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スパイス狂い

「こどもはカレーが好き」
「カレー作っとけば間違いない」

冗談じゃないと言いたい。
カレーに喜ばない子供だっている。わたしは積極的にカレーライスを食べたいと思わない子供だった。人参や玉ねぎが嫌いというわけでもないけれど「今日はカレーよ!」「やったあ!」みたいな感情はなかった。

作るにしてもカレーはやる気のないときに思い浮かぶくらい。

田舎育ちで説明がつくかわからないけれど、わたしは料理をおいしく作ることができる方だ。結婚して北海道を出るときに心配した友達が『基本の料理』という本をくれたとしてもだ。あれはすごく役に立ったよ、本当に感謝しています。
『基本の料理』で「こく」というものの存在を悟った。
それがわかるようになってからは母の料理を参考にしつつ自分の納得の味を確立していった。けれど作れるのは母が作ったことのある料理と自分がどこかで興味を持ったものくらいで「デミグラスソース」とかそういうものは作ったことがない。煮物やうどんのかけつゆがおいしくできるとかそういったことだ。田舎っぽいもの。
産後体調を崩してしまい、料理が楽しいものではなくなってしまったが、それでも作るならおいしく感じるものがいいと思う。

ひと月くらい前だったか、インスタグラムでたまたま「スパイスから作るカレーは梅雨時季の不調によい」というような情報を得た。

なんとなくポワンと頭に浮かんでいたピースがガチっとはまる感じがした。
・家のカレー(市販のルゥから作るもの)とお店の本格カレーは違う
・家のカレーは好きではない歴史
・不調(好調ではない)
・漢方薬やお茶が好き

思い立ち、スパイスから作るカレーを作ることにした。
まず、怪しいスパイスを買ってはいけないと思い、調べてamazonで人気のあるスパイス店のスパイスセットを購入した。
・ターメリック(=ウコン)
・カイエンペッパー
・クミンパウダー
・コリアンダー
・ガラムマサラ(こちらは何種類かのスパイスが混ざったものの総称)
これで大体1,600円くらい。そこにもうひとつ、
・クミンシード
を別に買った。
容器はニトリのスパイスケースを買いに行った。積み上げて使え、開閉しやすく湿気や臭いから中身をしっかり守ってくれる。これがひとつ500円くらい。スパイス込みで4,000円くらい、続くかどうかわからない、今のところ好きでもない歴史があるカレーに結構な初期投資をした。あとから発見したが、CAN★DOのスパイスケースも良さそうだった。もう遅い。
あとは安いスパイスが新大久保で買えるという情報も得たが、新大久保に行く用事がないのが残念だ。

後日、amazonから届いたスパイスの香りにわたしは何かを確信した。
「きっとこれは楽しい」そんな感覚だ。

初めて作ったのはチキンのキーマカレーだ。
これが興奮するほど面白かった。
はじめにオリーブオイルでクミンシードを炒めるのだがのぼりたつその香りに心を鷲掴みにされた。スパイスのショーが始まる。これからワタシタチ素敵な料理になってそのあとはなんと皆さんの健康のために活躍しちゃいます、と言っている。

クミンシードというのはクミンの種で、小さく細長い。それを粉末にするとクミンパウダーになる。同じものだが使う順番が違っていて、クミンシードを炒めたときに合点がいった。

家族にも好評であった。
けれど、やっぱり自分の中で「これが美味しい」というバランスには達していない感覚があったのでそれ以降ネットの様々なレシピを参考にスパイスカレーを作り続けた。

「チキン以外にないの」と家族からの指摘があり、ビーフカレーに挑戦したがおいしくできなかった。
実はチキン以外でカレーを作るつもりはなかった。健康にはチキンがよいと決めつけていた。鶏むね肉には疲労回復効果が期待できるし、骨付きの鶏肉のスープには「血を補う」効果が期待できるとも聞いた。ビーフカレーがおいしくなかったことに対して「インド人は牛を食べないのだからインドのカレーのスパイスに牛を合わせたことがないだろう」と突っ込みどころ多めの解を出し、ビーフとはさっさと距離を置いた。
タイカレーだってあるし、カレーはどこが発祥なのだろう。おいしく作れるならビーフにも挑戦する気はある。

4回目くらいで自分の「スパイス黄金比」をおおむね発見した。
それをメモに書き留めたが、何回それで作っても同じ味にならない。これも面白さのひとつだ。
ある時から家族には「今日もカレーでいいか」と聞くのをやめた。「ええーまた今日もカレーなの」と言われないし、聞けば「ハマっているものばかり作るよね」というツッコミがあるのだがそれを回避できる。わたしはあまり食に興味を持てないため、たまに「あら、これすごく好きだわ」という料理を見つけると立て続けに作ってしまうきらいがある。でも言わせてほしい、スパイスに終わりはないと。

そんな風に家族をウンザリさせているのかと思いきやもうひとり、わたしのスパイスカレーに魅了されている者があった。

毎月、片頭痛の日が3日程度ある。
そういう日はてきぱき動くのが難しい。ある日、リモートワークが始まる前のオットに「今日はちょっと無理そうだからコンビニで何か買おう」と朝のコンビニへ行ってレトルトカレーを買った。「うちにトンかつ冷凍してあるからそれでカツカレーしたらいいよ」たまには他のカレーもいいと思った。
しかし、昼近くになって思いのほか頭痛が良くなったわたしは「頭が痛くなくなったよー、暇だー、暇だー」とふざけて踊っていた。
するとオットは「またその踊りか、今日カツカレーなんでしょ、だったらいつものカレーでカツカレーが食べたいなぁ」とのたまったのだ。
ほぅ、ハマってますね。
そんなに難しいものではないので、わたしはまた炒められていい香りのするクミンシードを思ってカレーを作りはじめる。

