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失敗無しの人生に成功はない!

東北大学サイエンス・エンジェル(SA)のもえさんです。
今回の記事では留学生のWeeさんが書いてくれた Nanさんへのインタビュー記事を翻訳させていただきました。
記事原文はこちらからご覧になれます。

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サイエンス・エンジェルの先輩と話そう

みなさんこんにちは。Weeです。
今週もサイエンス・エンジェルの記事をご覧いただきありがとうございます。

今週のE-channel記事ではいつもとは少し違った形で、スペシャルゲストとしてSAの先輩である Nanさんのインタビューをお届けします。

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Wee:Nanさん、こんにちは! お会いできて嬉しいです。読者の皆さんに、ご自身の専攻と現在の所属について自己紹介をお願いします。

Nan:こんにちは!タイ出身のNanです。私は今年の9月に東北大学大学院歯学研究科分子・再生補綴学分野の博士号を取得しました。10月からは今までの研究を続けながら、歯学イノベーションリエゾンセンターの職員をしています。また、日本に来る前からタイのチュラロンコン大学歯学部解剖科の教員をしています。

Wee:私の記憶が正しければ、Nanさんの研究はiPS細胞(人工多能性幹細胞)からの組織再生に関連していると思います。ご自身の研究について詳しく教えてください。

Nan:
私は、皮膚や歯茎などの生体組織から生成された幹細胞であるiPS細胞からの骨組織や軟骨の成長を研究テーマにしています。歯科医師として、骨組織や軟骨の再生を行うことで、骨量の減少が著しい患者さんの再生能力を高め、安定して補綴物(義歯、入れ歯、ブリッジ等)を装着できるようになることを期待しています。 また、重度の骨の欠損治療による歯肉炎の治療にもメリットがあると考えています。

Wee:4年前に戻りますが、当時、海外で博士号を取ろうと思ったきっかけは何でしたか?

Nan:チュラロンコン大学歯学部卒業後、私には研究したいという強い意志がありました。そこで私は興味を持っていた分野の良い指導者になりたいと思い、チュラロンコン大学の解剖学科の教員に応募しました。その後、タイの教授から歯肉線維芽細胞からiPS細胞を生成したことで再生歯科の分野で非常に有名であった東北大学の江草宏教授の研究室に入ることを勧められました。私も幹細胞の研究に興味があったことが重なり、日本で博士号を取得することにしました。

Wee:時の流れは早いもので、今は博士号を取得されていますね。博士号を取得した時と修了した時の気持ちはどうでしたか?

Nan:日本に来る前は、ワクワクしていましたが、同時に怖さも感じていました。想像できうるあらゆる場面に恐怖を感じ、自分が上手く振舞えないのではないかと思うこともありました。また、日本で博士号を取得するのは本当に大変で、全力で取り組まなければ成功しないことを事前に聞いていました。最終的には、先生や家族を始めとする人々を失望させないようにしようという気持ちが私を一生懸命にさせてくれました。
今は卒業しましたが、博士2年の時の体験談を話します。留学生の先輩の卒業を見て、「私も早く卒業したい」と感じていました。そして、その時は博士号を取得できたら本当に幸せだろうと思っていました。しかし、博士号を取った今、(もちろん幸せを感じていますが、)その時に期待していたほどではありませんでした。それはなぜなら、卒業した瞬間に、「自分がどれだけ幸せを感じているかということ」に焦点を当てたわけではなく、逆に「自分のキャリアパスのために次は何をするかということ」に焦点を当てたからです。博士号を取得したことで何を得たのか、それをどのように有効に活用していくのかを振り返る時期でした。そんなことを数ヶ月前から考えながら、同時に追加の実験を行っていました。博士2年生の時に期待していたほど幸せを感じられなかったのは、考えすぎたことと仕事の忙しさが原因かもしれません。

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Wee:
Nanさんがいつも頑張っている姿を見てきました。Nanさんは博士課程の頃から、私や研究室のメンバーをいつも助けてくれていて、とても良い先輩でした。いくつかの国際会議にも参加されたそうですが、Frechette Prosthodontic Research Award CompetitionとJADR/GC Young Investigator AwardのFirst Place Winnersを受賞した時はどうでしたか?

