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【小説】恋の幻想

布団の中は狭苦しく、体の小さい女性でも2人で入ると、掛布団のスキが出来る。

それでも人間の暖かさで布団の中は温まっていて、眠るには良い環境に感じる。

私の爆弾発言は、そんな邪推しないでくださいよ、なんて言葉で終わりにして、ゆっくり眠りに入りたい。

だけど忍はハッとしたみたいに顔を向け、何故それが解るのかという表情をしている。

「だってそうでしょ、ある程度の年で急に兄妹になった人間なんて、兄妹と思えるはずがないでしょ。」それしか無いと言ってみる。

布団の外に言葉が放たれて、暗い部屋にゆっくりと漂う、それまで知らなかった人間が温め合っているのは、外から見たら不思議な光景だろう。

本当は有ってはならないものなんだよとは言えなかった、それを言ったら特別な状況が辛くなるだろうから。

「そうなんですね。」それ以上は何もないのね、こちらも一緒になって口を閉じる。

「最初は良い人だと思ったんです。」ポツリポツリと話し始める、信頼していなくても、口に出すのは自分の為になる。

「そうなの?」意外な言葉に声が出て、変わっていった気持ちが想像される。

「兄がいた覚えも無いし、お兄ちゃんってどんな感じって友達に聞くと、優しいとか教えてくれるから、そんな感じだと思っていたんです。」続かない言葉が情報をくれる。

彼女が何も言わなくて良い様に、布団の中で手を繋ぐ、肌が触れ合っていると安心するのを知っているから。

無音の言葉が大変だった時期を教えてくれて、何とかしようとした日々を感じる。

「違ったって言いたいんだよね、血の繋がってない兄妹って、自分の方が一般的な考え方しても、相手はそうじゃ無かったりするから。」言わなくて良い様に補っていく。

「ある時から私の友達に私の悪口を言って、友達がそれを信じて離れていくようになったんです。」計画的な人間だったんだ、辛かったねと手を強く握っていく。

「私が1人になると自分しか頼れないだろうと、部屋に入ってきて。」言い淀む、思った以上に酷い目に会ったのかもしれないな。

「親は如何していたの、同居していて親は何も知らなかったの?」親の問題なのかもしれない、そんなのは親が何とかすべきでしょ。

「親は無関心だったんですよ。」諦めたような声音が暗い中に浮かんで消えた。

「関心ないって言っても、他人が住むんだから、気を付けないといけないって解ってる筈なのに。」言っても仕方のない言葉を言ってみる、彼女にしたら言われても如何にも為らないのだ。



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