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映画感想『ライトハウス』(原題:The Lighthouse)

2019年 アメリカ映画 『The Lighthouse』ロバート・エガース監督
ネタバレなしです。

海を舞台にした船乗りゴシックホラー。
公式サイトでは「傑作スリラー」とあるが
The A.V. Clubの「閉塞とマチズモ、狂気のダークコメディ」って評がずばり見事。

簡単に言うと孤島の灯台に頑固な老人と30代の男の人が灯台守として配置されるけど、嵐に巻き込まれて孤立状態になり、どんどん狂気に陥っていく話。
ヒゲのおっさん2人が険悪になったり酒浸りになったり殴り合ったりとにかく粗暴だしむさ苦しい。
だが、セリフやモチーフは船乗りにまつわる伝承や、文学作品を想起させる。
灯台の"光"は女性的に扱われているが、灯台はファルス的モチーフでもある。
灯台の光がこの作品をリードするテーマになっていくのだが……

観る前は、人物も少ないし単調なのかなと思っていたけど全くそんなことはなく、飽きさせることない展開、サウンド、演技だった。

そもそも、ウィレム・デフォー目当てで観た。
期待を全く裏切らない、圧巻も圧巻、ド迫力の演技。
特にポセイドンの呪いを吐くシーンは、映画というよりも演劇の世界のような演技とセリフ回しで、人ならざる形相になっていた。夢に出そう。

ウィンズロー役のロバート・パティンソンは『トワイライト』に出てた人か、気付かなかった!キャリアを着実に積み重ねている!
『ザ・バットマン』観てないけど、暗めのブルース・ウェインを演じているらしいので俄然観る気になった!

構図も非常に美しく、モノクロの美しさ、ヴィンテージの質感がこの映画の世界観を形成している。

それに加え、正方形に近い画面サイズ(ムービートーン比と言われるらしい)なので、昔のホラーを観ているようだった。
撮影には実際にヴィンテージのレンズを使っているとのこと。フィルムにもこだわりがあるそうだ。
(詳しくは公式サイトの徹底解析ページ参照)

私はモノクロが好きで、映画や漫画や版画とかのモノクロに惹かれる。
中でもモノクロの映画の良さは、例えば黒い液状のものが井戸から出てきて、泥なのかな?と思ったら、その後の場面で血だと分かったりする。
映ってるものが何なのかを考えさせる&意図的に気付かされるところが楽しいのだ。
スクリーンに、光のコントラストで描かれているものの中身を、監督に示される/自分で見出すのが、モノクロ映画の醍醐味だし、映画は本来そういうものだったんだよなとか考えたりする。

とにかく久しぶりに意味のわからない良い映画を観れて嬉しい!
こういう映画を観たくて映画を見続けているんだな〜
1シーンごとに、迫真のカットが詰め込まれている作品だった。
意味がわからないというのは、
観終わった直後ポカーンってなる、という意味で
そもそも映画って意味がわかる分からないとかじゃなくて
ただ観る、つまりその時間を体験することだから
その意味では非常に濃密な映画を観たという実感を得られた。
(いろんな参照元があって、公式サイトの案内を読むと
「こんな元ネタあるのか!」って思わされたんだけど
別にその元ネタを知ってるかどうかの答え合わせのために映画を観てるわけじゃないしね)

そしてポカーンのあとに色々考えるのが楽しいわけだけど、
あえて説明するとしたら、
こわ〜い海のフォークロア、というのがしっくり来る。
ラストシーンも「こうなりましたとさ」ということであれば
納得できるかも……


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