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人とまちと仕事がつながる地域の拠点を目指して―株式会社JOINX 取締役企画部長 齊藤麻衣(WORX富士)

 「自分らしい働き方を見つけたい!」そんな想いを実現できる場所が富士市にあります。株式会社JOINX(ジョインクロス)が手がける「WORX(ワークス)富士」は、2021年にオープンしたコワーキングスペース。
 静岡県が今年9月にラ・ホール富士で開催した知事広聴「平太さんと語ろう」でも登壇していただいた企画部長の齊藤麻衣(さいとうまい)さんにお話を伺いました。

「WORX富士」とは

 WORX富士は、2021年に株式会社JOINXが富士市島田町にオープンした静岡県内最大級の規模を誇るコワーキングスペース。
 明るく広々とした店内には、100席以上のフリー席のほか、ミーティングルームや動画撮影用の専用スタジオ、ワークショップスペースが完備されており、法人利用から短時間のスポット利用(550円/3時間~)まで、用途に応じて利用することができます。
 「人とまちと仕事がつながる地域の拠点」をコンセプトに、単に働く場所を共有するだけではなく、常駐スタッフによる事業相談やマッチングサポート、毎月22日に開催する交流会など、事業が生まれる交流の場としても機能しています。

知事広聴の前には川勝知事も視察
開放感のあるフリースペース

市外からの利用者がほとんど

 現在の会員数は有料・無料会員あわせて200人ほど。年間の利用者は4,000人ほどですが、実は市外からの利用者が多いとのこと。
 特に、首都圏からの利用者が多いところが特徴的で、その大半がコワーキングスペースの利用というよりも、駐在スタッフによるマッチング支援を通じた新たなビジネスチャンスの獲得や交流を目的に利用しているそうです。
 最近は富士市・富士宮市からの利用者も増えたようですが、依然として市外からの利用者が多いのが現状。嬉しい反面、富士市内でのWORX富士の認知度向上や働き方改革の浸透を課題に感じていると、齊藤さんは話します。

毎月22日に開催される交流会は会員・非会員問わず誰でも参加可能

女性に焦点をあてた雇用創出

 WORX富士は、当初、男性のサラリーマンやフリーランスを主なターゲット層に想定されていました。しかし、富士市の地域性に触れる中で、次第に女性のニーズに焦点を当てた方が、相性が良いのでは?と齊藤さんは感じ始めたそうです。
 先日も、初めてWORX富士スタッフの求人を出したところ、2週間で20人弱の応募があり、そのほとんどが20~40代の子育て世代の女性でした。
 また、富士市と協働のもと、JOINXが運営を行う市内の複合型子育て施設「みらいてらす」では週1回、6ヶ月以上の子どもを対象にした「見守り託児」を実施していますが、予約は毎週埋まり、託児付きのイベントは毎回大盛況とのこと。
 製紙工業をはじめとした工場産業が盛んな印象が強い富士市ですが、勤務時間や場所に融通が利き、柔軟な働き方を求める女性のニーズが確かに存在することがうかがえます。
 今年4月には、JOINXとして「富士このみスタイル推進協議会(通称:このみ会)」を発足。富士市への移住者らのうち、主に子育て世代の女性が自分にあった働き方を見つけられるよう、ワークシェアの実践に取り組んでいます。先日も、「このみ会」のメンバーがLP(ランディングページ)勉強会に参加。WEB制作未経験のメンバーが多い中、勉強会を経て「このみ会」のWEBサイトを制作できるまでにスキルを習得しました。
 単に、もともとあった個々人のスキルを活かすだけではなく、スキルアップをしながら、仕事を見つけることができ、仕事復帰までのブランクがあり、不安を抱いている方にとっても、大変心強い体制です。

みらいテラス
LP勉強会の様子
今年4月に発足した「このみ会」

学生が活躍できる場を提供

 今、齊藤さんが力を入れているもう1つの事業が、学生の地域参画への支援です。JOINXでは今年の7月に学生による事業部を発足しました。現在は、富士市主催の「まちなかラボ」(商店街の空き店舗を活用した起業家支援プロジェクト)でのハンバーガーショップの出店をサポート。原価計算や広報物の計算まで、学生たちが自分たちの手で事業を動かします。
 大学がない富士市ですが、その中で学生がやりたいことを実現し、地域で活躍できる場を、コワーキングスペースを通じて創出しています。実際、学生事業部に携わる大学生は、活動を通して全員県外の学校から富士市に移住。WORX富士では、学生の勉強場所としての利用も推奨しており、今後ますます地域における学生の活動の拠点として、賑わいを増していくのではないでしょうか。

学生主体のハンバーガーショップ出店に挑戦

富士市のファンを増やしたい!

 「これからも富士市のファンを増やし、雇用創出を通じて地域に恩返しをしたい」と語る齊藤さん。その熱い想いの裏にはWORX富士立ち上げ時のあるエピソードがあります。
 WORX富士開設前、「コワーキング」や「テレワーク」という概念が世間にまだ浸透していなかった頃、富士市にはコワーキングオフィスがなく、入居物件探しにとても苦労した齊藤さん。そんな時、親身に相談に乗ってくれた富士市の職員がいました。二人三脚で物件探しを手伝ってもらい、無事現在の場所に入居が決まりました。もともと愛知県に本社があったJOINXですが、富士市の方々の熱意や温かさに動かされ、本社を富士市に移すことを決めました。
 また、齊藤さんは昨年から富士市主催の「富士駅北口まちなか空間活用検討会」にも参加。「居心地が良く歩きたくなる」富士駅北口を目指し、毎月ワークショップを通じて駅周辺の道路・広場等の活用方法や「エキキタテラス(※)」の内容検討などに取り組んでいます。
 10月に開催されたエキキタテラスにもスタッフとして参加。ぬり絵コーナーで笑顔で子どもたちに接する姿や、道行く知り合いに呼び止められる度、楽しそうに歓談する姿が印象的でした。「富士市は市外から来た人に対しても温かく迎え入れてくれる雰囲気がある」と話す齊藤さん。
 沢山の人に囲まれ富士市という新たな拠点で、着実に地域の方たちと信頼関係を築いている様子が伝わってきました。

  • WORX富士ホームページ

  • みらいテラス


(※)社会実験「エキキタテラス」とは?

 2022年4月にスタートした富士市主催の事業。道路上に人工芝や椅子、ハンモックを設置し、ゆったりとくつろげる屋外空間を創出するなど、新たな公共空間の活用方法により、居心地がよく歩きたくなるまちなかづくりを進める取組です。富士駅北口の回遊性・滞在性の向上を目指し、道路などを活用した社会実験を通して、ニーズの把握やまちなか空間活用の課題を検証しています。2022年10月末時点で計3回開催し、エキキタグルメ、ミニスポーツ、路上ライブなども実施。

  • 富士市ホームページ(まちなか拠点形成事業(ウォーカブル推進)について

※掲載している情報は取材時点のものです。

(担当:小玉)