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ゲームデザイナー Saashi の仕事部屋〜2020年11月前半

Saashi & Saashi(サアシ・アンド・サアシ)のSaashiです。今回は2020年11月前半の何日かの分。深夜のジレンマラジオの放送や、時差調整、東京へ行きゲームマーケットに出展といろいろあった日々でした。季節外れになぜか暖かった時期でしたね。

「ゲームデザイナーSaashi の仕事部屋」シリーズについて
京都でアナログゲームを作っているんですが、手書きで日記書くのがだいたい滞って記録が記録にならないので、noteで綴ってみようかと思い、書き始めてみてるシリーズがこちらです。半月に一度くらいで載せてます。
ただ、わりと忙しくしている気がしているわりに、特に変わり映えしないので地味すぎる日常ですが、自分の備忘録的に書いています。全日の日記でもないし、その時思ったこと書くだけの日とかもありそうですが、「こういう人もいるのだな」と気楽な感じでお目通しいただけると幸いです。

11月前半某日

今月中旬のゲームマーケットに向けて、生活リズムの時差調整中のため、寝不足になったり、よく寝たり。今のうちから調整しておかないと、ゲムマの朝は早いので、一睡もできずに出発なんてことになりかねないので。

よく洗濯屋や料理など家事をしながらポッドキャストを聴くことが多い。というか、家事のとき以外は聴いていないのかも。この日は洗濯干したりしつつポッドキャスト【ボードゲームおっぱい】さんを聴く。最新回「おひさしぶりです、2020秋」で、大佐とマダムが【深夜のジレンマラジオ】」について触れてくださっていた。普段のポッドキャストと違ってYouTubeの放送ではグルーブが保てないのでやりづらいという話があった。でも【深夜のジレンマラジオ】は成立している。それは「中身があるからだ」「ボっぱいにはそれがない」というお話をされていた。ボっぱいさんはお二人の存在がすでに「中身」だからかな、と思ったりした。

11月前半某日

時差調整中はだいたい体調は良くない。体と脳と気分は繋がっているので、仕事も当然捗らない。が、できる部分だけでも進めていく。

海外の出版社と自分のゲームの契約を結ぶ話をしているところなのだが、その過程でその社がポーランドの印刷工場を新たに探していると言うので工場を紹介した。すると、その工場の担当者がすぐさま先方に連絡を入れてくれたらしい。普段レスポンスが遅いこともあったりなかったりだが、その素早い動きにはさすがだなぁと唸るなど。

11月前半某日

カフェに行って、ノート片手に考察の時間を持つのだけど、多くの場合は思ったようには進まない。それはノート片手にすることが3つに分かれていて、そのうち最も捗らなそうなことをカフェですることが多いからだ。

A. 「いつか作りたいな」と思うゲームのイメージを少しずつ固めて、それを実現するにはどういうテーマやメカニクスなら合うだろうかをゼロベースで考え始めること。

B. ある程度で揃ったいくつかのアイデアの中から「本格的にデザインに着手するのはどれにしようか」と見繕うこと。

C. 今デザイン中のゲームの改善案や、他のアイデアの見直しなど、ルールデザインに直結する内容を考えること。

おそらくCが最も簡単で、B、Aに向かうごとに難しくなる(=時間がかかる)ように感じる。 

個人的にはBのあとすぐCに移行できる瞬間が一番好きかもしれない。容易だからだ。その時点では可能性がたくさんあって、できることもたくさんあり、選択肢が豊富にあるように「錯覚」しているので楽しさだけを享受できるのだろうと思う。

Cが簡単だと思うのは、「ゲームを作る過程やデザインの解決法など簡単だ」ということではなくて、考えるべきことが定められた中で考えたり、試したり、修正したりするだけなので、たとえ一気にうまくはいかなくても、ともかく進めようとすれば少しずつでも進むから。

つまりAとBには客観的にも主観的にも特に正解がない中での思考なので、難しいと感じるのだと思う。もちろんその最中は特に苦労しているふうでもなく、わりと楽しんでもいるのだけど、やはり進んでいるという感慨は得られることは稀です。

そのため、カフェで考えて、帰ってきてから考えても、大して何も進んでいないようなことも多々あるし、そういった日はあまり仕事していなかったように感じてしまうのだから因果だなとは思う。

11月前半某日

【深夜のジレンマラジオ】の放送日。ゲストはすごろくや丸田康司さんでした。「ファミリーゲームについて」というテーマで話したのだけど、日本におけるファミリーゲームの立ち位置は微妙で、その辺りを丸田さんと話すことで自分の中では再構築することができたように思う。

