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がらっぱち課長

がらっぱち

[名・形動]言動が粗野で、落ち着きに欠けること。また、そういう人や、そのさま。「根はいいやつだががらっぱちなところがある」

               goo国語辞書

2021年3月。
内示が出て、私は初めての異動が決まった。

異動先は、同期の西川ちゃん(仮名)(本当は下の名前で呼んでいるけど、こう表記させていただく)と一期先輩で以前私と同じ部署にいた米持さん(仮名)がいる部署。
初めての異動だが、知り合いが2人もいれば心強い。
そう思ったのも束の間。

「初めての異動だね〜。がらっぱち課長のところか!でも彼は仕事ができる人だから、きっといい刺激になるよ」
…ん?がらっぱち?

私のことをとても可愛がってくれた部長にそう言われた。
顔が広いことで有名な部長がそう言うのだから、異動先の課長はがらっぱちなのだろう。

治安悪そうだな…。パワハラとか大丈夫だろうか?いい加減な人なのかな?
一抹の不安を抱えつつ、私は4月1日に異動した。

* * * * * * * * * *

課長の元で働いてみて、気付いたことがある。

まず、がらっぱちと言われる理由。
彼はこてこての方言を使っていた。

私たちのいる地域の方言は、怒っていないのにまるで怒っているように聞こえる。
中学の時の国語の先生は、ここの地域の方言は、疑問文なのに語尾があがらないから、肯定しているのか質問されているのか、分からないと感じる人もいると言っていた。

「へぇ、そんなんダメらこっつぁ!」
(意味: いや、それはダメでしょ。)

「どぉなってがいやぁ〜!」
(意味: どうなってるの?)

などなど、勢いがあるというか、エネルギッシュというか。
イメージは、法被を着て、ねじり鉢巻をして、御神輿を担いでいる感じ。チャンチキの音がどこからか聞こえてくる。
そんなお祭り騒ぎな言葉を使いこなす課長は、がらっぱちの印象を持たれても仕方がないかもしれない。


2つ目。課長はいわゆる「仕事ができる人」だった。

鬼滅の刃で例えるなら、煉獄さん。
TOKYO MERで例えるなら、喜多見先生。
(ちなみに課長は、「医師の喜多見ですー!」のモノマネがめちゃくちゃ上手い。笑)

瞬時に状況把握をして、一歩先どころか十歩先を読むことができる。
そして、部下への的確な指示。今の状況と今後どう動きたいかも併せて伝えてくれるから、部下側である私たちも、とても動きやすい。
終わった後のアフターケアも忘れない。起きた状況に対しても、対応した人に対しても。

だから、課長はずっと喋っているイメージがある。
もちろん、静かにパソコンに向かっている時もあるのだけれど。
声も大きいから、がらっぱち感をさらに醸し出してしまうのだろうか。

ちなみに彼は、私の職場にいる全ての課長の中で、最年少だった。非常に納得した。
私はいつしか課長のような「仕事ができる人」になりたいと思うようになった。


課長の特徴。
信頼できる人は2文字で呼びがち。

冒頭に出てきた同期の西川ちゃんのことは「にし」または「にっしー」、米持さんのことは「よね」など。
程度の差はあれど、仕事ができると課長が認めている人のことは、2文字で呼んでいるように感じた。

こうなると、私も2文字で呼ばれたくてたまらない。
私のnoteネーム、まるちゃん。は、私の苗字を捩ったものである。
だから、いつの日か「まる」と呼ばれたかった。

そんな目標を持って仕事をしていたら、2ヶ月で「まる」と呼ばれるようになった。
嬉しい。
5ヶ月経った今も、「まる」または「まるちゃん」と呼ばれている。

* * * * * * * * * *

課長は思ったほど言動は粗くなかった。
こてこての方言を使いながら、ぽんぽん状況把握をしたり指示をするものだから、がらっぱちと思われてしまうのだろうと思っていた。

でも、たまにこう話しかけられる。
「おい、まる!」
ビクッとしてしまう。私何か悪いことしたかな?やらかしたかな?

でもその後に続く言葉は、
「ありがとな!」「悪りぃな!助かった!」

褒めてもらえているのに、「おい」でちょっと驚いて身構えてしまうのである。


やっぱり課長はがらっぱちなのかも?笑

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