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やさしさが君に降り積もる

寝かしつけを行っていたら真っ暗な部屋の中で息子がむくり、と起き上がった。

ガチャリ、と夫がなるべく静かに気を遣いつつ帰宅した音を聞きつけたのだ。

あとちょっとで寝そうだったんだけどなぁ。

息子はお父さんラブだから、致し方ないか。

と、諦め萌えつつ横になったまま息を潜めていると、息子が私の膝あたりにあった掛け布団をよいしょ、とお腹辺りへ動かし始めた。そしてもう一度よいしょ、と肩までしっかり掛けると、横に座り込み、ぺたり、ぺたり、とわたしの胸元をやさしくポンポンしてくれたのである。

小さなふくふくの手を、神経をすみずみまで行き渡らせ、ゆっくり、慎重に、私の目を見ながら、やさしく、胸元へ、ぽふり、ぽふり、と。

そしてにこにこしながら私の額をこれまたやさしい手つきでなでなですると、「おやしゅみ」「ばいば〜い」と手を振って、夫のいる居間へと駆けて行った。


引き留めても、よかったのだけれど。

あまりの可愛さに身動きがとれなかった。

息子はびっくりするほど慈愛に満ちていた。

***

きっと、日々こんな風にやさしく寝かしつけてもらっているのだな。

じーんと感動しながらそう思った。

我が家での寝かしつけは、私が腕枕をし、おっぱいを揉まれ、胴体を抱き枕として提供しながら、あるいは完全に乗っかられながら添い寝するので、なんというかこういう綺麗な寝かしつけスタイルには、あまりならない。

だからこの、掛け布団をやさしく掛けられ、ポンポンされ、なでなでされて、「おやすみ」と言われるのは、保育園や、家の外で体験したことだ。

息子の中に沢山の「やさしい」が蓄積されているのを感じた。

それはとても嬉しいことだ。

2歳を超えてぐんぐん言葉がじょうずになり、最近では簡単な掛け合いも成り立つようになって、息子が「だいじょうぶ?」と気遣ってくれたり「どうじょ」などと食べ物を分けてくれたり、なんというかこんなやさしいことを考えてくれてたのか!と驚くことが増えた。

私は息子と一緒に居る時間が長いから、どうしてもイライラしてしまうことも、叱らなきゃいけないことも、やさしくできないことも沢山ある。

特に自分がコントロールできなくてイライラしてしまった時などは相当凹む。反省と自己嫌悪でしばらくどんより。

働いていて、平日は保育園に預けているから、そのぶん一緒に居る時は楽しく落ち着いていたいけれど、なかなかそうもいかない。

つい怒鳴ってしまったり、カリカリした姿を見せてしまった時は、息子の発達に悪影響があったらどうしようと、大げさかもしれないけど考えてしまう。

でも。

息子は沢山の人にやさしくされて、沢山のやさしさをその体に蓄えて、今度は自分が人にやさしく振る舞うようになってきている。

奇跡のようにありがたいことだと思う。

いずれ世界のややこしさとか、思い通りにならなさとか、醜さや愚かさや、色んなことを知っていくだろうけれど、今はこの調子ですくすくと、やさしく育ってくれたらいいなと思うのであった。

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