見出し画像

産後うつ

産後の体調の変化

女性のライフスタイルの中でも特に産後は体調や生活のリズムなどが大きく変化し、ストレスのかかりやすい時期です。

2018年に国立成育医療研究センターが発表した深刻なデータがあります。

上記によると、出産後1年未満に自殺した人が 92名 いたことがわかりました。出産後の母親の自殺の実態が初めて明らかになった報告です。

これには「産後うつ」が関係していると考えられています。


産後うつ

「産後うつ」は出産後の精神的なトラブルの中で最も多く、母親の10~15%に起こるといわれています。

産後うつのリスクは全ての女性にありますが、その中でも
○ マタニティ・ブルーズ(タニティ・ブルー)
 (例,激しい気分変動,易刺激性,不安,集中力低下,不眠症,涙もろさ)
○ 産後うつ病の以前のエピソード
○ 以前に診断されているうつ病
○ うつ病の家族歴
○ 著明な生活面でのストレス因子
 (例,夫婦間の不和,前年のストレスの多い出来事,パートナーの失業,パートナーがいない,うつ病のパートナー)
○ パートナーまたは家族のサポートの欠如
 (例,金銭的または育児サポート)
○ 月経または経口避妊薬使用に伴う一過性の気分変化の既往
○ 以前または現在の不良な産科転帰(例,以前の流産,先天奇形の乳児)
○ 現在の妊娠についての以前のまたは持続する「望んでいなかった」という気持ち
 (例,妊娠が計画外,または中絶を考慮していた)
MSDマニュアルプロフェッショナル版より引用改変)

に該当する場合よりリスクが高くなるとされています。


産後うつの症状

症状としては、抑うつ気分、不安、あせり、不眠などがみられ、また母親としての責務を果たせないことや子供や夫に対して愛情が涌いてこないことに対する自責、育児に対する不安・恐怖などがあります。

分娩前と後では、身体的に大きな変化が起こり、以前の状態に回復されるまで時間がかかります。そして母親になった喜びを自覚する一方で、睡眠時間の減少、24時間の育児生活、自由の消失、スケジュール管理ができない、家事と育児の両立、責任の増大など、肉体的・精神的ストレスにさらされます。

こういった環境が引き金となり、「産後うつ」が起こることがあります。

この「産後うつ」は産後の気分の変調で言われる「マタニティ・ブルーズ」とは異なります。

「マタニティ・ブルーズ」は出産後3~10日の間に一過性に見られる情動が不安定な状態で「疾病」として捉える必要はないとされています。

主な症状は、抑うつ気分、涙もろさ、不安感、焦燥感、緊張感、集中力の低下などがあり、特に「涙もろさ」が特徴的です。身体的には、食欲低下、疲れやすい、頭痛などがみられます。

起こる割合としては30%程度(調査方法がことなる別の報告ではさらに高いとしているものもあります)とされています。通常はこれらの症状は2週間程度の短期間に消失します。

産後うつとは似ている面がありますが、異なるものですので注意が必要です。

治療するためには何より早期の診断が重要で、出産後2週間以上、悲しみやつらさなどが続いたり、日常生活が妨げられるような症状がある場合や、自分や子どもを傷つけたいという思考がある場合は速やかな受診が必要です。

治療は薬物療法、精神療法のほか、運動療法、光療法などのほか、鍼治療が有効とする報告もあります。


産後うつの予防

産後うつ病の予防の方法としては、

・休息をとること
・全てをこなそうとは思わないこと
・家族や友人に助けを求めること
・気持ちを家族や友人に話すようにすること
・身だしなみを整えること
・外出するようにすること
・夫やパートナーだけと過ごす時間を作ること
・他の母親とコミュニケーションをとり共通の経験や感情について話すこと

などが言われています。


産後うつのサポート

これらの予防方法をとるのが難しい場合、行政のサポートを受ける方法もあります。

例えば相模原市では、

○ 「赤ちゃんの訪問  こんにちは赤ちゃん事業」
保健師・助産師・看護師の資格がある母子訪問相談員が家庭を訪問し、赤ちゃんの発育やお母さんの子育てに関する相談に応じています。

○ 「ファミリー・サポート・センター」
子育ての手助けを受けたい人と行いたい人が会員となり、子育てについて助け合う組織で、子育てを相互に援助する活動を支援しています。

などがあります。

産後の不調時には母親が自分から「助けてほしい」と言える人は少数であり、また本人だけでなく、子供の養育も関係するため、周囲のより密なサポートが非常に重要です。

産後うつは理解とケア、サポートにより改善することができますが、そうならないようにするためには、妊娠中からの準備が大切です。産後の変化が大きく大変な時期をすぐそばでサポートしてもらえる家族や親類がいるかどうか探したり、一緒に育児をしてく夫やパートナーが親になる自覚を高めてもらうための教室への参加などを話し合うのも良いでしょう。

周囲からの協力を得るのが難しい場合は、行政や地域のサポーターを頼ることも必要です。育児支援の情報は地域の保健センターへ相談するのも方法の一つです。気軽に利用できる相談の窓口が設置されており早めに相談することで、つらくなる前にサポートを受けることができます。

「産後うつ」は育児への不安や育児疲れとの区別が難しく、「みんなが通る道だから」「いずれ良くなるから」と言われ、「もっと頑張ろう」としたり、その不調を周囲が見逃さす事も多く、対処しないまま放置しておくと、症状が悪化し、重大なケースに陥る危険性があります。

昨年の国立成育医療研究センターの報告がその深刻さを伝えたものと言えると思います。

なんだかよくわからないけど、とにかくつらいと感じたら、ぜひ声をあげてください。「産後うつ」は誰もがなり得るもので、努力が足りないわけでも、自分自身が弱いわけでも、人と違うわけでもありません。

適切なケアと治療で「産後うつ」は改善しますので、赤ちゃんのためにも、適切な対処で本来の自分自身を取り戻してください。

漢方・鍼灸でサポートできることもあります。ご相談ください。

タナココ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?