【小説】不器用な私はいつも嘘を見抜くー1日目

この話は特別な能力を持って、人と付き合っていかなければならない女の子の日々を書いたお話です。
人は誰もがギフト言う能力を持って生まれてくる、そう言い聞かされて、その能力を持て余し気味に生きていく。
言葉が人を繋ぐのか、それとも縛るのかを日常で考えています。


子供の頃から愛想笑いを貼り付けている。

笑って居たら笑っていたで、ニヤニヤしてると言われて、笑わないと愛想が無いと言われた。

「あんたね、愛想笑い位できるでしょ。」祖母の口癖が五月蝿くて、何でもない時にまで愛想笑いをしていた。

実際には笑う事なんてそんなには無いのにね。

小学校に入った時だった、何時もは忙しくて相手をしてくれない母親が、声を掛けてきた。

「あのね、人間にはそれぞれ神様からギフトを授かってるのよ葵、あなたにもねちゃんとあるのよ。」いつもの、のんびりした調子で母が言った。

「何処に?何処に有るの?」小さい身体を出来る限りに広げて、私は聞いた。

「お母さんにも解らないけど、何処かに有るのよ、だからいつも前を向いて、笑っていてね、葵の名前は前向きになる様に附けたんだからね。」涙を流しながらそう言ったのが、母に会った最後になった。

母の言うギフトが何かは分からない、でもその時の小さい少女は神様からのギフトよりも母にそばにいて欲しいと思って居た。

祖母の家には母の居場所が無かったのかも知れない、私という子供が居たとしても。

母がここから居なくなってから、小さい少女は居なくなって、私は母が言っていた自分のギフトを理解する様になった。

私のギフトは解る事だった、何が解るって?聞かれても化物扱いされるので、誰にも言わなくなってしまったけど、その人の気持が分かってしまうのだ。

そんな私の誰にも言えないギフトの話をしようと思う。


「行ってきまーす。」おばあちゃんは挨拶にも五月蠅い、朝の挨拶をしないと、帰ってから愚痴口が始まるから、なるべく大きな声で言う。

小学校はほんの15分で着く、だけど家に居ても小言ばかりなら、学校に行った方がずっと良い。

「行ってらっしゃい。」皿洗いの手を止めて、エプロンで手を拭きながら、挨拶を返す、祖母は人に五月蝿く言う分、自分も挨拶をした。

母だったらちょっと手を振って終わりだったな。

「帰る時に寄り道しちゃ駄目よ、あんた神社の方でウロウロしてるんだって、変な人が居るといかんから、帰ってきなさい。」誰が報告したのかな、ばあちゃんは知らない筈なのに。

祖母の手をちょっとだけ触ってみる。

ああ、近所のおばさんが言ってたのね、何で人の事を気にするんだろう、おばあちゃんも気にしなくていいのに、思ってはいるけど、口には出さない。

口に出さない方がお互いの為だとその頃には解っていた、私が体に障ると考えが解るのは、他人には気味が悪いんだと解ったからだ。

「分かった、学校が終わったら直ぐに返ってくる。」これが祖母の欲しい言葉、いつも求めている言葉を言ってやることにしていた。

面倒が無いからね。



学校に行くと言ったことは忘れて、ランドセルと背負ったまま、いつもの神社に直行する。

神社は家から学校までの間に在って、大きな木で囲まれていた、神主さんが居ると聞いていたけど、日中から人が来ている様子が無い。

茂った木の中に有る神社は暗くて、小学生には少し気味が悪い所で、理由が無ければ私も入ったりしなかった。

私の理由は毎日のお願いだ。

「ねえ葵ちゃん、毎日何をお願いしているの?」美樹が聞いてくる、毎日神社に行くのが珍しいからだろう。

暗くて、静かな気味が悪い神社に毎日行っているのだから、大事なお願いだと考えて言って欲しいんだろう。

「内緒だよ、神様にお願いしたことを人に言ったら叶わなくなるんだって、だから言わない。」いつもこう答えていた。

「ええー、私たち友達じゃない、友達にも言えないの?」美樹はそう言って迫ってくるけど、本当は私が可愛そうな子だから付き合ってるって思って居るのを知っている。

構わずに一円を入れて、ガラガラと鈴の音を鳴らす、誰かに音をさせないと神様に見て貰えないと言われたから、それ以来のお参りの方法だ。

『神様、私のギフトは返しますから、お母さんを返してください。』何度頼んでも叶わないから、此処には神様は居ないのかも知れない。

何時の間にか、近くに女の人が立っていた、近所の叔母ちゃんよりも上品そうで、違う土地の人みたいだ。

「あの、あなた葵ちゃんって云うの?」その人が話しかけてくる、近くで見ると母と同じくらいに感じて、母を思い出していた。

だけど何か嫌な感じがして、素直に答えなかった、代わりに美樹が答えていた。

「そうだよ、この子は葵っていうの、叔母さん誰?」美樹はいつもぶっきら棒に言葉を使う。

その女の人は美樹の声を聞いてないみたいに、こっちを向いて私に声を掛けて来る。

「あの私のこと、お母さんやおばあさんに聞いたこと無い?」聞いているだろうと言う口ぶりだ。

「何にも聞いてないですけど、あなたは誰なんですか?私のことを何故知っているんですか?」口は利かないつもりだったのに、思わず答えてしまった。

その人はそれには答えずこう言った。

「今から葵ちゃんの家に行こうと思って居たのよ、一緒に行きましょうか?」

「いえ、1人で帰ります。」そう言って美樹と手を繋いて走って帰った。






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