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Not Lack Of Ability but More Choiceリケジョの私が、理系(STEM)分野のジェンダーについての研究レポートを読んで、感じたその先の事

こんにちは。西岡幸子です。

2019年に会社員を卒業し、この4年近くは、英会話講師・共働き家族コミュいてぃ・人と組織の強み開発をやってきました。
そして2023年からは新たに、リケジョ特化型事業AWESOMEを指導していきます(そのため、英会話講師業はかなりセーブしてこちらに注力します)。

主な柱は、①企業・業種の枠を超えて繋がり、イノベーション人財としてアップデートするための学び合う場「AWESOME MATE」と②イノベーション人財となったリケジョ達がチームとなり、企業・事業者たちの課題解決やニーズに応じた価値を届ける「AWESOME LABO」の2つです。

はじめに

2つの柱があるとは言っていますが、どちらもこれから始めていくため、まずは、リケジョ達がどんなスキルや強みを持っていて、関わっていただける企業・事業者様にどんな価値を届けていけるかの洗い出しと共に企業様へのヒアリングを通して、落とし込んでいきたいと思っています。

この事業の起案当初からこのカタチになったわけではありません。
私自身の後悔・経験に加え、延べ100名近い現役リケジョへのアンケート、また個別のインタビューから頂いた多くの声からこのカタチにたどり着きました。でも、これらだけでは、ビジネスのカタチとして固めきるところまでは至りませんでした。
もっと客観的視点からの見解が欲しい。
そう思っていた時に出会ったのが、ピッツバーグ大学のワン・ミンテ教授が2013年に書かれた研究レポート「Not Lack Of Ability but More Choice: Individual and Gender Differences in Choice of Careers in Science, Technology, Engineering, and Mathematics」でした。

https://www.researchgate.net/publication/236061152_Not_Lack_of_Ability_but_More_Choice

私流の要約(抜粋)

本当はもっと多くのことが書かれているのですが、その中でも私が特に関心を持った部分だけをピックアップしていきたいと思います。

"These researchers have shown that math ability, at least by itself, is not the overriding factor in the underrepresentation of females in math-intensive fields."
"研究者たちは、理系分野における女性の過小評価について少なくとも数学の能力がその決定的なファクターではないことを示した"

Not Lack Of Ability but More Choice: Individual and Gender Differences in Choice of Careers in Science, Technology, Engineering, and Mathematics

"Researchers have also shown that among males and females with comparable outstanding aptitude in math, females are likely to outperform males in verbal ability"
"研究者たちは、数学において同程度優秀な男女の間で、女性の方が言語能力において男性よりも優れているということを示した"

Not Lack Of Ability but More Choice: Individual and Gender Differences in Choice of Careers in Science, Technology, Engineering, and Mathematics

"it is plausible that individuals with high math and moderate verbal ability have higher math-ability self-concepts than individuals with high math and high verbal ability do, and therefore feel more confident in choosing STEM-related careers."
"高い数学能力+中程度の言語能力の人は数学・言語能力双方高いレベルの人よりも、「自分は数学ができる」と自認しており、それゆえより自信をもって理系に関するキャリアを選択しているのはもっともな事実である"

Not Lack Of Ability but More Choice: Individual and Gender Differences in Choice of Careers in Science, Technology, Engineering, and Mathematics
数学も言語能力も高いグループは女性の方が63%と多数派である一方、
数学能力は高いが言語能力は中程度のグループになると、男性が7割を占めている。
33歳時点での理系職についている割合は、両方高いグループよりも
数学のみ高いグループの方が高い。
この背景には、こちらのグループの人たちの方が、
「自分は数学ができる」という自認レベルが高く、
自信を持って理系職に進んでいるという背景がある
理系領域の中で言語能力も高い人の割合を見た場合、
女性は45%が該当するのに対し、男性はわずか19%。

"Notably, the high-math/high-verbal ability group included more females than males. This is an important finding that contributes to current understanding of females’ underrepresentation in STEM fields."
"とりわけ、数学・言語能力どちらも高いグループにはより多くの女性がいた。これは理系領域における女性の過小評価の現時点での理解を紐解く上で大きな発見である"

Not Lack Of Ability but More Choice: Individual and Gender Differences in Choice of Careers in Science, Technology, Engineering, and Mathematics

"Our study provides evidence that it is not lack of ability that causes females to pursue non-STEM careers, but rather the greater likelihood that females with high math ability also have high verbal ability and thus can consider a wider range of occupations than their male peers with high math ability, who are more likely to have moderate verbal ability."
"我々の研究は女性が理系ではないキャリアに進むことは能力がないからではなく、数学だけでなく言語能力も高いため、理系を選ぶ男性(=多くは中程度の言語能力)よりも幅広い仕事を考えることができるからであるという証拠を示すものとなった"

Not Lack Of Ability but More Choice: Individual and Gender Differences in Choice of Careers in Science, Technology, Engineering, and Mathematics

私が特に注目した部分3つ

①数学・言語能力どちらも高いグループの男女比が4:6と女性が多い
数学という理系(自然科学)の面だけではなく、言語という文系(人文科学)の面でも高い能力を持つ人が理系に進んだ女性には多いということがデータで証明されていたことが、私自身やアンケート・インタビュー結果とも合致するのがとても興味深かったです。
よく「男性の方が数学が強い」と言われがちですが、そうではないと証明したということ。タイトルの「Not Lack of Ability」にもその見解が込められているようにも感じました。

②理系キャリアに進む大きなファクターが、能力よりも自認レベル。そしてその自認レベルが高いグループの男女比が7:3と男性が多い
客観的な能力レベルで判断するのではなく、「自分は理系に向いている」という自認レベルが大きな要因となり、理系職に進んでいるということ、そしてその傾向が男性で多いというのが、実際の理系職種の現状とも合致しています。数学が秀でているがゆえに、自認しやすいのも納得ですし、逆に両方が優れているが故、自分の強みが自認できていないというのは、次の③にもつながっていることなのかなと個人的に感じました。
また、数学・言語能力どちらも高いグループが理系職種を選ぶか否かの要因は自認レベルであり、ジェンダーの差はなかったという研究結果も非常に興味深かったです。

③理系分野の女性の過小評価について触れられているということ
実は、この部分がこのレポートを読んで衝撃を受けたことです。
なぜなら、わたし自身も含め、そして関わってきた後輩や社外メンティーなどでも頻繁に感じてきたことと合致したからです。そしてこれは、理系職種で働く男性からも耳にしたことがありますし、私も言われたことがありました(その時は正しく認識できていませんでしたが)。この点については具体的に触れられていなかったので、もう少し調べて行きたいと思いますが、このレポートで多くの女性が数学・言語能力どちらも高いレベルであると客観的に証明されたことや、言語能力が中程度の男性の理系分野での高い自認レベルなど、色々と背景に隠れたピースが見えたことがなにか手がかりになっていくのかなと感じています。

「理系に進んだ女性は、数学も言語能力も高いから、理系以外にも選択肢が多いから、あえて理系に進まないから思うように増えてこないよね」

的な結論で締めくくるのではなく、まずは理系に進んだ女性の自認レベルを上げ、実績を残し、女性でも理系の分野で力が発揮できる体制を整えてやらないと、本当の意味で理系分野に女性は増えてこないと、私は思います。

それにしても、この研究レポートに出会えたことは大きな発見でした。
ぜひともワン・ミンテ教授ともっと具体的にお話を聞いてみたいなと思いました。これを参考に具体的な事業のカタチに反映していきたいと思います。

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