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【小説】恋の幻想

その時だった、大きな声で裕子さんが叫んだ。

「あんたねー、覚悟も無い癖に大きい声出すんじゃないわよ、あんたは偶々兄妹になっただけで、何の権利も無いんだからね。」

「お前、おかしいんじゃないのか、お前だってそんな権利無いだろ、大声出せば良いってもんじゃないぞ。」兄の声は裕子さんより小さくなっている。

慌てて玄関に向かった、裕子さんが何をするか解らない、怪我したら大変だ。

「おかしいのはあんただろ、忍ちゃんがどれだけ嫌な思いしてきたか。」裕子さんがも一度声高に叫ぶ。

「忍ちゃんを連れて行くんだって言うなら覚悟を見せな。」いつも優しい裕子さんが凄んでいる。

「おい止めろよ、出て言って貰えば良いだけなんだから。」良平さんが対応している。

「こんな人間はね、今追い出したってまた来るのよ、ここで決着付けておかなくちゃ。」裕子さんの声だ。

慌てて向かった玄関に3人が立ち竦んでいる、裕子さんの手にはさっき持って行ったカッターが握られている。

普段ならカッターだけでは切れたって大した怪我にはならないと思う、それでも興奮している人間が持つと、大怪我の可能性が有る。

「お前変な女と関わっているんだな、こんな危ない奴と付き合うなよ。」兄と云う名の獣が言う。

「あんたの方がもっと変で嫌な奴だろ、此処にはもう来ないって言わないと、ケガさせるからな。」と裕子さん。

「こんな事で怪我なんてしたくないからな、今日は帰ってやる、忍また来るからな。」と言って帰ろうとする獣。

「ちょっと待て、金輪際来るなよ。」裕子さんがカッターの刃を出して切り付けようとしている。

「止めて、裕子さん、そんな奴犯罪者になる価値ないよ、警察に行って来れないようにするから。」今度は私が叫ぶ。

「止めろ裕子、お前がそんな事しても誰も喜ばないぞ。」良平が声を掛けている。

兄と名乗った獣はこちらを見て、肩を竦めて出て行った、もうどうでも良いと言う様に。

「裕子さん、大丈夫だった?ごめんなさい、私に覚悟が足りなくて。」涙を流しながら声を掛ける。

「大丈夫だよ、私は何ともない、よく考えればカッターで切りつけた所で大した怪我じゃ無いよね、包丁持ってくるんだった。」裕子さんが泣き笑いで答える。

「二人とも俺が居るの忘れてんじゃ無いの、俺には覚悟だってあるし、あのくらいの男追い出せるんだぞ。」不服そうに良平が言い出す。

「プッツ。」「アハハ。」女二人で笑い出した、安心が広がっている。

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