Sachiko Tanouchi

アーティストになるために美術史や表現について改めて勉強中。自分の読書忘備録として、また…

Sachiko Tanouchi

アーティストになるために美術史や表現について改めて勉強中。自分の読書忘備録として、また思考の言語化トレーニングとして、読んだ本の感想を書きます。

最近の記事

「ラインズ」(ティム・インゴルド著)と「Lines」(金沢21世紀美術館の展覧会)と「lines」(松田行正構成・文)

私は、このところたくさんの線を描いた作品を作っています。ですので「ラインズ 線の文化史」という本があると知った時は、これは読まねば!と思いました。 『線』をあらゆる角度から考察し、そこから人間の歴史や生活を紐解くという大変興味深い本です。 張り切って取り掛かったはいいけど、これがまた私には読みづらくて。 どの章も内容は面白いのだけど、考察が次から次に湧いてくるというか、言葉がどんどん進んでいってしまう。それを追っていくと、その章を読み終わったときに「さて、なんの話だったっけ」

    • ボランティアが運営するオランダのギャラリー

      現在(2024.8.9〜9.7)、オランダのギャラリー Kunstcentrum de Kolk で、グループ展をしています。 ヨーロッパで「ギャラリー」というと、いわゆる企画展を行うプロの取引の場なのだそうですね。 日本では、そういうところも、作者が場所代を払って展示する"アート専門のレンタルスペース"もどっちも「ギャラリー」というので、ちょっとまぎらわしいです。 (しかもこの話は、英語の苦手な私たちが英語の苦手なリエッテさんから聞いたので、不十分なところもあると思います

      • オランダのかわいいギャラリーで展覧会をしています

        2024年8月11日から9月7日まで、オランダでグループ展をしています。 ヨーロッパに旅行でさえ行ったことがないのに、どうしてそんなことが可能かと疑問に思われますか? それは一も二もなく、現地に友人がいるからです! 実力とか関係なく、私の場合はそれに尽きます! なので海外で展示をするノウハウが分かるというのではないですが、とてもいい経験だったのでぜひ読んで下さい。 日本に旅行に来ていたリエッテ・ブトーさんと知り合い、長い付き合いを経て、彼女の提案で実現したグループ展です。

        • 「なぜ美術は教えることができないのか」ジェームズ・エルキンス

          よくあることですが、美術系大学を卒業してから何十年もたって、もっと勉強しておけばよかったなあと思っています。そして、海外の美術大学ではどんな勉強をしているのか知りたくなって、ネットや本で調べ始めました。 まさにその、海外の美術大学で教えているひとが「教えることができない」って言ってる本!めっちゃおもしろそう! ただ、文章が読みづらかった。もうちょっと整理してほしい。 それでもがんばって読んだのは、これは誰もがあまり触れない、基本的なことに真正面からむきあっているのだと気づい

        「ラインズ」(ティム・インゴルド著)と「Lines」(金沢21世紀美術館の展覧会)と「lines」(松田行正構成・文)

          「未分化の記憶」開催中!

          個展開催中です。 私の切り絵や型染めなどの作品を、空間演出家の北野雪経氏の手で展示を行い、作り上げたインスタレーションです。 自分で言うのもなんですが、とてもきれいな空間です。 自分が見たかった美しい景色です。 ぜひご覧いただけたらと思います。 この展示のテーマが「記憶」です。 私たちの頭な中にはたくさんの記憶がしまわれていて、普段は自分でも思い出せないのに、ふとしたときに蘇ることがあります。 そんな記憶の引き出しを開けることができるような展示を目指しました。 脈絡もなく、

          「未分化の記憶」開催中!

