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30cmと50cmのはざま

ずっと、気になってはいるけれど見て見ぬふりをしてきた。

4LDKの我が家が2LDKしか機能していない、余計な物でいっぱいになっている部屋がある。
部屋だけでなく収納なんかも色々なものが適当に突っ込まれてはじけそう。

何年、5年やそこらじゃないくらいそれを続けてきたように思う。

ある日、それを片付けようと思い立った。
この時点ではかなり重苦しい決断である。
以前、学びの場で先生が仰るには「勉強を続けることは大きな歯車を回すことと似ている、はじめにとても大きな力がいるけれどまわり始めればあとは習慣づいていくのでそのことを胸にやってみてください」と。
わたしが決意の時点に立った時、大きな力を使う勇気が必要だった。

そういうことを周囲では「断捨離」っていうけれど、これって最初は整理整頓をして不要なものを捨てる、という意味ではなくてもっとミニマムな生活をしていこうよという意味だったと思う。でもいいや、断捨離の始まりだ。

きっかけはサバンナの高橋茂雄さんのyoutubeチャンネルだ。
高橋さんが整理整頓モンスターなる協力者数人の協力を得て、1日8時間、3日間かけて部屋をきれいさっぱりにしたというストーリーだ。
すごくすっきりする動画だった。
しかしわたしには整理整頓モンスターの協力者がいない。いないというか、興味がある人がいない。「ねえ、洗面台のケースがカビちゃってるよね」と家族に聞くと「え、わかんない」という返事が返ってきた。でも、見て見ぬふりをしてきた部屋の潰れっぷりを許してくれていたのだからそれはそれでいいかと思う。

自分が整理整頓モンスターになるしかなかった。
実際に片づけを始めたのは、ものすごくたまに行きたくなるコメダ珈琲への道中に100均の路面店があり、立ち寄ったことだった。とりあえずプラスチックの収納ケースを大小さまざまと本や段ボールを束ねる紐など3,000円分くらい購入した。
それからハウスダストアレルギーなので、前夜に薬を飲むことも忘れなかった。

まずは和室の中学受験グッズから手を付けた。
我が家の和室はデザイナーさんが遊びのあるデザインにしてくれており、なかなか素敵なのだが3年間の中学受験に使ったものがどさりと置きっぱなしになっていた。もう息子は高校生なのによその学校のパンフレットから塾のテキスト、丁寧にファイリングされたテスト類もそのままだ。
それはすべて適量を紐で束ねるだけなのでサクサク進んだ。わたしは紐で束ねるのが上手い。昔の職場のパートさんや近所の人、結婚する前の夫などに称賛された実績を持つ。『はなまるマーケット』で学んだ。わたしはなにかと『はなまるマーケット』で学んでいる。

中学受験のテストやノートをめくってみると、まだ小学生だった息子のつたない文字で一生懸命書きこまれたものが自分を感傷的にさせた。「小さいのに頑張ったなあ」とか「小さいのに難しいことを要求しすぎたことが多かったな」とか。4年生の夏休みと春休みはまず1日で学校の宿題を終わらせてあとは自宅で家族3人で計画を立てた勉強をしていた。わたしは教材を用意し時間を計ったり丸付けをする係をしていた。犬は犬の係をしていた。
涙ながらにそれらを束ね、資源ごみの日に家族の協力を得てどっさり捨てた。捨てるときの協力は得られたので良かった。

次に、2つある階段下収納のうちのひとつ、リビングダイニングに向かっている大きな棚に着手した。45ℓのごみ袋を2枚用意し、とりあえず、いるもの・いらないものにどんどん分けた。結果、7割要らないものだった。前に住んでいた部屋の契約書などものすごく要らないものが出てきた。
それをプラ・紙に分けて捨てた。このあたりが苦しかった。思い出はあるけれど使わないものをどうするか。貰ったけれどもう使わないものをどうするか。これはテレビ番組『教えて博士ちゃん』で整理整頓マスターのかわいい女の子博士ちゃんが「捨てるのではなく『手放す』のです」と言っていたことを参考に思い切って捨てていった。この「思い切って」ができるようになると大きな歯車はまわり始めた。
いるものはプラスチックのケースにカテゴリー分けして棚に収納した。
ずいぶんすっきりした。
わたしは誇らしげに家族に棚を見せ、必要なものの引っ越し先を紹介した。

