目が光る⑴

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何だ。やけに眩しい。

彼は違和感を感じて目を覚ました。

辺りを見回すが、部屋の電気はついていなかった。カーテンの隙間から光が漏れていないのを見ると、窓の外はまだ夜のようである。

あの眩しさは一体。首をかしげながら、彼は思いの外尿意を催していることに気がつき、トイレへと向かった。

部屋は電気がついていないため暗いはずだったが、妙に視界が冴える。なんだか、懐中電灯でも付けているようである。

洗面所の電気を付け、左手にあるトイレに入る。トイレで用を足し終え、手を洗いながら寝ぼけ眼で洗面所に置いてある時計を見ると、もう4時だった。そろそろ起きてもいい時間である。

まだ出たばかりで温まりきってない水道水を、両手をお椀の形に揃えて受けて水を溜め、一気に顔を洗う。

目がシャキッと覚醒し、意識がはっきりしてくる。普段はこんな早い時間に起きることはないので、得をした気分である。

偶然生まれたこの時間をどんな風に優雅に使ったものかと考えながら、壁にかかったフェイスタオルで顔を拭き、鏡を見た時だった。

眩しい。強烈な光が目を焼くように照りつける。あまりの明るさに目が眩み、目をつぶってみたが光は寧ろ一層強まるようである。

このままでは耐えられないと思い、洗面所の電気を消した。それでも閉じたまぶたの裏側は強く光っている。もう耐えられない。

恐る恐る目を開けてみると、鏡にスマホのライトを向けたときのように光が反射しているのが見える。それはどうやら目の辺りから発されているらしかった。

眩しいのを我慢して、鏡に顔を近づけてよく見てみる。すると、あり得ないことが起きていた。

両目の瞳に小さな電球が付いているのである。

瞳は人工的な光を発し、それは小さいながらかなり強かった。

しばらくすると、目がチカチカしてきた。長くは見ていられない。

彼は自分のものとは思えないそのおぞましい鏡像から目を逸らし、闇を求めて暗い部屋へと戻った。

部屋は懐中電灯に照らされたかのように光っていた。なるほど、さっきトイレに行く時よく見えたのはこの両目の電球のせいだったようである。

しかし、そんなことあるだろうか?目に電球?馬鹿馬鹿しい。こんなの悪い夢に違いない。きっと寝ぼけているんだ。もう一回寝よう。

彼は自らの妄想を一笑にふすつもりで、ベッドに転がり、再び目を瞑った。

眩しい!

電球はまだ灯ったままだった。眩しさに耐えきれず、すぐに飛び起きる。

どうやら、あの電球は本当に目に付いているようである。

しかし、一体どういう原理なのか。いつからついているのか。なぜついているのか。彼には一切見当がつかなかった。

その未知は彼を不安にした。そうして、彼はそれを紛らわすため酒を煽った。とにかく、寝るしかない。

彼は逃げるように酒を飲みまくり、いつのまにか眠りに落ちていた。彼はこの時、まだ心のどこかでどうか夢であってほしいと願っていた。

事実、部屋は彼の就寝とともに真っ暗になったのであり、それはまるで彼の願望が顕然したかのようだった。

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