欧州ではファミリー向けのゲームというのは幅も広くて、売り上げ的にもかなりの割合を占めているものだが、日本は好事家向けの難しいゲームか、子供向けの簡単なゲームに二分されて、中間としての「ファミリーゲーム」という存在が希薄だというのは昔から不思議だった。

丸田さんによれば、単純な話で、家庭でのゲームルールの読解力(=親の読解力)に欧州との差があるからこそのギャップのようだ。つまり日本では欧州のファミリーゲームのレベルのゲームは親が読解して子供と遊ぶには難しく、子供向けのゲームくらいしか読解できないために、家で遊べるゲームが必然的に子供向けゲームになり、その水準のゲームが現状日本の家庭での「ファミリー向けゲーム」となっているということなのだった。

今後、将来的に家庭での(親の)読解力が上がることがあるのなら、日本でも欧州とギャップの少ない、一般的な「ファミリーゲーム」が根付くことがあるかもしれない。が、それは数年単位の話では全然ないだろうとは思う。おそらく数十年、数世代に渡る変化を待つことになるのでは。

そう言えば、丸田さんと初めてゆっくり時間をご一緒したのは昨夏の台湾高雄でした。それまでも挨拶程度に話したことはあったけど、高雄の夜に一緒にご飯食べたり、美味しいかき氷屋さんに行ったりしたのが最初の思い出だ。

そもそも、ぼくとドイツゲームとの出会いには丸田さんが関わっていたという話。ぼくが初めてドイツゲームに触れたのは、友人からのプレゼントで『カルカソンヌ』を贈ってもらったことがきっかけだったという話はここではまだ書いたことがなかったと思う。

十数年前、ぼくはそれまでその東京の友人とボードゲームに関する話などしたこともな買ったのだが、なぜか彼はぼくがボードゲームを好きそうだと判断して当時開店したばかりの高円寺のすごろくやに行ってプレゼントを購入してくれたのだった。

友人は店頭で「歴史が好きな友人がいて、彼は経験はないかもしれないがきっとボードゲームが好きなタイプなので何か買って贈りたいのだが、どんなゲームがお薦めか?」と店員さんに尋ねて決めたらしい。

そして薦めてくれたのが『カルカソンヌ』で、それが届いてぼくは何十年ぶりにボードゲームという存在に再会し、現代的なドイツゲームというものに初めて触れてその世界に開眼したのでした。(そこから数週間後にはオリジナルのゲームをぼくはデザインし始めていた)。

そしてその時の店員さんは(時期的にも友人の話に聞いた背格好からも)たぶん、丸田さんご当人だったようにぼくは思っていたのだがそれを確認したことはなかった。

という話をこの夜の【深夜のジレンマラジオ】の放送で、冒頭にしたかったのに、ぼくはその日の放送に機器の不調で遅れて参加ということになり、放送中は話さないままで終えてしまった。

それで結局、放送の終了後にお話したのですが。
やはり当時のその店員さんは丸田さん本人だっただろうということでした。上記の友人とのやりとりについても、当時そんなような会話を丸田さんは確かした記憶があるとのことでした。

というわけで、もう十何年も前の話ですが、丸田さんドイツゲームぼくのゲームデザインの再開とがその時に淡く繋がっていて、もしもあの時ぼくが全然ピンと来ない別の商品を丸田さんが友人に薦めていたら、ぼくがドイツゲームに刺激されて作り出すのが何年か遅れていたかもしれない、翻って言えば、薦めてくださったのが『カルカソンヌ』で本当にありがたかったという話をしました。

そういう淡くもロマンチックなエピソードがこの夜に帰結したということで、良かったです。

11月前半某日

この日は5年前に亡くなった父の命日だったので、大阪の実家へ貴子さんと泊まりに行く。と言っても、母と一緒にご飯を食べるだけなのですが。

父が亡くなったのはちょうどSaashi & Saashiを始めた年でした。という話はnoteでも書きましたね。

2作目の『コーヒーロースター』を作り始めた頃で、訃報があった時にはわたしたちは入稿直前で作業が終わらず、ギリギリまで京都で作業を続けてから大阪へ向かったのだが、お通夜にも間に合わず。すっかり通夜を終えてひっそりと静まり返った式場に駆けつけたのを思い出します。

あれから5年が経った命日の夜、ぼくは夕食のあと、貴子さんと母を交えて実家のテーブルで新しいゲームのテストプレイをした。もう父がいなくなって5年経ったという気もしないが、Saashi & Saashi を始めて5年経ったという気もしない。時間の感覚とは不思議なものだなと思います。

