ピンズと鈴鹿8耐:CBR1000RR-R ホンダウェルカムプラザ青山3【ファクトリーマシンのトビラ4】 東京都港区
2025年の春には建て替えが発表されているホンダの青山本社。1Fにはファンのためのギャラリー、ホンダウェルカムプラザ青山(ホンダ青山)が併設されていますが、数々の恒例イベントもカウントダウン状態の今日この頃。
7月の華は鈴鹿8時間耐久ロードレース。いつからか青山で中継イベントが開催されています。以前は当日配布されていたピンズ目当てに足を運んでいましたが、8時間も応援するのはさすがにツライ。2025年春以降のホンダ青山の予定は未発表ですが、現時点では今年が最後になる可能性も。
一方すでに消滅してしまったイベントもあります。ただしその記憶と足跡は大切に保存しています。
ホンダ青山はとってもナイスなショールーム兼イベントスペース。長年のホンダユーザーとしての願いは、本社建て替え後も、そして建設中の代替地もなんとか確保していただきたいの一点。
その思い出のピンズと直列4気筒の炎の剣の記録。
東京都港区南青山2-1-1
かつてチビッ子やインバウンド客を楽しませたアシモの舞いも過去のコト。今時のドローンは飛んだり跳ねたりと進化。
イタヤピンズ
ホンダ青山ではかつてピンズを販売していました(在庫分はまだ販売されているかも)。またF1や2輪レースの日本GP開催時には記念ピンズを限定製作し、販売もしくは無料配布されていて、さらに年に1、2回ピンズを集めたイベントも開催されていました。
その中心人物が板谷さん。最近の缶バッジによく見られる写真やイラストを貼り付けたようなモノではなく、小さい中にも必要なディテールが盛り込まれた超絶クオリティで、蒐集癖をくすぐるアイテムでした。車種のチョイスや縮小デザインではキモとなるデフォルメのセンスも絶妙でした(板谷さんはこだわりの強い方だったらしい)。もはや工芸品。
板谷さんは残念ながら2011年ごろに亡くなられています。当時ピンズ展がなくなったなーと思っていたら、そういう事情だったようです。以降もピンズは発売されていましたが、記念ピンズはデザインのクオリティが急激に低下。発売されるピンズも市販車ベースが多数を占め、ホンダのレーススピリッツがピンズ化されるコトはなくなっていきます。
いろんな意味で残念です。あー合掌。
そんなイタヤピンズを絡めながら、最近勢いを取り戻しつつある夏のバイクレースの風物詩鈴鹿8時間耐久レースのホンダ車を。
1984年以降、市販車ベースの2輪レース世界選手権(TT-F1)は4ストローク排気量750ccまで(1988年以降のスーパーバイクは2気筒は1000ccまで可)のレギュレーションで行われていました(2002年まで)。
初期のホンダはV型4気筒のエンジンを搭載したマシンでファクトリー参戦し、レースイメージのブランド化を図りました。そして2000年にはV型2気筒へとシフト。V4は耐久王と呼ばれる存在でしたが、スプリント系ではイタリアのドゥカティ(Lツイン)に屈します。
そして残念ながらホンダは世界選手権でのファクトリー参戦を2003年から2020年まで休止することに(プライベートチームはCBR1000RRで参戦)。
また国内の鈴鹿8時間耐久レースでも2009年から2017年までファクトリー参戦を休止しています。バイクが売れなくなっていった時代です。
それでは鈴鹿8耐での水冷直4マシンCBRのファクトリー仕様をいくつか。
CBRシリーズ:水冷直列4気筒の系譜
源流は1992年発売のCBR900RR。750ccクラスの車重に1000ccクラスのパワーを与え、運動性重視のコンセプトを掲げた意欲作。愛称はファイヤーブレード。モデルチェンジで徐々に排気量を拡大していきましたが、2004年に他社と同じ排気量としたCBR1000RRが発表されます。2003年に市販車ベースによる世界選手権レースの排気量上限が1000cc(後に2気筒は1200cc)になった事情もあります。
2004モデル 市販車&8耐仕様
ホンダ青山で販売されていたイタヤ製ピンズ。
鈴鹿8耐の当日に青山では、レース仕様のCBRピンズ(イタヤ製)が配布(されたと記憶)。
こちらはもてぎで動態保存されている2005年の個体。この頃の市販車ベースファクトリーマシンの名前の末尾にはWが付いています。2004年車両と基本はほぼ同じ(カラーリングは少し変わっています)。イタヤクオリティの高さは実車との比較で分かります。
2008年モデル 市販車&8耐仕様
2008年にはベース車両がモデルチェンジ。エンジン、フレーム共に変更され、シート下のマフラーが車体下へと移動しショート化されました。
ワークスカラーが久しぶりにトリコロールとなって新鮮でした。翌年からファクトリー参戦は休止。ただし2009年以降の鈴鹿8耐では、有力プライベーター勢のCBRが10年間で5度優勝しています。
現時点では8耐ファクトリーマシンピンズはこの年が最後に(涙)
そして2020・21年はコロナ禍で鈴鹿8耐は中止されましたが、22年からホンダファクトリーが新型マシンと共に帰ってきます。世界選手権ではサッパリのリザルトを引っ提げて。
CBR1000RR-R ’22&’23 8耐仕様
2020年モデル 市販車
2020年にベース車両のCBRはRを1文字追加してCBR1000RR-Rに生まれ変わります。RR-Rはアール・アール・アールと冗談のような読み方。
エンジンはMotoGPマシンと同じボアストロークを採用した高回転型のパワフル自慢になりましたが、世界選手権の王座ははるか彼方の状況です(現在進行形)。ただしホンダのお膝元・鈴鹿8耐ではファクトリーのご威光をなんとか示しています。パワーさえあれば速かった時代は、もはや昔のハナシです。
ファクトリー2022モデル
2022年は高橋巧、長嶋哲太、イケル・レクオナ組が優勝。
ファクトリー2023モデル
2023年は高橋巧、長嶋哲太、シャビ・ビエルへ組が優勝。
高橋巧(1989- )は宇川徹(1973- )と並ぶ、鈴鹿8耐最多勝の5勝目。映像を見ていても、スムーズにCBRを走らせる巧のライディングが印象的でした。耐久レースで速いライダーは、皆そういう風に見えます。
ファクトリーマシンはほぼ一品モノですが、量産品のようなクオリティで仕上がっています。手造り感が漂うコトはありません。ただし見た目が同じでも、使われる素材や仕上げは異なりとびきり高価なパーツで固められています。なにか昔の豪商や豪農の邸宅が、一見普通だけれどその材料を日本各地から集めて贅を凝らし、技術の粋を楽しんだのと似ています。そういうバイクのフィーリングを体験してみたいものです。
2024年はベース車両がマイナーチェンジ。見た目はウィングデザインが変更されている程度ですが、実力はどうなのでしょう。世界選手権では相変わらず精彩を欠いていますが。
2022年以降の赤主体のトリコロールもピンズに映えるような気がします(NSR500 '84のオマージュ的な)。
2024年の8耐決勝は7月21日です。高橋巧の最多勝とピンズを期待しつつ!
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