これで軽い準備運動ができた感じだった。
まだ山のように物が置かれた部屋がある。

毎日まいにち、紙を束ね、要不要を分け、決まった曜日にゴミを出す。
修行みたいだ。しかし、そのうちに毎晩寝る前にまだ整理途中の部屋をひとりで静かに眺めて「明日はこれを捨てよう」という思いを新たにするようになる。

当然ひとりの家ではないので、家族にも仕分けを手伝ってもらわねばならないところまできた。
息子には期末テストが終わるのを待ち構えて、大きなおもちゃ箱2つの中身とゴミ袋を渡して「いる・いらない・プラ・燃える」に分別してもらった。
当時2ちゃんの情報をもとにサンタが家電量販店で休日の朝に並んでゲットしたライダーベルトや付属品の数々は見事であった。それを揃えているうちに高校生は「ちょっと変身したい」と言って仮面ライダーフォーゼに変身していた。わかった、お前はもう成人したらライダーになりな。

一方オットは「これいるの」と聞くと思考停止してしまうので「これもういらないね、欲しくなったらまた買おう」と言って確認の上バンバン捨てた。
ただ、マツダの伝説のスポーツカーRX-7の大ファンなのでそれの本とかCD類は残すことにした。

あとはわたしの責任であるところが多かった。
家中に「なにかの箱」がしまわれている。ゲーム機の箱、HUNTERの長靴の箱、パソコンの箱、靴の箱、とにかく箱が多い。なんで空き箱に滞在権を与えていたのだろうか。売るにしたって箱の有り無しはそんなに影響しないだろう。それをひとつひとつたたんで束ねていった。箱、いらない。

粗大ごみも大きな山のひとつであった。
大きなガーデンパラソルや壊れたファンヒーター、大きなゴミ箱、これら13点をLINEで申し込みし捨てることにした。
その日は土曜日で、どうやら断捨離ブームなのか回収には3週間くらいかかりそうだったが自治体のストックヤードに持ち込むのなら即日捨てられるとのことでオットの協力のもと車に積み込んでとあるストックヤードへ持ち込んだ。思いがけない塩対応もあったがそんなことは気にしていられない。

わたしはこの4LDK正常化計画にあたって市のごみ出しルールブックを読み込んでいた。
粗大ごみの申し込み時に意外だったのは「こちらは50cm以下でしたら燃えるゴミにお出しいただけますが」と言われまくったことだ。30cm超えたら粗大ゴミかと思いきやそうではなかった。我々は燃えるゴミの日に、ルールを犯しているような気持ちで「お出しいただけます」と言われたものを捨てた。
このルールブックは役に立っているのかわからないが面白い。ゴミ出しのすべてが書かれており、索引を見ると「け」のページには「ケチャップの容器」、「ま」のページには「マヨネーズの容器」が載っている。行政の苦労がにじみ出ている。

粗大ごみが無くなると作業スペースができた。
これはデカい。
なにより、我が家の玄関が自転車だけになった。ガーデンパラソルなどが置かれているジャングルがあったのでそれが消えてガランとした玄関になった。靴もバンバン捨てた。

とはいえ、まだ計画は途中なので、家のあちこちに束ねられたゴミやごみ袋が置かれている。ゴミの日に順番に捨てていくので過程が美しくない。

で、今はクローゼットから備蓄用の水が大量に見つかったのだが、賞味期限が6年以上前のものなので風呂に使って追い炊きをして良いかエコキュートのメーカーに問い合わせているところだ。なかなか連絡がこない。もちろん水の備蓄は必要なのだが、今年になってエコキュートを入れ替えたときに「370リットルはここにあるので非常時はここから使えます」ということをやっと学んだ。家の購入時にも説明はあったのだがきちんと使い方を聞いていなかった。

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2015年が賞味期限の水選手たち(ASAHI飲料さんに確認すると2013年製とのこと)。

わたしは高橋茂雄さんのような財力はないので、メルカリも活用している。
困っているのが本。本。本。漫画も含め、大小さまざまな本が本当に多い。
さらに、家族でスマホやタブレットなどの充電をしていると線がごちゃごちゃで美しくないので充電器ステーションの設備を購入して省スペース化に成功した。

道半ば、まだまだ同じ作業が続くがもう後戻りはできない。
4LDK正常化のあかつきには誰かに宿泊してもらうなど、してみたいものだ。

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