そのあとは一人でゆっくりしながら、上杉真人さんがやっている【暗黒ゲームデザインの会】を聴いて、そのあと読書などして寝ました。

11月前半某日

翌日は大阪でうちばこやさんとお会いする機会があったので出掛けて行った。実家からなのでわりとすぐ着いた。うちばこやさんとはこれまで何度かメールなどでやりとりをしたことはあったけれど、鹿児島にお住まいなのでお会いしたことはなく、大阪に来られたこの機会に会おうということになった。

TakeWatchさん朝戸さん山田空太さん別府さいさんとも合流して、みなで話したりゲームしたり、話したり、ご飯食べたり。

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TakeWatchさんとは以前一度京都に来ていただいて遊んだことがあり、久しぶりの再会でしたが、うちばこやさんとは仲が深いようで、お二人のやりとりはまるで漫才コンビのようにハマってておもしろかった。

うちばこやさんと初めてゆっくりいろいろお話したのだけど多方面にいろいろ考察してやっておられて、実に興味深かった。そして行動力も伴っているのが良いですよね。また遊びましょう。

11月前半某日

京都に戻って、髪を切る。その後、貴子さんと街をブラブラしながら買い物をして帰るバスの中で、ふと新しいゲームのアイデアが浮かぶ。

「多分、こうしてこうすると、ゲームとして形になるな」

ということを漠然と頭で描きつつ窓の外の景色を見ていて、揺れている車中なのでノートも取らずにいたら、そのことをすっかり忘れてしまった。

それを寝る前にベッドの上で不意に思い出して、「せめてメモには書き留めておこうか」と思って、そそくさと階段を降りる間に、新たにいくつかひらめいたので、メモを走り書きした後、仕方なくそこからPCでデータを荒く作ってしまった。それをプリントアウトし、ハサミで切ったり貼ったりして、真夜中に1時間くらいかけてテストキットを作っのでした。

少し動かしてみると、思った通りに動く様子。これはおそらく「すぐに完成するだろう」という予感はあるけれど、なんとなく気が乗らないところがある。もしこのゲームを次にリリースするということになると、あまり今の自分はテンション上がらないかも、というところが気に掛かるのだ。出来とは全然別の部分で。なので、もしかするとテストを続けるかもしれないし、しばらく置いておくかもしれない。

11月前半某日

荷造りして発送した。海外へも注文あった荷物をポツポツ送る。近頃は遅延も少なく届いているようだ。

ゲームマーケットが1年ぶりということは、こちらの準備も1年ぶりなわけで、勘が狂うというか忘れていることがあったりして、たどたどしく準備する。

11月前半某日

桂で小さなクローズドのゲーム会。Mさんなどいつものメンバー。

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いろいろゲームやった後に、先日作ったテストキットの一部を見せて意見を聞く。動きや解釈一つとっても、自分以外の意見は始めに聞いておきたい。

大きな勘違いや記憶抜け、自分が知らないだけで真似しちゃっていることにも気づかないなんてことは避けたい。出来上がってから、何かにそっくりだったというのも徒労だし、ということで、その辺りの知識などは自分をまるで信用していないのだ。

11月前半某日

【深夜のジレンマラジオ】の放送日。テーマは「コロナ時代のゲムマの楽しみ方」でした。ゲストなしで朝戸さんと2人で話す通常回。2人の時はライブで視聴してくれてる皆さんと話す心持ちで進めてます。

大型イベントはコロナ禍の中で中止が続いていたこともあって、今回のゲムマ開催を前にしては、やはり不安はある。心構えも1年前とは異なってくるだろう。

入場者数の制限や時間制限が課せられた今回の開催方法から考えると、入場者が大幅に減るだろうことは予測でき、売り上げが例年と比べて減ることも確実だ。でも、そこは想定内というか、心配の範疇ではない。

ともかく何のトラブルもなく、終えることが第一ですよね。

とはいえ、この時期のイベント開催に際して、参加してこられる来場者のみなさんは、おそらく気合の入った人が多いと思うし、リテラシーが高く、いろんな対策も万全で来てくれるだろうことから、大きなトラブルは起きないだろうという気もしている。ともかく事故なく、つつがなくイベントが開催され終幕することができれば御の字です。

そして、今後数年は続くかもしれない「コロナ禍におけるイベント開催」というものを見聞するつもりで東京へ向かうことにしたのでした。

11月前半某日

わりと寝不足だが、時間通りに出発。この夜はうまく寝入ることができそうなリズムなので、時差調整は結果的にはうまく行ったのでは。

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東京入りしてからホテルに荷物置き、朝戸さんから預かったデータを持って、ホテル近くのキンコーズで【深夜のジレンマラジオ】のフライヤーを印刷する。

