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京都出張旅行(1) 暇を極めし人間、暇つぶしのごとく仕事する。

大阪で働いていたころ、僕はお世辞にも仕事が忙しいとは言えなかった。いや、回りくどいのはよそう。僕は圧倒的に暇であった。なにかとオフィスを抜け出す口実を作っては家に帰ったり市内を散歩したりする日々を送っていたが、そんな中でも今回は、お隣の京都に仕事片手間に一泊二日の旅行をした話をしようと思う。ここで忠告しておきたいのは、この旅行は旅行というほど華やかでもなければ、ひとり旅というほど冒険的でもない、たいそう地味で書くに値しないものだが、それでもなぜ書くのかというと、紀行文というのは無思考で書けるネタとしてモッテコイなのであーる。

関東で23年間を過ごしてきた僕にとって、京都とは日常からかけはなれた観光地でしかなかった。しかし大阪に住むと電車で30分で行けるので東京における横浜と化す。しかし横浜にたいして訪れたことのないように、大阪に住んでからも京都には片手で数えられるほどしか訪れていない。少なからず好奇心はあれど、まあ、無計画な遠出は夜になると時間をもてあまし酒でやるせなさを満たすことになるものだ。

前日、上司に「明日、明後日は京都に直行、直帰します」と告げ、翌朝すぐに出発するつもりだったが覚悟のない願望は目先の欲求に完敗するに決まっている。このアラームが鳴ったことさえ疑いながら正午過ぎに大阪を発つ。京都駅で乗りかえて山科まで。(このまま行けば琵琶湖にたどりつくのだが、結局、一度も訪れることなく大阪を離れたのが悔やまれる。)

京都市を構成するひとつである山科区。滋賀県と隣接している山科区。は、いわゆる京都らしいものなんてなにひとつとして存在しないただのベッドタウン。魅力を見出すのは極めて難しい。この地で仕事という名の先方とのおしゃべりをする。それだけで今日のミッションは終わりだ。早めにクリアしようと腹ペコながらうかがう。驚かれた。メールや電話で済む要件をわざわざ会いに来て話しているのだから無理もない。1時間ほど立ち話して、少しこの地に愛着が湧いてきたところで近くにあった個人経営の定食屋に入店。ごはんの大盛りが異常に大盛りなところ。ご近所さんしか来ないようなところ。おじさんが爪楊枝を加えているようなところ。情報番組かドラマの再放送が流れているところ。タクワンがうまいところ。

さて、今日の仕事が終わってしまったが計画なんてものはなにひとつとしてない。ここで、どうせ明日も京都に来るのだしいっそのこと泊まっちゃったほうがいいのではとの発想に至る。調べてみるとここから自宅への往復代にプラス500円すれば京都市内のドミトリーホテルに泊まることができる。このまま家に帰っても暇なのだし(家に帰らなくてもこの地で暇であろうが)せっかく来た京都で泊まることを決めた。「じゃらん」で速攻予約。じゃらんのアプリを誰よりも使いこなしている自信がある。

とりあえず京都駅に戻る。なにしようか。観光案内所を見てみたり、西口と東口を行ったり来たりする。そんなこんなでぐだぐだしていると気づけば夜になっていた。(今更ながら季節は冬である。)

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