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【小説】恋の幻想

ずっと裕子さんの存在が気に成っていた、好きだったのに結婚できなくなったのなら、気持ちはまだあるのかも知れない。

好きとか会ってると嬉しいとかと、結婚して住むには深い溝が有る、結婚は感情だけで無く、そこには生活が横たわっているのだから結婚しなかったのかも知れない。

「ちょっと聞いていいですか?」いきなり聞いてみる、解らないのなら聞いてみればいい。

親の居る家に居た時期には考えられなかった、家を出て仕事を始めてから、そう考える様になった。

「何でも聞いて、俺に答えられる物ならね。」良平さんは何でもこいとばかりに微笑んでいる。

裕子さんの気持ちが解らない、こんなにいい人なのに、私だったら嫌だと言っても縋りつく。

実際に無理無理付き合って貰ってる感が有る、好きだって思ってないのかもしれない。

「裕子さんとは何故結婚しなかったんですか、凄くお似合いのカップルなのに。」恋の命綱を何とか繋げて居る。

好きだったのに拒否されたって言われたら、命綱が細ーくなってしまうかも知れない。

「困ったな、俺が婚約破棄したわけじゃ無いんだよ、裕子が言ってきて。」思った通りの答え、自分も好きじゃなくなったからって言って欲しかったんだけど。

「裕子さんが言っていたけど、止めようって言ったらそうだなって言っていて、本当に私が好きだったのかどうか解らないって言ってたんです。」裕子さんは嫌がると思ってたのにとの愚痴を聞いた。

「もともとが押し切られちゃった形だったんだよ、好きではあったけど結婚ってまだ現実味が無い時期で、好きなら結婚しようって言われて、お互いの親も知り合いだったし、面倒が無いと思ったんだよね。」面倒が無いって言葉はちょっと嫌だな、人生を共に生きるつもりだった筈なのに。

「じゃあ、結婚したいって思ってないのに婚約してたんですか?」裕子さんの気持ちになって強い口調になっている。

私も同じなんだ、押し切る感じで付き合って貰って、好きじゃ無いのにあって貰っていると思うと、自分が哀しくなる。

良平さんが溜息をつく、「はあ。」女って面倒だと、この吐息が言っている。

「そうなんだ、考えてなかったんだ。」なんて返せばいいのか解らない、私は好きに為って貰えるまで待てるけど、彼にとってそれが幸せなのかは解らない。

スキでは無い人に言い寄られてしまう気持ちが解る、何も考えないで好きというのも拙い位に私は穢れているし。

それに結婚で終わりじゃ無い、そこからが生活が始まってゆくんだろうから。


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