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【小説】SNSの悪夢


レストランは思ったより値打ちだランチの設定が有る、1500円のランチと2000円のランチで選ぶらしい。

綺麗な店でOLやサラリーマンがランチに来ている様で、大勢入ってきては、直ぐに食べ終わって外に吐き出されてゆく。

1500円が最低か、幾ら高給取りでも、こんな値段のランチを毎日食べてたら大変だろうな、収入が無かった時期の記憶が蘇って来る。

今は仕事が出来ない状態だが、自分にはある程度貯えがある。

自分よりも収入が少なくて、結婚していて子供も居ては、この金額を使うのは勇気がいるだろう。

外食ランチも付き合いだったり、ビジネスに繋がるのかな、そんな仕事をしていないから、想像さえできない。

サラリーマンが全員入っていったのを確認してから、自分もレストランに入ってゆく。

誰かが案内してくれるにかと思ったら、そんな接客はしない店らしい、ある程度待ってから、自分で開いている場所に向かう。

出来れば、あの杉山って人間の近くに座って聞き耳を立てていたい、何か弱みが見つかるかもしれない。

塊のサラリーマンたちは、各々話したい人間と卓を囲んでいるのだろう、後輩らしき若い男と一緒に座っていた。

ちょうど近くに空いている席がある、そこに座って話を聞いておこう、1人だと割と自由が利く。

「先輩、忙しいですね、月末でも無いのにこの忙しさ、今日も残業ですかね。」若い男が口火を切る。

「今だけじゃなくて、月の半分は忙しいから、奥さんに言っておいた方が良いよ、今時は何でも不倫だって騒ぎ立てるから、俺が奥さんに言っても良いよ、新婚だったっけ。」声が嬉しそうだ。

「そうなんですよ、本当に残業なの、なんて言われちゃいましたよ、先輩家の妻に言ってやってくださいよ。」情けなさそうに話している。

「じゃあ、君も家の妻に言ってやってくれ、こっちも残業続きだって言ってるのに信じてくれないんだ。」声が笑っている。

「お互い大変ですね、不倫なんてタレントぐらいしか、しないでしょうにね。」やはりタレントは不倫していると思っているのだと言いたそうだ。

人には非難の言葉を送ってきて、自分たちは言い合わせているんだ、こっちは何もしていないのに非難してきて、自分だけは高い所から見ているつもりか、絶対に許さない。

こちらが失ったものを思えば、それ相応の罰を受けて貰いたいものだ。

水を持ってきた店員さんが、「何になさいますか。」と聞いている。

「1500円のランチで。」二人とも声を揃えて答えた。



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