テレワークにおける賃金と労働時間
テレワークでの賃金を労働時間とリンクさせない
今年になって、予想もしない理由のためにテレワークが急遽実施されたため様々な混乱が起こっていた。その中で最も懸念されることが、連合の「テレワークに関する調査」でも明らかになったことだが、テレワークでは残業代を請求しても認められないなどの事例が増えていること。つまり、テレワークでの賃金を労働時間とリンクさせないといった考え方が強まっている。しかし、それは長時間労働や過重労働につながる危険な考え方だ。
端的に言えば、働き方改革関連法における裁量労働制拡大や高度プロフェッショナル制度新設をめぐる経営側と労働側との間で激しい議論となった「賃金を労働時間とリンクさせないといった考え方」が、今、テレワークでも再燃しようとしている。
成長戦略実行計画案に関する日本経済新聞報道
未来投資会議(第 40 回)が2020年7月3日に官邸大会議室で開催されたが、議題は「成長戦略実行計画案」。この未来投資会議について日本経済新聞が次のように報じた(「多様な働き方促進 兼業・副業ルール整備 成長戦略案」、日本経済新聞電子版、2020年7月3日配信)
(7月)3日に示した成長戦略は多様な働き方やキャッシュレスを推進する具体策を盛り込んだ。職務や成果に基づく労働評価の後押しなど抜本策には踏み込まなかった。
民間調査では仕事の満足度を高めるために副業やフリーランスを望む人が感染拡大後に増えた。テレワークも広がり、働き方は多様になった。労働時間に応じて賃金を支払う昔ながらのしくみはもう現実に合わない。労働法制も成果型に大きく転換する必要がある。
日本経済新聞の記事は、政府の未来投資会議が示した成長戦略はが「多様な働き方」(副業・兼業おとびフリーランスといった雇用関係にない働き方・働かせ方)を盛り込んだと評価しつつも「職務や成果に基づく労働評価の後押しなど抜本策には踏み込まなかった」と非難している。
また「民間調査では仕事の満足度を高めるために副業やフリーランスを望む人が感染拡大後に増えた」と言い切っている。この民間調査とは未来投資会議資料に出てくるものだが、どこまで信頼できる調査かどうかは疑問である。本当に「副業やフリーランスを望む人が感染拡大後に増えた」のだろうか疑問。
そして、「テレワークも広がり、働き方は多様になった。労働時間に応じて賃金を支払う昔ながらのしくみはもう現実に合わない。労働法制も成果型に大きく転換する必要がある」と述べられているが、経営側の意見を日経の記者が代弁しようとしているものなのか。いずれにしても、テレワークにおける賃金制度、テレワークにおける評価制度は、あらためて労使で議論すべきことだとは思っている。
多様な働き方促進 兼業・副業ルール整備 成長戦略案(日本経済新聞)
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*ここまで読んでいただき感謝(佐伯博正)