【小説】恋の幻想

温まってホッとすると、お腹が空いてきた、だからと言ってご飯食べたいなんて言えないから、如何しよう。

食べさせてなんて言えないなと考えていると、おじさんもお腹が空いたらしく、二人を交互に見ながら言った。

「そうだコンビニで食べ物買ってこようか?」優しすぎるよ、こっちが買ってこなきゃいけない立場なのに。

「ご迷惑ですから。」断るべきだよね、これ以上迷惑を掛けるといけない位の常識は有る。

「何か買ってきてよ、お腹空いてるんだから。」彼女さんが命令口調、怒っているのかな。

奥さん強いなそう思った、奥さんっていつも叱られていて、夫の言う通りにする存在なんだと思っていたから。

実際に自分の親はそうだった、親と言っても片方は少し前に親になったばかりなんだけどね。

優しい人はコンビニに向かった、彼女となんて言っていいか分からなくて、こちらは無音になる。

その張り詰めた無音の中に、声が浮かび上がる、彼女さんの優しい声だった。

「あざとか有るでしょ、後で良いから何が有ったか教えてくれる?」見られてたんだ、見られたくは無かったのに。

頷いて見せる、でもどう言えばいいんだろう、私の穢れた部分も言わなければならない。

もう一度部屋に無音が充満している、彼女の優しい気持ちが底に漂ってはいたが。

「ただいま、買ってきたよ。」同じお弁当が3つ並ぶ光景、家族ってこうやって一緒に食べて、繋がっていくのかな。

知らない人でも一緒に食べると、家族の絆が出来るのかな、そっと温めてある弁当の蓋に触れて、温かさを感じてから蓋を開ける。

「食べてから話そう、落ち着いてからね。」そう言いながらペットボトルを机に出している。

彼女はキッチンの扉をあちこち開けて、コップ1つと湯呑2つを持ってきてくれた。

「はい、これにお茶を汲んでね、見た所綺麗だから大丈夫でしょ、なんだったら洗うけど。」言いながら目の前にコップが置かれた。

何だか変だな、ここに住んでいるんなら、そんないい方しないでしょ、奥様が管理するのが普通だもんね。

「お茶っぱ位用意しておいたら、私が居れば出してあげるんだから。」この彼女の言葉にも違和感。

「だってお前、婚約破棄したからさ、居ないのを想定して生活するだろ、普通は。」夫婦でもカップルでも無かったらしい、当たり前の感じが有ったから、想像していなかった。

婚約破棄ってワードが飛び込んできて、初めて自分の違和感を納得させた、カップルでは無かったんだ。


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