健康効果について、自分が感じたのは冷えとPMSの軽減である(自分比)。現在、自宅にある物の大々的な整理をしているのだが、ずいぶん精力的にやれているなとカラダの周期記録を見た。PMSの時期もなんか元気に片づけてる!と驚いた。ふり返って変化といえばスパイス狂いになったこと・・・じゃないかと思う。あとは、ごくたまにビールを飲んでもいいかと思えるようになったこと。お酒はカラダには必要ないものだが、好きな人はターメリック(=ウコン)によって肝臓をいたわりたい。いたわっているような気持ちになれる、そんな気休めだ。
とはいえなんでも程ほどがよいと思う。4~5日に1回カレーを作り、2回くらいちょこっと食べたら家族にやっつけられてなくなっている感じ。



話はここで終えたい。
最後にスパイス狂い初心者の自分が今ベストだと感じているスパイスカレーのレシピを紹介しておきます。

【初心者カレー】
材料(4人分)
・鶏むね肉(2枚)・・・もも肉でもよいと思います。
・玉ねぎ(大2コ)
・ニンニク(3かけ)
・ショウガ(ニンニクと同量くらい)チューブで売っているものでも同じ。なお、ショウガの保存については皮ごとよく洗って酒(梅酒とかを作る酒)につけたものを瓶で保存しています。昔『はなまるマーケット』でショウガ農家のお宅ではそうしているというのを信じて続けています。使いたいときに使えるし、使ったら買い足していく方法で傷まないので(これに関しては個人的な見解です)便利です。
・トマトの水煮缶(1缶)・・・カットタイプのもの。間違ってホールタイプのものを買っても問題ありません。
・プレーンタイプのヨーグルト・・・お玉に1杯くらい
・水・・・トマトの水煮缶に半分~1杯弱

(スパイスの用意)小皿組とお椀組にわけて用意
・クミンシード(小さじ2)・・・小皿に分けておく

・クミンパウダー(小さじ3)・・・お椀くらいの器に他のスパイスと一緒に入れる
・コリアンダー(小さじ4)・・・お椀へ
・ターメリック(小さじ2)・・・お椀へ
・カイエンパウダー(小さじ1/4)・・・真っ赤なトウガラシのパウダーです。これで辛さを調節します。お子さん用と分けるときはここに注意です。お椀へ
・ガラムマサラ(小さじ2)・・・お椀へ
・黒コショウ(適当)・・・ターメリックと組み合わせると吸収率が格段に上がるとのこと。ターメリック(=ウコン)の効果を上げたい時に使います。肝臓障害や妊娠中の方はターメリック自体摂取を控えた方がよいとのこと。ターメリックの健康効果については面白いので調べてみてください。黒コショウはガラムマサラにも含まれているようです。お椀へ
・塩(小さじ2~3)・・・お椀へ
(・鶏ガラスープの素(小さじ1)・・・なくてもよい)
・オリーブオイル(適量)・・・最初のフライパンへ

①フライパンにオリーブオイルとクミンシードを入れ中火で熱を加える。揚げる感じで。そこで香りを嗅いでみて欲しい。
②ゆっくり火を通しつつニンニクを刻んでフライパンに入れる。そしてショウガも入れて炒める。弱火~中火にする。パチパチはねることがあるので気を付けてください。ニンニクは焦げやすいので火加減に注意。
③その間に玉ねぎの千切りを作ってフライパンに入れる。軽く塩を振って炒めると早いです。
④玉ねぎが飴色になるまで炒める。割と手間が掛かるのはここだけです。中火~弱火で調節しながら。3分ずつくらいかき混ぜればよいので鶏肉を一口大に切ったり、食器を洗ったり、掃除機を掛けたり、合間に色々できます。
⑤玉ねぎは炒めるヘラで切るように、潰すように細かくしていきます。この飴色玉ねぎペーストがカレーの味を支え、とろみも出してくれます。
⑥お椀組のスパイスを入れて飴色玉ねぎペーストによくなじませる。
⑦鶏肉を入れて炒める。完全に火を通さなくてもいいです。
⑧トマトの水煮缶を入れトマト片を潰すように、混ぜたら水とヨーグルトを入れる。ヨーグルトは多めでいいと思います。トマトの酸味を和らげてくれます。
⑨よく煮る。鶏肉に熱が通ることを意識。汁が洋服にはねると結構落ちないので気を付けてください。
⓾味をみる。物足りないときは塩で調節。できあがり。
※辛さがもっともっと欲しい場合はカイエンペッパーを少しずつ追加して味をみるといいと思います。ココイチの辛さレベルってもしやこれで調節しているのでは、という発見がありました(違ったらすみません)。

色々なものを入れるタイミングは適当でいいと思う。「ながら」を重視し、食材を刻むタイミングであったり、玉ねぎを飴色玉ねぎペーストにする合間に家事ができる要素を入れ、一人暮らしの若者や忙しい人にも挑戦してもらえるようにしました。というか、自分がながら料理が好き。
トマトの水煮缶やヨーグルト、ニンニクは買い置きしています。



そのうち頭に布をグルグル巻いて、米粉でナンを焼き始める予定だ。ココナツミルクで作るカレーにも挑戦したい。

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