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教え方の上手すぎる教師は、生徒を不幸にする?

「短期的には非効率な方が、長期的には結果を残す」

この言葉を聞いてみなさんはどのように思うでしょうか?





・・・




では、言い換えてみても同じような考えが浮かぶでしょうか?




「英単語を何回も復唱して覚えるより、気が向いた時に英単語を勉強した方が学習効果が高い」




「分かりやすい地図を貰うより、難解な地図を貰った方が道をよく覚える」




「教え方が上手く、人気の講師は、長期的にはその学習効果が低い」




・・・


嘘こけと思いましたか?


でもこれはどうやら私たち人間が持っているパラドックスの様です。

パラドックスとはつまり、
私たちの直感に反して、事実は大きく異なるということ。


・・・



アメリカに奨学金を受けて入れるような特殊な空軍士官学校があった。

何が特殊か?

もちろんこの空軍士官学校は様々な勉強する。

とはいえ、数学や科学など教科自体は理解の範疇にあるような学問を学ぶ。


この学校が特殊なのは、
経済学者たちのダイナミックな社会実験に使われることがあったから



この空軍士官学校で面白い実験がされた。


それは、

「どのような教育者が一番効果を発揮するのか?」

という実験だ。




実験はこうだ。


空軍士官学校に入ってきた学生を20人1クラスとしてグループ分けする。

そしてそのグループにそれぞれ「微分積分1」の授業を受けさせる。

これらの科目のテストや授業内容は標準化されており、
どのクラスで受けても変わりがない。

つまり、純粋に「教え方」だけが異なるようにした。


一年の授業が終わると、学生は教師に対して忌憚のない評価をつける。


その後、より高度な専門教育を施すような「微分積分2」、
高度な物理学・工学のテストの結果が教師の違いよってどのような変化があるのかを調べた。



そのデータは10年分。それに関わる教師は全部で約100人、
生徒は1万人に上るともいわれ、非常にダイナミックな統計だった。


教える内容やテストは標準化されているものの様々な教師がいた。

採点の甘さ、教え方の違い、理解のしやすさ。


日本から離れたアメリカでも、人気の高い教師とはこうだ。


理解がしやすく、わかりやすい説明をしてくれる。

そしてシビアすぎる採点はせず、
大体の内容があっていたら正解にしてくれる先生。


この実験では学生からの評価が高い先生はこのような教師であり、

実際問題、「微分積分1」のテストでは、

この人気の高い教師の授業を受けた生徒の点数が高かった。




そしてその反対が生徒からの評価の厳しかった教師だ。




ただ、その後面白いことが起きていることがわかった。


評価の厳しい先生に習った生徒は

その後の高度な学問のテストの成績が軒並み良かったのだ。

(微分積分Ⅱや航空力学などの分野)


経済学者はこのようにまとめる


現時点で成果を残させるような教育を施した教員は、将来の成果を平均して考慮すると、その後の高度な教育に対してマイナスの影響を与えている」



2010年、コーレル博士とウエスト博士の
“Does Professor Qualitiy Matter?“という論文で明かされた。



こと、私たちはすぐに結果を求めようとしてしまいます。

無論、そうするべきでしょうし、私だって何かの資格を取ったり何かの成果を得るなら早く、分かりやすく獲得できるのであればすぐに欲しい性質です。



ですが、実は私たちはパラドックスに囚われて

「近道に見せかけた、登山道」


を歩いてしまっているのかもしれません。




学びの道は1日にしてならず。

遠回りして見ることが、実は近道というのはよくあるような気がします。


私の例だと、

たまたま見かけた量子力学の考え方が統計学の考え方に実は流用できて、

その統計学の考え方が財務に活かすことができて、

その財務の考え方が哲学的な思想を持ち始め、

その哲学的な思想が今まで理解ができなかった量子論を納得させてくれる。


そんなことがしょっちゅうあるような気がします。



さて、先を急がれる皆さん。

ここで一つコーヒーでも飲んでみませんか?


もしくは、難解な哲学書でもいいかもしれませんね。


「あそびのある学び」があなたにも私にも必要だと思うのです。

S,cat


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