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次なんてない



最後に点火し忘れていた線香花火

「次会った時にやろうね」

そんな約束をして、夏は終わったよ。

もう、風が冷たいよ。

次なんてなかった。

きっと来年の夏はまた違う誰かの隣にいる。

その先も、きっと、ずっと、そう。

夏の陽射しと思い出と一緒に、さようなら。

思い出はシャンプーの中に - 私編

君が選んで家に置いていたシャンプーなのに、隣で寝る私の髪の香りを嗅いで良い匂いがすると言う。

長かった髪も、君が好きだと言うから少し短くなった。

髪が巻きづらくもなった。首にコテで火傷ばかりした。

それでも君の目に私が映るなら、どんな自分でも好きになれた。

私の髪は自分で香りを嗅いでも良い匂いがすると思う。

また髪を巻いて、私はとびきりのおしゃれをして今日も“可愛い私″になるのだ。

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アイスの底は見たくない

アイスを食べすぎてお腹が痛くなることはしょっちゅうである

年中アイスを食べてはいるものの、やはり夏になればシーズンというか、風物詩というか

他の季節よりも食べる機会は多くなる

私はアイスの底が見えるのが嫌いだ

もうなくなってまう、終わってしまうのが嫌で、結局食べてしまえばなくなるのに変わりはないのに、いつまでもちまちまと食べるのである

終わりを見たくないからスプーンを止めた

でももう、

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予測された未来

7月も中旬に差し掛かる。

変わらずスマホに文字を打つ。

もうすぐ誕生日だ、ふふ。

少し嬉しくなった。







フリック入力も早くなったものだ。

仕事の返信も早く済ませよう。



「誕生日はどこに行こうか!」

「向日葵見ような!」

「浴衣着て花火見たいな!」

都合よく予測変換するくせに

予測された未来は一個もやって来ない。

温かくも冷たくもない予測変換にフリック入力

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腕枕の記憶

今日もベッドに入る。

もちろん隣には誰もいない。

記憶というものは厄介で、別に思い出したくもないものを引っ張り出す。

…枕に頭を乗せればすぐに。

大して心地良くもない男の腕の中で、私は頭をずらして眠る。

-お前の腕が疲れないようにするためだよ

今まで何人がそれに気付いていたのだろう。

結局私は眠れない。

寝たはずの彼は寝返りを打ちながらもう片方の腕で私を包み込む。…眠ったまま。

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