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【毎日投稿#369】「処刑少女の生きる道」から見る、キャラへの共感性の増強術。鬼滅の刃に使われていたテクも!

バイト先に向かう通勤電車の最中、こんなライトノベルを読みまして。👇

最初、私はこれを分析を目的として読みはじめたのではなかったのですが、たまたま私の所属する小説家志望者サークルの作品分析会の題材に選ばれまして。

狙っていたわけではなく、分析会に合わせたのではなく、たまたま! 私の所属する小説家志望者サークルの分析題材に選ばれまして!
大事なことなので二回(ry

なんで、私の蓄積した創作理論と合わせて気づいたことをいくつか上げていきます。

ちょいネタバレあるので未読者は注意!


どうも、田村サブロウです。

アニメ化したり新人賞を獲ったりした、いわゆる名作と呼ばれるライトノベルには共通項がいくつか存在します。

私が自分なりに研究して見つけた共通項のうちの一つ、それは「視点人物と読者の認識をシンクロさせている箇所がある」こと。

今回の処刑少女、そのプロローグから抜粋して例を上げてみます。

「(中略)大丈夫よ。迷い人なら、なんか感覚ですごい『導力』を使えるはずだわ」
「んなこと言われてもな……。そもそも『導力』ってなに?
「うっさいからやりなさい!」
※処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る―より抜粋
導力という単語すらいま初めて聞いたのだが
※処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る―より抜粋

作中世界における魔力ポジである、「導力」の固有名詞が初登場する場面です。

読者のみなさんは「導力」なんて単語を日常的に使いますか? 使いませんよね? 聞いたことすらありませんよね?

このシーンでは、視点人物と読者の「導力という単語なんて聞いたこと無い」という認識を一致させることで、作品への共感性を高めているわけです。

主人公と自分の思っていることが同じである。この認識が、作品への没入感を高めてくれるのです。


他の例を挙げます。

ヤンデレ属性を秘めているモモというキャラがいるのですが、彼女がそのヤンデレの片鱗を見せた時。

当時の視点人物であるメノウは「目がマジだった」「脅しだったらいいなという希望的観測を奪い去るには十分な迫力」と地の文でけっこう散々に語っています。

これも視点人物と読者の感想が「モモがやべぇ」で一致している、作品への没入感を高める一例なわけですが……。


やべーやつの代表であるモモに関して言うと、「視点人物と読者の認識をシンクロさせる」法則の例外があります。

ひとたびモモが視点人物になると、筆者のリミッターが解除され、読者に共感してもらうことの重視度が下がるのです!

八百年の歴史を誇る重要建築物にして、この国の第一身分の象徴的な拠点だ。文化的な価値も含めれば、もはや金銭では算出できないほどである。

つまり、モモにとっても昨日の朝食程度には記憶にとどめておいているもので、一週間もすればきれいさっぱり忘れている程度の存在価値しかない建物だった。
(中略)
「きえうせろ」
※処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る―より抜粋

読者は歴史的な価値のある博物館とか文化遺産を、癇癪ひとつで消し飛ばそうと思いますか? 思いませんよねぇ😖???

ゆえにこのシーン、読者はまったくモモに共感できなくて、ただただモモはやべーやつだと印象づく所なんですが。

このシーンはこれでいいんです。だって実際、モモはやべーから。

読者に視点人物と共感してほしいのではなく、読者に視点人物を恐れてほしかったり、ヤバいと思わせたかったりする場合は、共感性なんか考えなくていい! リミッターを外せ! 表現の制限をぶっこわせー!!😄

割り切った、いい視点の使い方だと思います。

まぁこれ、メノウと読者がモモをやべーやつだと認識する描写が事前にあったので、事前知識の下地が読者に整っていたからこそできた裏技だと私は見ていますけどね。


最後に、読者にキャラを好きになってもらう工夫がこのラノベにはありました。

キャラの過去を、生い立ちを描写していたのです。

この手法は鬼滅の刃の煉獄さんにも使われていましたね。

キャラの人としての思いや背景を知ったとき、人は共感を抱きます。

キャラの生い立ちから人としての思いや背景を描写し、キャラの心の礎がなにから来ているかを示すのです。

煉獄さんが好かれているのは他を圧倒する力ではなく、キャラの弱さや苦しみ、そして人としての誇りと信念をもって使命を全うする生き様にあるので。

……って、おおっと! 処刑少女ではなく鬼滅の刃の話になっとるやんけ!

処刑少女ではメノウとモモに生い立ちの描写があって、二人の信念の成り立ちが描かれていました。

メノウとモモの魅力を高める、大事な描写です。


とりあえず、私の処刑少女の分析としてはこんな所ですね。

自分の知っている創作理論が他作品に使われていることを実感すると嬉しくなりますし、学習したことが身についていると実感できます。


本日はここまで。
これにて御免!

ラノベ作家を目指すなら、他作品の研究を怠るべからず……。

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