休学とあの子と刹那の出会い

休息がほしくなって、大学を一年休学したことがあります。その一年間を有意義に過ごせたかは自分でもよく分かりませんが、今までの疲れを癒やすには十分な時間でした。

ああ、そうです。もちろん学年も据え置きです。

ひとつ下の学年の、大体一つ年下のみんなと新たな生活を始めたんです。

きっと差別なんかが凄まじいんじゃないかって覚悟していたんですが、本当にみんな可愛くて、気さくで、私はとても歓迎されていた気がします。

その中でも特段に仲良くしてくれる、小柄で眼鏡の子がいました。席はいつも離れたところに座っていたのに、なぜだか仲良くしてくれました。

あの子は明るくて、活動的で、先輩後輩共に、学友が沢山いました。私はその中の一人だったという自覚はありましたけども、もしかして私にも、の気持ちは抱いてしまっていました。今思えば私はただのお馬鹿さんなんですけど。

試験が近付くと、元の学年の子から試験の過去問をもらえました。「今年は進級できるといいね」の言葉を添えてもらって。

私の名も無き女子大なんて、試験が難しかったわけはないのですが、あの子は苦労していました。

私はあの子にできることを考えていましたが、あの子一人に好意を向けることが怖かったのです。だから、ひたすら過去問を解いて、試験対策のノートとまとめ書きをクラス中にコピーしてばら撒きました。あの子まで留年させたくありませんでしたから、必死でした。博愛なんかじゃなくて、本当に本当に、あの子のためだけだったんです。

でも、あの子も結局留年してしまいました。私はあの子にとって、ただの小さな存在なんだなと、この時やっと悟りました。

私のノートとまとめ書きのコピーが、次の年にあの子の役にたってくれていたら、私はどう泣けばいいのでしょうか。

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