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その後、国立市の友人宅へ。お店からのテイクアウトでしっぽりとした食事。お子さんが大きくなっていて、時の流れを感じるなど。

11月前半某日

ゲームマーケット当日。昨夜はスムーズに眠れたので、もしかするとゲームマーケットに参加し始めて、寝不足でないゲムマ当日の朝は初めてかもしれない。

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開幕してみると、想像した通りの客層と、時間制限による慌ただしさを肌身に感じた。一般ブースでの出展だったので試遊はできない規則なので、ゲーム内容は口で説明するほかないのだが、お客さんにとってはゆっくり説明を聞いていられる余裕はあまりないようだった。つまりみなさん時間が決まっているので急いでおられるのだ。

全体としての来場者はいつもより当然少ない。でも参加者には「1年ぶりのゲムマだ!」というある種の意気込みを感じたのも事実で、この感覚は大阪のゲムマの印象に近い熱さがありましたね。

午前の部が終わると昼休みとなり、一旦全てのお客が外に出る。そして午後の部が始まると新たに入場してくる。つまり午前と午後では、完全入れ替えというわけである。

一度全員が出て行って、出店者だけが会場に残る昼休みだったのだが、この時間がとても良かった。いつものゲムマでは昼休みというものがないまま、ブースの奥のバックヤードで急いで昼食をとるのが常だったのだが、お客さんがいない会場で1時間ゆっくりと食事と休憩ができるのは、体力的にも気分的にもとても良い休息になって、疲れない感じがあった。通常のゲムマで昼の休憩時間はあっても良いのでは!?と思ったくらい。まあ、売り上げ的にはきっと響くのだろうけど。(追記・ゲムマ2021春では昼休みは無くなるようです)

午後の部はよりゆったりとしていたので、出展者でありながらも余裕を持って自分のブースを離れて会場内を回ったりできた。そしてあとは自分のブース横で久しぶりに再会するみなさんとの会話を楽しんだり。

何せ1年ぶりのイベントである。会う方みなさん1年ぶりなのだ。いつもより余裕を持って話ができたことは、すこぶる楽しかった。「むしろこのコミュニケーションのほうが東京に来た目的なのでは?」と思ったほどでした。みんなの生存確認をし合って、作ったものも見れて、ブースを回って買い物もして「あぁ良いなぁ」と思いました。ゲームマーケットというイベントは、こういう場だったのだなぁというのを思い出しました。

11月前半某日

1日目は無事に終了して、2日目。
この日は前日よりもブース数も少なくなり、おそらく来場者も半減するだろう、ということで今日はより会場内を回れるかな、と思ってみても、昨日あれだけ時間があっても買い逃し、買い忘れはあるもので。2日目には出展していないところはもう買えなかったりする。いつものことだが事前のリサーチ不足である。

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イベントとしては、事故もないまま、滞りなく終えることができたのではと思います。各ブース、売り上げ的にはいつものようにはいかなかったところが多かったとは思いますが、今回はとにかく少しジャンプして開催して、しっかりと着実に着地するのが大切だということだったということで、まずはそれを喜びましょうと。

閉幕時間の間際に、サニーバードの平さんと齋藤さんと共に、会場の屋外へ出て、おしゃべりサニバさんの収録に呼んでいただきました! 本当はゆっくり別日にでも収録できればと思っていたのでしたが、双方の東京滞在中の予定が合わなかったので、結局会場で録ろうということになり、3人でベンチに座ってゲムマ秋について話したのでした。黄昏に包まれた中とても思い出に残る時間でした〜! 

ところで、今回の会場で本当にたくさんの方に、「深夜のジレンマラジオ聴いてますよ!」と声を掛けていただいたのが驚きつつも嬉しかったです。正直なところ、京都ではそれほどいろんな人に会う場に顔を出さないこともあって、【深夜のジレンマラジオ】をこの夏に始めて以降一度も「聴いてますよ、見てますよ」という言葉を直に言われたことがなかったのだ。

東京に来て、知人に、そして初めての方に「いつも見てます」と言っていただけて、「ああ、我々は虚空に向けて放送していたのではなかったのだ」「届いていたのだ」と実感することができて、大変に励みになりました。

朝戸さんも同様に会場でそういうお声をたくさんいただけたということで、わたしたちはとてもホッコリして京都に戻りました。ありがとうございます! もちろん出演してくださった数々のゲストのみなさんのおかげでもあります。今後も無理はせず、マイペースに淡々と続けていければと思っております。

というわけで、今回はこのあたりで。

Saashi

2020年11月上旬

Saashi & Saashi
Twitter / WEB


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