Nan:国際会議に参加して発表した際には、自分の研究を振り返って評価する機会がありました。これにより、自分の研究の弱点や議論が必要な部分が見えてきました。最終的には、研究をより深く見つめ直し、今後の改善策を考えることができました。研究をする上で、とても良い経験になりました。
コンペについてですが、いつもの発表とは違いました。テーマのアピール時間は限られており、時間を賢く使わなければなりませんでした。研究の応用を見せることで研究の意義を理解してもらうことができます。しかしながら、このコンペでは質問も重要でした。それぞれの質問には制限時間があり、回答は短く、要点を押さえ、必要な詳細をすべて含んだものでなければなりませんでした。

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Wee:先ほどのお話の他に私たちに伝えたい話があれば教えて下さい。

Nan:私が博士課程に入った時、仕事や生活の仕方もタイと比べると確かに違いましたが、他の研究室のメンバーは私を温かく迎えてくれました。今はもう日本の働き方に慣れたと思います。前回タイに行った時には違和感がありました。例えば、先生との話し方が全然違うとかですかね。タイでは気軽に話せるのに、こちらではより畏まった感じなのが不思議でした。敬意を示すための方法なので、メリットはあると思っています。仙台に住んでいると、研究室のメンバーもお互いに助け合い、協力し合って仕事をしなければならないので、家族のように感じています

Wee:最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

Nan:子供や親戚が博士号取得を検討している、または現在博士号取得を目指している方がいれば、良い聞き役になり、常にサポートしてあげてくださいと伝えたいです。私自信、たくさんの失望や落胆を経験し、誰かに事情を話したいと思っていました。私のように話す相手を必要としている博士課程の学生は多くいると思うので、ともかく彼らのそばにいて支えてあげてほしいです。
博士課程への進学を考えている方がいれば、あなた自身が研究や科学の分野が好きならば進学することを勧めます。博士課程の勉強をすることで、特に日本では、新しいトピックを見つけるための批判的思考力が鍛えられると思います。また、研究を改善するための多くの議論やアドバイスを経験することが出来ます。あなたは多くの失敗や失望があることを受け入れる必要があるかもしれません。しかし、それで落胆したり、あきらめたりしないでください。きっと最後には解決策と成功が待っているはずです。

「恐れることなく、あなたの信じる道を進みましょう。失敗無しの人生に成功はありません。」


皆さんはNanさんの話を聞いて何を感じましたか?
あなたが大学院生の研究や生活を理解する助けになっていれば嬉しいです。さらに、もしこの記事があなたの博士課程進学の気持ちに火をつけてくれるなら、素晴らしいことだと思います。
記事を読んでいただきありがとうございました。次回もよろしくお願いします。
ではまた会う日まで!

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記事へのコメントやSAへの質問などはいつでもこちらのフォームからお待ちしております。

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編集後記

私はNanさんと同じ大学のチュラロンコン大学を卒業しているので、タイにいた時から彼女の後輩でした。私は彼女のことを本当に優秀な先輩として尊敬しています。博士課程の学生であることは簡単なことではなく、最後までやり遂げるためには忍耐力以上のものが必要です。彼女の話は私を奮い立たせ、励ましてくれました。今、私は彼女の道を辿り、彼女のように研究をして成功するために最善を尽くしています。(Wee)
今回の記事では初めて翻訳のお手伝いをさせてもらいました。Nanさんのことを良く知るWeeさんだからこそ、Nanさんの気持ちに迫るインタビューが出来たのではないかと思います。(もえさん)

東北大学サイエンス・エンジェル
次世代の研究者を目指す中高校生に「こんな女性研究者もいるんだ!」「理系って楽しい!」という思いを伝えるため、2006年に結成。年度毎に学内で公募され、総長に任命された 東北大学の自然科学系10部局に所属する女子大学院生が、中学・高校での出張セミナーや科学イベントで科学の魅力と研究のおもしろさを伝えている。メンバーは宇宙・自然・ロボット・環境・ヒトや動物の身体のしくみなど、それぞれの専門分野で日々研究中。



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