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太宰と軍事教練と蜜柑と


日本を離れて1ヶ月が過ぎた。居留登記や公安への届け出もすべて完了し、ホッとしている。貴州省へ来てからは特に時間の流れが早く感じる。食事にありつくまでのプロセスが面倒で、体重も免疫力もみるみる落ちている。反省。

赴任先の高校の制服は体育着で、青と白が基調になっている。休み時間になると、男子生徒はズボンの裾を膝までまくりバスケットボールに興じている。女子生徒はハンディタイプの扇風機を顔の前でクルクルとやっている。クルクルとやりながら、「今、こちらでは太宰治の人間失格はとても人気があります」と教えてくれた。なぜ今、太宰なのか。北京では夏目漱石のフェアも見かけたし、何かあるのだろうか。

ここ2日くらいである。
突然、鮮やかな黄色い制服の学生が出現した。聞くと2年生だという。3年生は受験のため夏休みは存在しないが、休みを満喫した2年生が新学期にあわせ続々と学生寮に戻ってきて、ますますにぎやかである。

1年生はというと、今週のはじめくらいから軍事教練に励んでいる。これは高校1年生と大学1年生が必ず行うものであるそうだ。同僚の先生は自分の学生時代よりも短時間で行われるようになった、と恨めしそうに教えてくれた。

迷彩柄の服で校庭を走ったり、大火を消したり、行進したりしている。写真撮影はもちろんのこと、あまり見てもいけないような気がして、そそくさと立ち去っている。私は誤解が怖い。

先日は額に冷えピタシートを貼ったまま食事している1年生の女子生徒を見た。体全体から湯気が出ていそうな感じであった。

大変そうだ、と思ったのと同時に、ここでも冷えピタシートのようなものが売ってるんだなと驚かされた。「中国だから何でも手に入る」とお思いかもしれないが、私のいる街はスパゲッティの麺が手に入らない。そういうところなのだ。

今朝、布団の中でのんびりしていると、たくさんの足音と掛け声で飛び起きた。
いそいで砂埃にまみれた窓をこじ開け、隙間からそっと外を窺うと、家の横を学生たちの隊列が通過していった。翻る旗。行進だ。学校裏門から街の方へ向かっていったので、市街をぐるりと回って正門から帰るつもりなのかもしれない。

最近では、自分の考え方と、立場と、文化、習慣をどのような線引きで携え、ここで生きていったらいいのかと考えている。

・赴任当初、他校のお歴々も集まった酒文化を伴う正式な会食の最後で、場のボスから大々的に受けた質問。「帰る前に貴女と別れの挨拶をしたいのですが、私達の熱情を表す中国式の挨拶(ハグ)がいいですか、それとも日本流の握手がいいですか。」(まず握手は日本の文化じゃない。個人として、一方的に極端に悪い見方をするならば、日中友好・交流を盾にとったよく知らない極度に酔っ払ったおじさんとのハグ。良い見方をするなら、よくわからない外国人に対して、とってもとっても友好的でありがたい。)この国の酒宴での無理のない振る舞い方を身につけたい。

・名前の読み方は、中国の漢字の読み方に変換される。市中ならば構わないが(本当は本来の音で呼んでほしいけど仕方がない)、学習の場にとってはどうか。

等々。

優先させてほしい価値観をどうやって伝えるか。「信仰の面からNGです!」と言うことができる利について考えた。


こちらの人は本当に良くしてくれる。
まだまだ来て日も浅いけれど日本は

・性産業
・アニメ、ゲーム
・戦争
・たまに化粧

こんな感じに見られているなと生活の端々で感じることがある。ちなみに車関係(TOYOTA)はたいして強くない。
アニメ、ゲーム産業に関しては、日本の存在感は今後薄くなるなと見ている。

じゃあ残るは……うーむ、なんだかなあと思いながら、同僚に教えてもらった漢方薬を飲み、せっせとみかんを食べて寝て風邪を治そうと励んでいる昼下がり。

皮がところどころ緑色のみかんは、小さい頃に祖母宅で食べたみかんの味に似ている。


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名物の魚料理『酸菜魚』。ミャオ族の伝統料理。
あっさりめで、かなり好き。これ自分で作れるようになりたいな。


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店内の生け簀の中から魚を選んで、体重測定をしてから鍋になります。

2019年8月24日 選り抜き協力隊日記

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一口メモ

酸菜魚は本当に美味しくて、たぶん任地の調理では一番好きです。
手元の薬味皿にチョイッと漬けて食べると何倍にも味が豊かになるのです。
日本でも食べられないものか、と思いますが、きっと任地で食べたものと同じ味はしないのだろうなと思います。

日本の印象について「化粧」とこの時は思っていますね。この数か月後、日本では『チャイナメイク』が流行の兆しを見せるのです。

尚、軍事教練は医師の診断書があれば免除されるそうです。




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