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詩 『遥かカナダに想いを馳せて』

作:悠冴紀

帰りたい
あの場所へ

すべてを置き捨てて
帰りたい

エメラルドグリーンの湖と
歴史を物語る鮮やかな地層
透明な風と
深緑の針葉樹

生まれて初めて
憎しみを忘れた

生まれて初めて
疑いを忘れた

帰りたい
カナダへ


人間が綺麗に生きられる場所など
存在しないと思っていた

浄化などさせられたら
私そのものが消えてしまうと思っていた

帰る場所など要らない
そう思っていた


私は一度終わった
だから始められる
あの地を原点に

帰りたい
あの場所へ

葡萄畑を駆け回り
大地の温もりを感じたい

あの開けた青空の下
メープルの香りに酔いしれたい

新設の道はあの地に始まり
あの地に帰する

帰りたい
あの場所へ

逃げるためではない
生きるために

帰りたい
カナダへ──

* * * * * * * * * * * *

※1999年(22歳当時)の作品。

出ました、タイムカプセル第二弾(笑)

少し前に投稿した詩カナダの冬の投稿で、かつてカナダに行ったときの話に触れたので、この機に他にも関連する作品を引っ張り出してくるか、と思いつき、またもや若かりし頃の懐かし~い一作を公開してみました。ただ、20年近く前の作品ですから、こちらもやはり表現が全体に幼いですね A^_^;) そして今の自分の目で見ると、ちょっと面倒くさいタイプの人間だったのがよくわかる💧

ちなみに私がカナダを訪れたのは、大学三回生のときでした。西の玄関口バンクーバーから入ってアルバータ州へ抜け、最後にトロントを訪れるという、ざっくりとした横断旅行でした。

留学やワーキングホリデーではなく単なる観光で、僅か10日程度の滞在だったのですが、気持ちの上では離れられない場所となり、今でも瞼の裏に鮮やかに焼きついています。初めて訪れた異国の地でありながら、不思議な郷愁で私の心を射抜き、「また行きたい」ではなく「帰りたい」という気にさせてくれた。

『カナダの冬』の解説部分にも書いていた通り、当時の私は、身の回りにトラブルが絶えず内心トゲトゲしていた時期だったのですが、向こうで日本のそれとは比にならないスケールの大自然や、広々とした開放的な街並みを目にするうちに、それまで頭を悩ませていた色んな事柄が、狭~い世界のちっぽけことばかりに思え、どうでも良くなってしまいました (^_^;) 下らなさすぎて、気にするだけ時間の無駄だったな、と。

あの頃あのタイミングでカナダを訪れたのは、本当に正解だったと今でも思います。ただ、当時の私には、どうしても離れられない親友(← 私を文学へと導き育て上げてくれた幼なじみ)が日本にいて、間違っても海外移住などしない内向的で腰の重いタイプだったため、結果的には、私はその後もずっと日本に留まり続けたんですけどね。もし一言、あの親友が一緒に行くと言ってくれたなら、迷わずカナダに飛んでいったと思います。そしておそらく二度とは戻らず、後にここ日本で、私が執筆デビューすることもなかったのではないか、という気がします。

果たしてどちらが自分にとってより良い結果だったかは、永久に知り得ません。人生には色んな岐路があり、チャンスは色んな方向に枝分かれしているものですが、実際に選べる道、歩める道は、そのうちのいずれか一本しかない。軌道修正ならいつどの時点からでもできるけど、一人の人間が同時に二通りの人生を歩んだり、時間を遡って別の道も試してみる、なんていう都合のいいことはできない以上、結果として今ある道をしっかり踏みしめて歩く以外にない。

──ま、私のことだから、何かで余命宣告でもされれば、今からでも突然すっ飛んでいくような気もしますけどね(笑) ただ、それにはまず、パンデミックが終息して、各国の鎖国状態を解いてもらわねば、という話ですが💦 私はそろそろ途方に暮れてきましたよ😓 出口が全然見えません。

注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、「詩『遥かカナダに想いを馳せて』悠冴紀作」と明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります。

※ 私の詩作品をご覧いただける無料マガジンはこちら▼ (私自身の変化・成長にともなって、作風も大きく変化してきているので、製作年代ごとに、大まかに三期に分けてまとめています。)

※ 小説家 悠冴紀の公式ホームページはこちら▼


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