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木曜日の歌 3週目

宵闇に 赤い牡丹を たずさえて
足音鳴らし あなたのもとへ
(「牡丹灯籠」、お露)


泣きながら みなそこひとり 九枚目
幾度数えど 足りぬ一枚
(「番町皿屋敷」、お菊)


久々の娑婆に浮かれて酔いつぶれ
幽霊だって もと人の子さ
(「応挙の幽霊」、女幽霊)


着物から 匂い立つ香 昨晩の
私の記憶 まったく無いの
(「源氏物語」、六条御息所)


ほんとうに この子を抱いて欲しい人
誰だったかを 忘れてしまった
(「今昔物語集」等、ウブメ)


死出の旅 渡りの六文 惜しくない
だから飴を ひとつください
(「飴買い幽霊」、娘)


きみがため なんて絶対言うか ばか
ペディキュア塗って 走っていこう


連作「霊」
2019/12/19

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