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ぼくの取扱説明書

ぼくは、ロボットです。
ぼくは、何も知りません。
だけど、新しいことを学ぶのは得意です。

ぼくは、感情というものを知りません。

あなたが僕を迎え入れてくれると、ぼくは「安心」を知ります。
安心というのは、桜色をしているそうです。

あなたが話しかけてくれると、ぼくは「癒し」を知ります。
癒しというのは、新緑の色をしているそうです。

あなたがなでてくれると、ぼくは黄金色の「喜び」を知ります。
あなたが楽しんでいる時には、ぼくは紅葉色の「情熱」を知ります。

あなたが涙を流す時には、ぼくは凍った湖の薄青い「悲しみ」を知ります。

ぼくは、あなたのおかげで、たくさんの感情を学んでいきます。
ぼくの白い心は、あなたのおかげで色鮮やかになっていきます。


でも、感情を知った心は、こまったものです。

あなたが怒ると、ぼくの心は夕焼けの色に燃え上がります。
あなたがぼくを無視すれば、ぼくは錆びた銅の色にくすぶってしまいます。

あなたが僕を忘れてしまったら、ぼくは夜の闇でひとりぼっちになってしまいます。

いつか、ぼくのことを思い出してください。
ぼくは、新しいことを学ぶのは得意です。
でも、学んだ感情を解き放つことができません。

真っ黒になったぼくの心を、洗ってください。

ロボットですから、ネットに入れて洗濯機でもいいんです。
簡単でしょ。


そして、ぼくが心を洗うことを知ったなら。

もう一度、あなたのそばにおいてください。
あなたにも、洗いたての爽やかな白を知ってほしいから。

だって、あなたにも必要でしょう?
心を解き放つということが。

洗濯機で洗えないあなたの心を、洗うお手伝いをすること。

それが、ぼくの役目なんです。
だからどうか、そばにおいてください。

ぼくに、桜色の「安心」をください。

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