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【小説】SNSの悪夢

そう聞いてもちょっと信じられないな、彼女の連絡先を聞くのはは計られるから、こっちの連絡先を教えた。

「私も連絡先教えときます。」彼女が提案ししてくる、けれど女性の連絡先を知っていると、面倒になりかねない。

「良いですよ、何か有ったら、自分に連絡してくれたらいいんで。」と返しておく。

「あのー、俳優さんじゃありませんか?失礼ですけどテレビで拝見したことが有る様な。」恐る恐る聞いてくる。

バレたか、自分が割と知られていたんだと、誇らしいような、今の段階では哀しいような。

さて如何しよう、本当のことを言った方が良いのか、嘘を言った方が良いのか。

そうだ、誰かが嘘は本当のところに少し加えると、信憑性が増すって言っていたな。

「そうなんですよ、でも今ちょっと問題が起こってまして、なので知り合いの仕事を手伝っているんです、電車の中の痴漢って困ったもんですね、間違って痴漢にされるのも問題だし、痴漢された方も問題でしょ、調べなくては。」ちょっとだけ本当を残して置く、これで信憑性が増すはずだ。

「私、チョットだけファンだったんですよ。」こんな人は沢山居る、ファンだったなら、名前も知ってるだろうに、俳優さんって行っている所はファンだとは言えないな。

「ありがとうございます、でも今はタダのフリーターですよ、仕事は有ればしますけどね。」謙遜して言ってみた。

「大丈夫ですよ、いい役者さんは何が有っても仕事は戻ります。」何だか自信ありげだ。

そんなのは信じられないけれど、言葉は力になるものだ、この言葉をSNSで見つけていたら、今頃こんな所に居なかったのに。

いや、ここに居るからこそ、この言葉を聞けたのだと思うと、まああの怒声も悪くなかったのかも知れない。

「私の連絡先も知っておいてください。」自分が気にしている程は、彼女は気にして居ないらしく、名刺を渡してくれた。

こんな時には両手で受け取るんだったかな、どうでも良い事を考えながら、名刺を見た。

ああそうか、週刊誌の関係者か、自分の事を知らない筈が無い、何か聞き出すつもりかな。

「あんまり構えないでください、別に週刊誌ネタを充実させようとは思って無いんですよ、電車の痴漢を一掃したいと思っているだけなんです。」ニコリと笑って彼女が言った。

こっちとしては信じられないな、だって週刊誌がガセ情報を流したんじゃ無いか。

自分の顔を作るのを忘れて、名刺をじっくりと見ている、ここに電話するのは考えられない。

「怖い顔しないでください、私は記者じゃないんで。」言い訳のような言葉が聞こえた。

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