【小説】SNSの悪夢
「社長は出れませんよね、立花から電話が有ったって言っといてください。」
「解りました、後で連絡するように言っておきます。」小声で女性が囁いた。
電話を終えると妻を見る、自分を疑っているみたいな目、何と言ってもいいわけだと思うだろうな。
「社長に電話したんだけど、出られないみたいだった、後で不倫の話は否定して貰っとくよ。」自分を安心させるために言ってみる。
「本当に何にもなかったんだよね?」別に芸能人と結婚したかったんでは無いと何時も言っている妻は言葉とは裏腹な顔。
「何かあるほど現場に居ないし、飲みにも言って無いでしょ。」疑ってるのかと思うとちょっと大声になる。
「疑ってるんじゃ無いけど、どういって良いか解らないから。」
「そんな事より朝ご飯、朝ご飯。」どんなに朝が早くても、朝ご飯を一緒に食べるのは習慣にしようと2人で言っていた。
「うん、ご飯にしよう。」さっきのは無かった事にしたいのか大きな声で言ってくる。
今日のご飯は十五穀玄米、キッシュ風卵焼き、人参と鯖缶の炒め煮、芋の煮っころがし、青さの味噌汁、コーヒー。
身体資本の仕事だからと言って毎日作ってくれる、有難いんだがインスタに乗せるにはちょっと花が足りない食事。
自分は美味しく食べればいいので文句は無い。
「綺麗に作れば、このご飯もインスタに乗せるのにね。」自分が悪いみたいに妻が呟く。
「インスタも仕事の一部だけど、それで売っているアイドルじゃ無いんだから、気にしないで良いよ、健康に良くて美味しいが一番。」嫌になるほど何時もの言葉を吐いている。
嘘では無いが食べ物もインスタに乗せて、テレビや舞台の仕事が無くなっても、食べ物系の動画で生きて行けるかも、そんな気持ちがちらりと過る。
本当はSNSは好きではない、ネット記事なんて8割嘘だと言っていいと思っていて、その中にずっぷり浸かっているものの、自分だけは嘘つきに為りたくは無いと考えている。
食べ終わってコーヒーを飲みながら、ネット記事をチェックしてみる。
酷いもんだ、自分の話でも無いのに、結婚しているのに女優と不倫なんてどう言う事なんだとか、上手くやったと思っているんだろうが絶対に天罰が当たるとか、酷いのは自分で裁いてやるなんてのもある。
記事を見ているとこれが自分の事かどうかわからなくなる、携帯で見る記事なんて現実味が薄い。
こんなの信じる奴いるの?
その時は炎上しているのを馬鹿にして、会社が否定してくれればそれで済むと思っていた。
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