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【小説】恋の幻想
「何から言えばいいんだろう?」ことりと言葉が浮かんで、静かで暗い部屋に響く。
「何からでも良いよ、言ってみなよ、男の人には言いにくい話も聞くよ。」その為に良平は二人にしたんだと思っている。
「そうですね、先ずは小学生くらいの時に母が死んだんです。」暗い話だけど、ここはそうでもない声音だ。
「大変だったんだね、それでお父さんと二人で生活していたの?」親が虐待って話もあるからね。
「最初は二人だったんです、でも父親が結婚してしまって。」そこで言葉を出すのを止めた。
「継母って奴にいじめられたの?」そんなのだったら問題だけど、父親は如何していたんだろう。
「いじめるも何も、二人とも関心なんですよ、私に。」と言ってのける、無関心でも親だから探しているんじゃないのかな。
「無関心でもさ、親だから探したりしているんじゃないの?居場所は教えておいた方が。」と言いかけていると、被せる様に言ってくる。
「止めてください、一緒に住んでいるのはそれだけじゃなくて。」と言いかけて止まる。
「誰が問題だったの?」何となく分かる、その人が問題だったんだよね、でも言いにくいんだよね。
「父親と再婚した人に子供がいて、それが兄になったんです、その兄が嫌で。」言いにくそうなっていく。
そうか、お兄さんと上手くいかなかったのか、それ以上の事も有るかも知れない。
「お兄さんと言っても血がつながってるわけじゃ無いもんね、やりにくいよね。」と同意してみる、そんな話はよく聞くよ。
「そうなんです、ちょっと問題があって。」とゆっくり続ける。
「その人に殴られたりしたの、痣が有ったりするのってそれでしょ。」回りくどいのが嫌いで、つい先走ってしまう、そこがいかんのだと何度の言われたのに。
彼女がもう一度泣き出す、今度は声を殺して、泣きたくないのに涙が出る様に。
「痣を見たんですね、そうです痣になってしまっているんですけど、医者に行くのは止められていて、というか保険証が無いから行けないんです。」すすり泣いていく。
「何で、親に貰えばいいでしょ、無関心でもそれ位はしてくれるでしょ。」それして無かったら問題だ、最も問題だから家を出ようとしたんだよね。
「親としては痣が有ったりすると、問題視されるからって事みたいです、それに。」そこで又言葉を止める、話してはいけない秘密は出したくないみたいに。
「もしかして性的なこともされたりした?」これしか無いかもしれない。
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