多良中(合同チーム)の5チームがあります。ざっと、これらのチームを私の主観で分析してみます。

西部中:県の新人戦で3位と実力のあるチーム。主将を中心に、まとまりのあるチームという印象。

嬉野中:2年生が大半のチーム構成ではあるが、主将の3年生の選手は県選抜にも選出される実力のある選手で、彼が強烈な存在感を放つ。彼のキャプテンシーもあり、一体感のある非常に強いチームという印象。

塩田中:小柄な選手が多いが、全員がハードワークをしてくるチーム。素晴らしい指導者のもと、しぶといサッカーをする印象。

大浦・多良中:チームとしての完成度が非常に高く、広くサイドを使った攻撃をしかけてくる。多彩なチャンスメイクで、ゴールを目指す。今大会、優勝が本命視されているチーム。

東部中:個々のサッカーの技術は非常に高いが、球際の強さや走り切る力などに欠けており、守備に脆さがある。チームのために1人1人がプレーできれば、他を脅かす存在になり得るが、これまで新人戦などの大会で目立った実績は無い。

と、まあこんな感じです。

これまでの実績をもとに、地区内での東部中の立ち位置客観的に分析すると、1回戦負けのチームです。とはいえ、個々の能力は高く、チームとしての伸びしろは大きいため、「大穴」といったところでしょうか。。

今大会のレギュレーション上、一敗でもすると決勝進出はかなり厳しいものとなるため、各チーム、初戦はかなり重要となります。

そんな東部中が、予選一試合目で対戦する相手が、大浦・多良中
今大会の優勝候補のチームです。

そして、二試合目が塩田中
塩田中とは、大会の2週間ほど前に練習試合を行っており、そこでは0-0の引き分けでした。ただ、内容としては負けてもおかしくないような内容でした。

さて、東部中はいかにして、この2チームと戦ったのでしょうか!

3、予選1試合目 vs大浦・多良

大浦・多良の分析として、ある程度「ボールを運べる」チームというのがありました。

そこで、事前準備としてトレーニングで重点を置いたのが

・1vs1の守備
・ゴール前での体を張った守備
・アプローチの速さ

要は、守備の強度を高くするためのトレーニングです。
まずは、失点せずに試合を進めることが最重要課題だと判断しました。

そして次に、いかにして得点を奪うかです。
チームの狙いとして共有したのが、「高い位置でボールを奪ってショートカウンター」です。

相手のシステムは4-4-2(下図参照)

4-4-2のフォーメーション(赤:東部、青:大浦多良)

それに対して、東部中も4-4-2を敷き、自分がマッチアップ(対峙)する相手を明確にしました。(例えば、相手のCB:センターバックに対して東部のCF:センターフォワード、相手のSB:サイドバックに対して東部のSH:サイドハーフ)

1人つき1人、マークするべき相手が決まっている状態

その上で、相手のCB、SBの位置でボールを奪い、時間をかけずにゴールへと迫る。

ボールを運ぶことができるチームに対して、高い位置から守備を仕掛け、得点を奪う。良い守備を攻撃に繋げることをテーマに、勝利を目指します。

高い位置(相手のゴールに近い位置)でボールを奪う

試合は早々に動きます。前半の序盤、東部中のCFが狙い通り、相手のCBからボールを奪い、そのままシュート!見事に先制点を奪います。1-0!

しかしその後は、大浦・多良中の攻撃力を前に、なかなかチャンスを作ることが出来ません。さすがは優勝候補、前線からプレスをかける東部中に対して、手薄になった背後のスペースをシンプルに利用したり、ドリブルでプレスをかわすなどして、多彩に攻めてきます。

特にSBの背後のスペースを何度も突かれます。そこで、中盤で起用していた守備力のある選手とバックラインの選手のポジションを入れ替え、守備の強化を図ります。

ポジション変更も功を奏し、何度もチャンスを作られながらも粘り強い守備で相手の攻撃を押し返します。そして、勝利を意識し出した、後半終了間際、、サイドで突破を許しクロスを上げられ、そのまま失点。スコアは1-1と、同点に追いつかれてしまいます。。

