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せやま南天
2023年6月30日 11:16
◆前回のお話はじめから読む方はこちら。4.「そんなことが…大変でしたね」 電話口の安富さんは、同情するような声で言う。 昨日の津麦は、怒っていた。ちゃんと時間の枠をとって予約していたのに蔑ろにされた、どこにでも嫌な人はいるものだ、と思ったりもした。けれど時間が経つにつれ、自分自身にも非があったのではないか、とも思い始めていた。朔也が何か言いかけてやめたことが、引っかかっていた。「あー
2023年6月29日 16:12
プロローグ. ほんの些細なことで、 見えてた世界の色がガラリと変わってしまうことってある。 たとえば、今朝のはなし。 永井 津麦が降り立ったのは、陰気な駅だった。蛍光灯の灯りが3つに2つくらい消えていて薄暗い。ホームから改札へあがるのに、エスカレーターはない。みな下を向いて兵隊みたいに一定の速度で階段を上がって、改札を出て行く。津麦も、その列に無心で加わった。 線路沿いの道は、でこぼこ