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比べない

あれは、18歳のとき。

高校卒業のタイミングで、1歳年上の先輩から
卒業祝いにと、本をプレゼントしてもらった。

その本が、絵本作家・葉祥明さんの「比べない」という本。

『比べない』葉祥明/日本標準

当時の僕は本が苦手で、まったく読まなかった。
文字が多い文章を読むことが、とにかくつらくて
本を買うとしても詩集とか、散文詩とか、名言集ばかりで
いま思えば、あの頃から「言葉」への愛を自分なりに育んでいたんだと思う。

そうそう、贈ってもらった「比べない」という本。
見開きに、多くても6行くらいのメッセージ集で
最初から最後まで、読み手に問いかけてくる文体の構成。

18歳の僕には、とても読みやすく、かつ、刺さる言葉ばかりだった。

あの頃は、いや、今もそうだけれど
僕は「比べる」ことが大好きだったから。

自分以外の誰かと比べては、足りないところばかりを探して
見つけるたびに、絶望感に浸って、自傷行為を繰り返していた。

あの頃よりは減ったけれど
いまだってふとした時に、比べてしまうクセは消えない。

上には上が、下には下があって
そもそも良い悪いも上下もなくて
比べることなく、すべてに意味があるはずなのに。

そんな18歳の僕にとって
「比べない」という本のメッセージはとにかく刺さった。

比べない。
自分のためにも、
相手のためにも。

葉祥明『比べない』より

プレゼントされてから10年以上経って
改めて本を開き、読んでも、胸にくるものがある。

なんて素晴らしい本なんだろう。
なんて素敵な本なんだろう。
本で表現されたこの想いに、僕は心を動かされている。

本って、すごい。

10年以上が経って、自分も本を創り、表現することになるとは
18歳の自分は思わなかっただろう。

何が起こるか、わからない。
誰にでも可能性がある。
比べることなく、自分の尊い命を
どうやって輝かせるかを、大切にしていきたい。

比べないこと。
たくさん他者と自分を比べてきたからこそ
表現できること、伝えられることがある。

始める前から「できない」なんて言わないで。
できるまでやれば、いつかきっと「できる」になる。

苦しい瞬間は無くならないけれど
心、軽やかにいられる瞬間も、大切にできたらいい。

この言葉を受け取ってくれた、あなたと共に。

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