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びじゅチューン! 私的極小ネタ図鑑 #36


「夏秋草図屏風デート」の【琳派メーター】について


まずは動画をご覧いただきたい。


その冒頭の場面(一瞬である)。
ここに丸い自動車のスピードメーターのようなものが出てくる。名付けて【琳派メーター】

【琳派メーター】
宗達から光琳へ針が動いた。


今回取り上げる「夏秋草図屛風デート」の元ネタ「夏秋草図屏風」は、酒井抱一の作品だ。
しかしメーターは 宗達→光琳  の動きで止まり、抱一まで届いていない。

ソファに寝そべりいつものようにだらだらと「びじゅチューン!」を見ていて、急に気になり始めた。

この【琳派メーター】どういうこと?

今までぼーーーーっと見ていたので考えたこともなかったけれど。
ちょっと考えてみて、こういうことかな?という私なりの考えは出たので書く。


まず登場人物たちのモデル「風神雷神図屛風」について説明しなければならない。

  1. 17世紀 俵屋宗達がオリジナルの「風神雷神図」を描く。

  2. 18世紀 それを尾形光琳が模写し「風神雷神図」を描く。

  3. 19世紀 酒井抱一が光琳の「風神雷神図屏風」の裏に「夏秋草図」を描く。

という流れだ。
これを踏まえてもう一度動画の出だしを見てみよう。

針は風神と雷神のオリジナル作品の作者、琳派の祖と言われる宗達を指している。
途中、針が時計回りに動いて・・・
光琳で止まる。背景は銀色に。

たとえ模写でも光琳の「風神雷神図」も背景は金色。
しかしアニメの背景は銀色に変わっている!!
この何気ない銀色に秘密が隠されているのでは?
そう、針は光琳だが、この銀色は抱一の「夏秋草図屏風」を表しているのではないだろうか。

アニメの流れで考えてみよう。
冒頭に風神雷神が出たところで、普通我々は宗達を思い浮かべる。
しかし「夏秋草図屛風」の風神雷神は尾形光琳の書いたものであることを、【琳派メーター】によって表現している。
言い換えると、メーターが光琳で止まった瞬間、金色画面の宗達の風神雷神は光琳の風神雷神へと入れ替わるのだ。

しかし「びじゅ」のテーマは「風神雷神図」ではなく、その裏に描かれた銀箔の「夏秋草図」。今回はそちらの世界がメインだということを背景色の変化で表しているのだ。当然メーターには抱一の目盛りも必要。

抱一の書いた「夏秋草図」がテーマだから一気にメーターを抱一まで動かしてもよさそうだが、そうすると光琳の「風神雷神図」が飛んでしまう。
まるで宗達の「風神雷神図」が主役のように受け取れる。
そうではなく光琳の「風神雷神図」が主役だということをきちんと示し、なおかつその裏に描かれた「夏秋草図」がメインテーマだと表明するための背景色チェンジ。

1秒にも満たない冒頭の場面にはこんなにしっかりとたくさんの情報が込められていた!!!


番組内の井上涼さんの琳派についての解説を聞き、ちょっと考えると答えは出るのだが、なかなかそこまでいかないのが普通ではないだろうか(あれ、ちょっと自画自賛?)
きっとほとんどの人が気にも留めない、それでもこの一瞬にきちんとした意味を込めて作られている「びじゅチューン!」が私は好きだ。

あ、なんで冒頭のシーンでこのみょうちくりんな二人 ↓ が

みょうちくりんな二人

「風神雷神」だと分かるかと言えば、これは この曲 ↓ の続編だからだ。「風神雷神図屏風デート」

ぜひご覧になっていただきたい。
そしてなんだか今回アカデミックな感じ(笑)に書いてみたけれど、私は「夏秋草図屛風デート」が、曲調と言い内容と言い、もう可愛らしくてとてもとても好きだということを申し添えておく。

ちなみに雷神図の裏が雨に濡れた夏草図、風神図の裏が風にそよぐ秋草図、と、とてつもなくオシャレな関係性が隠されているのだそうですよ。一流のアーティストは、大先輩の作品の裏に自分の絵を描く時、こんな形でリスペクトの気持ちを表したのだなぁ。
現在は保存のため、表と裏別を々にしてあるのだそう。

それから琳派と歌詞係について

自分より百年、二百年前に生きた大先輩にあこがれ、抱一は自分でも「風神雷神図」を描くのだけれど、とうとうその先輩(光琳)の絵の裏に自分もアンサーソングのような作品を描いたぞ!という嬉しさ、誇らしさが「夏秋草図屏風デート」の歌詞係を務める抱一の顔、特に口の辺りに出ていませんかね? ↓

顔が文字だというアレはおいといて、抱一の表情に注目。

歌詞が変わるとき、大先輩二人が抱一をフォローしているのも見どころだ。抱一もにっこり。




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