そして、後半終了のホイッスル。試合の行方はPK戦へともつれることとなりました。

「PK戦・・・キツイな・・・」

正直に言うと、PK戦、私自身は全然勝てる気がしませんでした。
というのも、東部中の選手はメンタルが弱いと思っていたからです。PK戦はメンタル勝負。弱気になった方が負けです。

しかし、「指導者が弱気では勝てるものも勝てない・・!」と自分を奮い立たせ、多少、かっこつけながら

「いいかみんな。今、どっちに蹴るか決めろ。そしてゴールキーパーを見る必要はない。自分が決めた方向に、思いっきり蹴ってこい!止められるくらいなら外してしまえ!」

「そして、キーパー。自信を持って自分が思った方向に飛べ!止めたらヒーローやぞ。」

と選手を送り出しました。クサいことを、かっこつけながら真面目な顔で言うことも、時として指導者には求められるのです。(?)

キッカーの順番を考える北原

そして、結果から言うと、PK戦、東部中はキッカー全員が成功GKが2本のPKを阻止し、見事勝利しました!

本当にみんなキーパーを見ずに思いっきり蹴るもんだから、心臓飛び出るかと思いましたが、私がおもっている以上に、みんなメンタル強かったみたいです(笑)

ナイスキーパー!!
 ナイスシュート!
ああ、、青春だ。。。

ということで、東部中は初戦で勝ち点1.5をゲット、大浦・多良中は勝ち点1をゲットということになりました。

4、予選2試合目 vs塩田

翌日、予選二回戦は塩田中との対戦。

2週間ほど前の練習試合では、0-0の引き分けでしたが、「次、戦ったら負けるんじゃないか?」と感じたことを鮮明に覚えています。

予選通過のための条件は、「60分で勝利すること」です。
同点でPK戦に突入すると、勝ち点は1.5または1しか得られず、トータル勝ち点が2.5~3になるため、上位2チームに入ることが難しい状況でした。

この塩田戦、前回の大浦・多良戦と違い、東部中がボールを保持する時間が増えるだろうと予測していました。そのため、1回戦よりもゴールに迫るチャンスは増えると考えていました。

ただ、東部中の選手の特徴として

「近くの人にばかりパスをする」
「崩し切ってからしかシュートを打たない」

という課題があることを感じていたため、試合前の指示として

「後ろの選手(DFなど)は遠くの選手を意識すること」
「前線の選手(FWなど)はゴールを意識すること」

を伝えました。

サッカーをしたことがある人なら理解ができるかもしれませんが、「遠くの味方に蹴ろうとして、キャンセルし、近くの味方に蹴ること」は容易にできますが、「近くの味方に蹴ろうとして、キャンセルし、遠くの味方に蹴ること」は難しいです。

それはなぜかというと、「視野」と「ボールの置き所」の問題があるからです。

「視野」
遠くの味方に蹴ろうと思うと、自然と視野は広がり、間接視野の中に近くの味方が入ってきます。
その反面、近くの味方に蹴ろうと思い、自身の周辺ばかり見ていると視野は勝手に狭まり、遠くの味方を視野の中に捉えることが難しくなります。

「ボールの置き所」
遠くの味方に蹴ろうと思うと、ボールの置き所は自分の足元から少し離れたところ(一歩踏み込んで蹴れる場所)になりますが、最初から近くの味方に蹴ろうと思っていると、勝手にボールが自分の足元に入りすぎてしまい、遠くの味方に蹴ることができなくなってしまいます。

つまり、遠くに蹴るつもりでいれば、近くに蹴るという選択肢も残るので、お得なんです!

また、サッカーではシュートを打てば、敵に当たってラッキーな形で点が入ることが少なくありません。逆に、シュートを打たなければそのようなラッキーが起こることもないのです。
ですので、前線の選手は強引にでもシュートを打つことが大切なんです!

よく、「シュートで終われよ!」という声がサッカーの現場で聞こえてきますが、そういった理由もあるんです!
(この声掛けは自分の恩師が一番嫌いって言ってましたが。(笑)その理由を話すと長くなりますのでやめておきますが、色んな考え方があることは事実です!)

というわけで、攻撃に関する意識づけを行い、臨んだ塩田戦、結果は2-0で勝利し、見事決勝進出を決めてくれました!
正直に言うと、もっとチャンスがあったので得点をたくさん取ってほしかった。。(笑) ただ、たくさんシュートは打ってくれました!

