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詩 『敗北者』 (20代前半の作品)

作:悠冴紀

認めるよ
私は敗北者

自分を哀れむことだけは
絶対すまいと思っていたのに

諦めることだけは
絶対すまいと決めていたのに

誇りを守ろうと 構えていた
人生を守ろうと 闘っていた

無駄な努力だった
何もかも

私は敗北者

だけど怖いものは何もない
傷付くものも失うものもなく
これ以上 堕ちようがないから

ゼロになった

「強い」も「弱い」もない
「良い」も「悪い」もない

何故だか
いつになく落ち着いている

背中が軽い
大事にしてきたものすべてを失って

恐れるものも無くなって
刺さるトゲさえ気にならず
かつてなく落ち着いている

良いことでもあったかのように
軽い足取りで歩いている

軽く 軽く
笑っている

**********

※この詩は1999年頃(22歳当時)に書いたもの。


 凝り固まった意地やプライドによって、自分自身の人生を不必要に重苦しいものにしてしまい、敵を作りながら生きていた頃の私から、良くも悪くも肩の力の抜けた自然体な自分へと脱皮成長していった、まさにそのターニングポイントとなった時期の心境を描いています。

 それまでの私は、どういう生き方が強さの証明だの、何が正しいだの絶対だの……といった発想で自分自身をがんじがらめにしていて、石のように硬く不動であったがゆえに、そうした信念や誇りそれ自体によって、精神面の成長を止めてしまっているところがありました。

 ですが、その手のものは、人生の様々な局面で、思い描いた通りにはいかない現実に突き当たるうちに、いずれ自ずと削り落とされていくものです。そしてついには、自分を人生の「敗北者」だと認めざるを得ないところにまで転落しきったとき、一度は “ 無 ” に帰したからこそ、皮肉にも精神の自由を得て、内なる何かが解き放たれる。一見絶望的な末路のようで、実は予期しなかった新しい生き方への第一歩として。

 そんな軌跡を私自身に振り返らせてくれる一作が、この作品です。

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