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【エッセイ】幸せはそこにある

今日はついてない日だった。

帰省から帰ってきたんだけれど、まあ、まず寂しい。
それだけでも憂鬱なのに、駅に着いて新幹線の切符を買おうと思ったら、大行列。
自由席を買って乗車するも、台風で遅延。
おまけにスマホの充電は切れるし、挙句充電器を家に忘れる始末。
かと思ったら、大宮駅に到着後、川越線が運転見合わせで、バスに乗ることに。
駅員さんに西口4って教えてもらったけれど、分からん。
バスはいずこ。ウェアイズアバス。
試しに外に出てみたら、帰宅難民で溢れている。
タクシーもバスも大行列じゃないか。
スマホもないから、何線が動いてるかもわからないし。
暇そうにしていた駅員さんに聞こうとしたら、先越されて、待ってる間にどんどん抜かされるし。
いや、さっきまで聞くそぶりもなかったじゃん!
もっと早く聞いとけよ!
これこそ「俺が先」だよ!
結局、追加料金を払って池袋まで行って、折り返して普通に帰ることになってしまった。
折角川越行きの乗車券を買ったのに。
うーん、悔しい。
まあ、仕方ない。たった800円ぽっちくれてやれ。
割り切って新宿行きの埼京線に乗ると各駅だった。
星野源のエッセイも読みたいところだし、これはまあいいだろう。
池袋まで長いなあ。
ほぼ終点じゃないか。
池袋で降りれば東上線一本で帰れるなあ。
でも、米澤穂信先生のサイン本が新宿の紀伊国屋書店に入荷されたばかりだということを思い出し、どうせ一駅だから、と新宿まで足を運ぶ。
しかし、道がわからない。
ああ、まず、公衆電話で家の人に電話しないと。
電話ボックスどこだろう。
駅員さんに聞こう。
改札はどこだ?
うーん、結構遠いけど仕方ない。
改札まで5分ほど歩き、駅員さんに公衆電話の場所を聞く。
「公衆電話ですか。駅の中にはあるんですけど、外だと高島屋の方ですね。」
反対じゃないか。
もうやだ。何これ。
肩を落として公衆電話に行く。
用を済ませ、看板に従っていざ紀伊国屋書店へ。
ビルの中にあるらしいけど、、、
ん?紀伊国屋シアター?
シアター?
7F?
なんか違くない?
ハンズの入り口を自動ドアの内側で守る警備員さんに一応話を聞こうとすると、ドアには閉店の文字が。
閉店?
え、じゃあ、紀伊国屋もやってなくない?
シアターってあるし無理かなあ、とか思ってたけど、どのみち無理じゃない?
しかし、諦めたくはない。
折角新宿まで来たんだ。
何か来た意味を残していきたい。
もう一度地図を見る。
ああ、なんだ、本店は別のとこにあるじゃない。
よし、今度こそ。
、、、待てよ。
今何時だ?
時計を見ると21:20だった。
果たして紀伊国屋書店開いてるのか?
調べるか。
あああ!!スマホの充電なかった!!!
くそ!!ついてない!!
ええい、もう行ってしまえ。
だって、天下の新宿だよ?
よく知らないけど、繁華街なんでしょ?
本屋でも22:00くらいまでならやってるに違いない!
そう思い込んで、少し早足、鼻歌交じりで紀伊国屋書店に向かった。
道を間違えないように確認しながら、目印のビックロを過ぎ、信号待ちをしながら交差点越しにいよいよご対面。
よし、2Fか。
電気はついてるな。
ええと、どこから入るんだろうか、、、
ん?外のエスカレーター封鎖されてる?
なんか張り紙貼ってない?
いやいやいや、きっと同じビルの別の店だよね。
薬局とかカルチャースクールとか美容院とかさ、よくわかんないけど、そんな感じの入り口なんだよねきっと。
紀伊国屋が閉まってるわけないし。
新宿だし。
電気ついてるし。
あれ?1F暗くない?
1Fも書店っぽくない?
信号が青になった。
小走りで張り紙に向かう。
張り紙には、閉店の2文字。

ええ、、、

ええ、、、

人間ショックを受けるととりあえず鼻歌は止まるらしいです。
ただただ徒労につぐ徒労を重ね、散々時間を無駄にした僕ですが、まだ諦めませんでした。
そう、隣にはブックオフがある!
せめて、ブックオフであの星野源に影響を与えた松尾スズキ先生のエッセイを手に入れてやる!
もう心身ともにヘトヘトの僕を、何か爪痕を残そうとする意思が突き動かす。
ついに、店内に入ろうとしたその時目に飛び込んで来たのは、臨時休業の4文字。
完全敗北。
台風おそるべし。おそるべし台風。
台風に弄ばれるだけの1日でした。
こんな日は、黒髪ショートで、ノースリーブの黒いワンピースに、赤いハイヒールを履いた、色白の目がぱっちりした美人との運命的な出会いでもないと割に合わない!
すれ違いざまに転んだ彼女が手に持ってたコーヒーを手放して、溢れたコーヒーが僕のジーンズにかかり、慌てふためいている彼女を笑顔で許して、弁償するといって聞かない彼女を宥めながら、なんやかんや連絡先を交換して、、、
なんて、アホなことを考えていましたが、結局何かあるはずもなく、ただおじさんの隣で星野源のエッセイを読んで日常に戻ったとさ。
ほんとついていない日だったなあ。

いや、まあ、悪いことばかりではなかったよ?
新幹線の切符買う間東海オンエアのキーワード探して応募できたし、自由席は座れたし、なんなら埼京線ですら座れたし、お陰でエッセイ読破できてめちゃくちゃ充実した刺激もらったし。
ああ、あと、新宿駅の夜風が、夏の湿った匂いを過ぎて乾いた秋風になっていたのを肌で感じられて凄く気持ちよかったなあ。

あれ?
思いのほか楽しいこと多くない?

なんか、今日一日ついてないことが多かった気がしたけれど、不運から生まれる幸運もあるらしい。
悪い出来事は印象に残りやすい。
心地よい出来事は忘れやすい。
日常には心地よい瞬間って沢山あって、でもそれって肉体的な記憶だから意外と長く保てない。
でも、悪い出来事は精神に傷をつけて、深く長く自己にこびりつく。
だから、人は悪いことばかり思い出す。
でも、忘れないようにしたい。
日常には、心地よい瞬間が沢山あること。
それは本当一瞬で気付きにくいということ。
逆境の中でも、人はきっと、何か楽しみを見出して、生きている実感を明るく彩ることができるように作られている、ということ。
辛い時こそ、目の前に現れた幸せの断片に気づけるようになりたい。
痛みに耐えながら、必死に、断片をかき集め、最後には「ああ、あの時はバカだったなあ」って笑っていたい。
きっと、断片が揃っていることには気づかない。
その笑いが断片でできているのだとは気づかない。
だが、それでいい。
幸せとは気づかないものなのだから。
そこにある日常こそが、幸せなのだから。


最後は、真面目にしめましたが、今日はちょっと変わったテイストで書いてみました。
ガッツリ星野源さんの影響です(笑)
この先も様々な工夫を凝らしていきたいと思います。
、、、なんて「あとがき」めいたことを書こうかとも思いましたが、気持ち悪いですね。
(笑)とか特に。
もう眠いしいいや。
今宵(いや、もう今朝か)はここまで。

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