そして、この試合で感じたのが「交代のタイミングの難しさ」です。
3年生にとって、最後の大きな大会ですから、出場機会を与えてあげたい。控えには4人の3年生が居ました。

「スコアがある程度開いたら、3年生を出そう」

そう思っていましたが、後半の残り10分くらいまで1-0の展開が続きます。そして、2点目が入って、やっと3年生を出場させることができたのは試合時間も残り7分ほどとなったころでした。




もちろん、1-0のスコアの段階で交代させることもできました。

しかし、「交代させて失点したらどうしよう」「確実に決勝まで進ませてあげたい」という思いと「1分でも長く3年生を出場させたい」という思いが交錯します。。

そして結局、2-0になるまで私は決断ができませんでした。

決断の連続。。


何が正解かは分かりません。もちろん、試合に長く出場できなかった悔しさで成長することもあるでしょうし、逆に試合に出たからこそ経験し、成長することもあるでしょう。

とにかく、自分にまずできることは、1試合でも多く、このチームで試合をできるように手助けすること。これに尽きます。そのために最善を尽くすしかないのです。

改めて、アマチュアスポーツの指導者の難しさを実感しました。。

とはいえ、決勝進出できたことは素直に嬉しかったです!
決勝戦は1週間後。1週間、みっちり練習をし、勝利のために最善を尽くします!

5、決勝戦 vs嬉野

決勝戦の相手である嬉野中。

前述したとおり、チームの印象としては以下の通りです。

2年生が大半のチーム構成ではあるが、主将の3年生の選手は県選抜にも選出される実力のある選手で、彼が強烈な存在感を放つ。彼のキャプテンシーもあり、一体感のある非常に強いチームという印象。

また、私は嬉野の予選2試合目の主審を務めましたので、そこで見たものをベースにチームの特徴をより深く分析しました。

嬉野の予選2試合目、相手は西部中。最終的なスコアは5-0でした。
やはり、目を見張ったのは攻撃の要である、主将の選手。中盤でボールを受けると、スピードのあるドリブルで相手を抜き去り、非常にクオリティの高いシュートやクロスを繰り出します。1人だけレベルが違いました。

また、そんな彼と一緒にボランチ(中盤の真ん中)を務めていたもう一人の選手も相手の脅威となっていて、長いボールを駆使してサイドに展開したりと、非常に厄介なプレーヤーでした。

嬉野中はボランチの二人が攻撃の起点になっていて、この二人にボールを集めようとします。彼らが良い位置でボールを受けることになると、難しい戦いを強いられることとなります。

逆に言えば、彼ら二人にさえボールを触らせなければ、十分勝機はある。そんな印象でした。そこで、私は決勝戦で大幅な戦術変更を決断しました。

まず、一番大きな変更点として、フォーメーションの変更です。
これまでの4-4-2から5-4-1に変更をしました。

赤:東部(5-4-1) 青:嬉野(4-4-2)

5-4-1を敷いた理由は2つあります。

1つは、ボランチにパスを入れさせないため。
もう1つは、相手のロングボールに対処するためです。

・「ボランチにパスを入れさせない」

5-4-1の「4」の部分は、一般的な4人横並びの形ではなく、ひし形の形にしました。それは、「中盤4人で相手のボランチ2人を見る」ためです。

中盤4人で相手のボランチ2人を見る


相手の最終ラインから、ボランチにパスを絶対に入れさせない。そのために、中盤で数的有利を作ります。
ただ、このように真ん中を厚くすると、相手のサイドバック(SB)に対して強く守備に行けなくなります。ただ、それは良いのです。敢えて行かないのです
というのも、相手のCBやSBの選手はボランチのパスコースをふさがれた場合、シンプルにロングボールを前線に蹴ってくることが事前の分析で分かっていました。相手の最終ラインに対しては、そんなに強く守備にいかず、中盤のパスコースさえ切っておけば大丈夫だという自信がありました。


・「相手のロングボールに対処する」

前述したように、相手の最終ラインは中盤にパスコースが無ければ前線に向けてシンプルにロングボールを蹴ってきます。せっかく蹴らせたロングボールも、それに対処できなければ失点に繋がります。そこで、相手の前線4人に対して数的有利を作るために5人の選手をバックラインに並べました。このようにすることで、必ず後ろにフリーの選手がいて、カバーが出来る状況が作れます。

