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小説

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時々思い付きで投稿する小説をまとめています。 読んでいただけたら飛び跳ね狂います。
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2020年9月の記事一覧

ショートショート「海の光網」

ショートショート「海の光網」

ある日、よく晴れて心地よい流れの中を鯵のポプリが泳いでいると、どこからかシクシクと誰かの泣く声が聞こえました。
「誰か泣いているのか?どうした。」と言いながらポプリが声のする方へ近づいてみると、岩陰で1匹の鯖が涙を流して泣いています。

「やぁオリーブくんじゃないか、一体どうしたんだ?」
「ポプリくんか、聞いてくれよ。昨日は大しけでひどく海が荒れただろう。そのせいで朝からインタァネットが繋がらない

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短編小説「人造天使」

短編小説「人造天使」

「安曇君、私は天使になるよ。」

黒い長髪を振り乱しながら彼女は言った。
「発表資料の作成で忙しいので手短にお願いします」と画面に向かったまま答える。本当は全く忙しくなんてないが、毎日このやり取りを繰り返しているので本当に忙しいような気がしてきたな。
「天使になりたい」というのは先輩の口癖、というか夢のようなものらしく、この研究室に入ってから毎日のように聞かされている。
初めの内は先輩のいうことだ

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ショートショート「御箸」

ショートショート「御箸」

これは私が中学生の頃にあった話だ。
その日私は叔父のお通夜に参加するため、山奥にある叔父の家に制服を着て三時間ほど車に揺られて来ていた。

叔父とはお盆等に顔を合わせる程度で大して親しかったわけでもなかったが、身近な人の死というのはやはり何か思うところがあったようで、その日は朝から気が重かった。

山奥なので雪が深く、車が思うように進まず着くのが遅くなったので、叔父の家に着いた頃にはとんでもない人

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