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詩 『君に贈るもの』

作:悠冴紀

君に届けたい曲がたくさんある
君のその耳でこそ
聴いてもらいたい曲が

君に届けたい言葉がたくさんある
君のその眼でこそ
なぞってもらいたい言葉が

君のその感性
その受け取り方が
私はずっと好きだった

君の良質な反応一つ一つが
私を育て 磨き上げた

だがすべては遠い過去
君が私を許す日は
永久に来ないだろう

それと知りながら
尚も時折 君を思う

作り手の一人として
芸術を愛でる者の一人として
君を必要とするものの存在を
無視できないからだ

君に聴かせたい音色がたくさんある
君にしか見出せない
閃光のほとばしる音色が

君に伝えたい物語がたくさんある
君としか共有できない
哲学に溢れた物語が

君の情感はそれらに深みを与え
より高い次元へと引き上げていく

作品という作品
時間という時間が
君を必要としているのがわかる

君には特別な才能があった
君といるだけで 不可能が可能になり
君といるときの自分だけ
好きでいられた

私にはそれが
心地よかった

・・・・・・私はそれを
自分で壊した

よくわかっている
君は厳格な人だ

背景事情を知る唯一の人物でありながらも
正気を見失った友の怪物化した姿を
君は一生忘れないだろう

私には自己復元の底力があったが
もはやその可能性を信じてもくれなかった

はじめからわかっていた
君に許容は望めない

だがそこを責める気もない
妥協なき厳格さこそ
君の洗練された感性の秘訣

その気高さをも含めて
私は友になったのだ

君は私を
永久に厭い続けるだろう
たとえ一時の混乱でも
君には永遠に感じられた

君の繊細さを知りながら
私がすべてを壊したのだ
あまりにも君一人に多くを求めすぎて
あまりにも多くの醜いものを
君一人に見せすぎて・・・・・・

今の私に許されるのは
時折こうして思いを馳せることだけ

音に魅かれれば
君を思い出し
君を思えば
物語が浮かぶ

二度とは接点を得ないと知りながら
君に聴いてもらいたい歌を
たくさん見つけた
君に読んでもらいたい作品を
たくさん書いた

それらが尚も
君を求めるのだ

私を忘れていい
私に失望したままでいい

だがこの世にはまだ
君のその眼 その魂を必要とするものが
たくさんあると伝えたかった

それらのためにこそ
閉ざした眼を再び見開いて
耳を澄ましていてほしい

唯一無二のその魂で 今一度
この手で拾い集める旋律の数々を ──

唯一無二のその感性で 今一度
この手で紡ぎ上げる言葉の数々を ──


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※ 2012年12月(当時35歳)の作品。

 この詩の『君』は、私の詩作品への登場回数が最多を誇る幼馴染の(元)親友のことです。すでに絶版本であるmy小説「クルイロ」のまえがきに、「~そして私に、書く楽しみを教えてくれた幼馴染の親友Sへ、この物語を捧げます」と書いていた、まさにその『S』のことです (^_^;)

 今どこで何をしているのか、生きているのかどうかもわからないこの親友にまつわる詩作品は、何故だかいつも失恋の詩と勘違いされるのですが、この詩ももちろん、失恋がらみのものではありませんヨ A^_^;) 友達関係の話です、ハイ。

※関連作▼

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注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、「詩『君に贈るもの』悠冴紀作より」と明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります。


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