最終ラインで数的有利(赤5人>青4人)

以上、2点を大きなテーマとし、選手たちに戦術を浸透させます。

いつになく真剣な表情の生徒たち(笑)

(他にも、細かいところで言えば、セカンドボールを拾う、コンパクトに保つため、ラインの上げ下げを細かく行う、などありますが、細かくなりすぎるのでここでは割愛します。)

ただ、当然ですが、戦術だけでは試合に勝利することなどできません
やはり、個々の選手が1つ1つのプレーで負けないこと、味方がミスをした際に他の選手がカバーをすること、など個々のプレーの質をあげることも大切なことです。

そこで、1週間のトレーニングでは、1vs1の守備の練習や、プレスバック、カバーリングの練習、組織的に守備をする練習などをテーマに、守備の強度を高く保ちながらトレーニングに励みました。


一生懸命トレーニングに励む生徒たち



気付かれたかもしれませんが、1週間、攻撃のことをほとんど準備しませんでした。
というのも、攻撃に関してはあまり心配が要らないくらい、みんなの能力を信頼していました。1人でも打開できるし、コンビネーションでも打開できる。

「無失点でいけば、必ずどこかで得点を取ってくれる。守備を頑張れば絶対に勝てる。攻撃は自由にやってもらおう。」

日頃のトレーニングを見ていて、そこには自信・信頼がありました。

そして試合前日の練習を終えて、1週間すごくいい準備ができた手応えがありました。


そして、試合当日。

結果は、2-0の完封勝利!優勝!県大会出場決定!!

決勝ゴール!

準備してきたものを全て出してくれました。相手のボランチにパスを入れさせず、後ろの5人もロングボールをしっかり弾き返してくれました。そして、攻撃陣はしっかり得点を決めてくれた。

これまで見てきた中で、ベストの試合をしてくれました!
優勝旗を受け取る姿を見ることができ、大満足の北原でした!

悲願の優勝旗!

指導者やってて幸せな瞬間の一つです。。

6、地区中体連を終えて

まず、優勝という結果を得ることができた。これは、本当に喜ばしいことです!子どもたちにとっても、大きな自信となったことでしょう。

ただ、それ以上に嬉しかったことは、東部中サッカー部に関わる色んな人が喜んでくださったこと。

保護者の方、顧問の先生、校長先生、そして子どもたち。

みんなが笑顔でした。

「部活動に関わる全ての人をハッピーに」

私たちが最初に掲げたテーマ。

今回の実証実験、1人の外部指導者によってたくさんの人をハッピーにできた。これが最も大きな成果でした。

中体連後に行った保護者アンケートの中で嬉しかったコメントをご紹介して、今回は締めさせていただきます。

この短期間で、こんなに成長して今日は本当に感動しました。外部指導をお願いして、良かったと思いました。勝つ事の喜びを知り、サッカーの楽しさも分かり今後の自信にも繋がればと思います。感謝しております。あと少しですが、宜しくお願いします。

私たち、株式会社WIDEは部活動に関わる全ての人をハッピーにするべく、今後も事業を進めて参ります!

部活動の指導者に関してお困りの先生方、保護者の皆さん、生徒の皆さん、まずはお気軽にご相談ください!!

さて、今回まで4回に渡って連載しました実証レポートですが、これが最後になります。これまで、お読みいただいた皆さん、本当にありがとうございました!皆さんの応援コメントが励みになりました!

また、多大なるご協力をいただいた東部中サッカー部の保護者の皆様、先生方、本当にありがとうございました。


本当にありがとうございました!


また、別の機会にnoteを書いていきますので、引き続きよろしくお願いいたします!


株式会社WIDE(https://www.wideofficial.com/
北原誠大


~追記~

県大会、東部中は

1回戦 西唐津中 6-0 勝利
2回戦 大和中  0-2 敗北

で、県大会ベスト8という成績を残してくれました!
第一シードの大和中を相手に、健闘してくれました。彼らのことを誇りに思うとともに、今回の悔しさをバネに今後も頑張ってほしいと思います!


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