          個展のお知らせ

          このたび、初めて本格的な個展をすることになりました。 切り絵や型染めなど、どちらかというと工芸的な手法を使ってのインスタレーションに挑戦します! 興味のあるかたはぜひお越しください! 自分自身は小さいころから絵をかいたり、工作することが好きで、 美術館やギャラリーに行くのは楽しみのひとつです。 でも、最近疑問に思うのです。 そもそもアートを見に行く行為ってなんだろうと。 こんなに人を楽しませるコンテンツにあふれている現代で、美術館やギャラリーに足を運ぶ人たちは、どうしてそれ

          個展のお知らせ

          「どこからそう思う?」フィリップ・ヤノウィン

          「学力をのばす美術鑑賞」というサブタイトルがついています。惹かれますね! 鑑賞するということを考えなければいけないと思いました。作り手でありたいとすれば、同時に自分自身もある程度すぐれた鑑賞者でないといけません。そして鑑賞者にどう訴えるかということを考える。日本のアーティストは、鑑賞者に向けて訴える努力は充分にできているでのしょうか。他の国では何をしているのでしょうか。それを知りたくて手に取った本です。 さらりと一読して、ふむふむ、なるほど。MoMAでも作品に興味を持っても

          「どこからそう思う?」フィリップ・ヤノウィン

          「日本美術を見る眼」 高階秀爾

          海外の美術に関する本をだいぶ続けて読んだので、あらためて日本の美意識について考えたいと思いました。 近くの市立図書館に行くと、日本美術のコーナーは広くあるのですが、 「飛鳥時代の仏像」であるとか「小袖の文様」であるとか、 あるいは「北斎」「岡本太郎」のような個人の作家についてなど、 さすが自国のものは専門性が高く細分化していて、ゴンブリッジのような「これを読めば一通りわかるよ!」というものがあんがい見当たりません。 そんな中で目に留まったのがこの本。 裏表紙にあった「西洋とは

          「日本美術を見る眼」 高階秀爾

          「マルセル・デュシャン」カルヴィン・トムキンズ著

          お正月休み、何かまとまった読書をしたかったので、「なんだかカッコいいと思うけどよく分かっていない」デュシャンを選びました。 便器にサインした作品の人、ってことは知ってます。美術界は、デュシャン以前と以降に分かれるよ、という意見も読んだことがあります。 でも、意外と単純なことがどこにも書いてない。 どんな経緯で、「泉」は美術史上重要な作品になったのか。 「《泉》はデュシャンがアート作品として見せた瞬間から、アートの世界に深い影響を与え、コンセプチュアル・アートとポップアートが

          「マルセル・デュシャン」カルヴィン・トムキンズ著

          「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著)

          ”心”というものが、胸の中に存在するイメージは、昔から広く持たれていました。「リボンの騎士」に描かれていたように、ハートマークがポコっと入っているみたいな。でも実際には胸を開いてもそんな臓器は無いわけで、私たちの感じ方や思考は全て脳がやっているわけです。 最近、研究が進む脳科学から、学ばないでいる理由がありません。 わたしたちは何を美しいと感じるのか。何に感動するのか。そのことがわたしたちの思考にどのような影響を及ぼすのか。 この本には「現代美術史から学ぶ脳科学入門」という

          「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著)

          「美術の物語」(エルンスト・H・ゴンブリッジ著)を読んで

          西洋美術の大まかな流れを学ぶなら、必読の1冊!と複数のところで目にしたので、値は張りましたが購入しました。 私の学習の初めの一歩です。 真っ白の地に黒と金のシンプルな装丁、ずっしりとした厚みと重さ、美しいフルカラーの数多の図版、そしてたくさんの文字、文字… う〜本好きにはたまらん!もう持ってるだけでも嬉しい! 本棚の1番いいとこに置いちゃう! 文章も非常に読みやすく、量の割にはすらすら読めます。さすがに「美術に知識のない、若い読者を想定して書いた」だけのことはある。そして

          「美術の物語」(エルンスト・H・ゴンブリッジ著)を読んで

          「アートを書く・文化を編む」(上村博・大辻都著)を読んで

          「現代に通用するアーティストになりたい」 私は人生の半ば⁈も過ぎた今になって、初めてこう思いました。 美術系の大学も出たし、創作も細々とは続けていました。でもそれは「作るのが好き」「できたら評価されたい」といった、曖昧な気持ちでやっていたこと。自分の作るものに自分でモヤモヤしたものを感じていたのは、当然かもしれません。 ある日ふと気付きました。SNSに流れてくるさまざまなアート作品を見るにつけ、自分がいいと思ったものが海外の作品が多いこと。名前から、あ、日本の人だ、と思っ

          「アートを書く・文化を編む」(上村博・大辻都著)を読んで