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まいにち易経

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当マガジン『 #まいにち易経 』は、難解な易経の内容をわかりやすく解説。現代の混迷を生き抜くための叡智と指針を与える必読マガジン。 竹村亞希子先生【「易経」一日一言】と本田濟先生…
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2024年7月の記事一覧

まいにち易経_0731【洞察力を養う~風地観の教え】

風地観の卦は、風が地上を広く吹き渡る象を表しているます。風が地上を吹き抜けるとき、その影響は万物に均しく及びます。古代の聖なる王は、この卦に倣い、四方を巡視して民の風俗を詳細に観察し、その土地や人々に適した政策と教化を行いました。 風地観の卦は、時の変化や方向を見極め、兆しを捉える洞察力を説いています。洞察とは、いわば風を観ることです。風は常に流れ続けており、目には見えず、耳で聞くこともできませんが、体感を通じてその強さや方向を知ることができます。時も同様で、目に見えず耳には

まいにち易経_0730【時・処・位~時の三要素】

易経が表す「時」とは、単なる時間の流れだけでなく、空間や状況も含む広い概念を指している。この三つの要素、つまり「時(時間)」「処(場所、環境、状況)」「位(立場、社会的地位)」の三位一体が「時」を形成している。 この「時」を別の視点から見れば、「天」「地」「人」という三つの要素に対応している。「時」は天の動きと関連し、「処」は地の環境を表し、「位」は人の立場を示している。この三つの要素が調和することで、物事がうまく進むという考え方が易経にはある。 物事に対処する際には、現在と

まいにち易経_0729【麗沢】麗沢は兌なり。君子もって朋友講習す。[58䷹兌為澤:象伝]

象曰。麗澤兌。君子以朋友講習。 大きな沼が連なるのが兌卦の卦象である。君子はここから啓発を受け、友と共に学び合う。 俗に「できる人より言える人の方が勝る」「英雄は口から、良馬は足から」と言うように、言葉の重要性が見て取れる。人と人との間で意思を伝えるには言葉が必要であり、そのため言葉は人と人との交流における重要なツールである。しかし、言葉巧みな人も、正道を守ってこそ吉祥が通じるのである。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに

まいにち易経_0728【素直な心・広い視野・大きな志】直方大なり。習わずして利ろしからざるなし。[02䷁坤為地:六二]

六二。直方大。不習无不利。 正直、端正、広大であり、修習する必要はなく、すべてにおいて有利である。 直方大:大地の特徴を表している。古人は「天円地方」天は円く、地は方形であると考えた。天道が剛健なら、地道は「直方大」。「直」は正直、誠実の意味、「方」は方正を表し、「大」は包容を意味する。 習わざれども:「習」は修習または修治を指し、「習わず」は敢えて修習や修治する必要がなく、自然のままでよいということ。 利あらざるなし:不利なことがないという意味。 ある企業の新人研修に

まいにち易経_0727【包括的パートナーシップ戦略】万邦を懐くるなり。[07䷆地水師:九二]

懷萬邦也。 『懷萬邦也』=『万邦を懐く』 懐く:抱擁する、包み込む、心に抱くという意味。 万邦:多くの国や地域、あるいはすべての国や地域を指す。 つまり、「すべての国や地域を心に抱き、慈しむ」という意味を持つ。 より具体的には、優れた統治者や指導者が、広く国々や人々のことを考え、その幸福や繁栄を願うという理想的な姿勢を表現している。 この考え方は、古代中国の政治哲学において重要な概念であり、理想的な統治者の資質の一つとして捉えられていた。 ある企業の新人研修に招かれ

まいにち易経_0726【自分の強みを活かす】碩果は食われず。[23䷖山地剥:上九]

上九。碩果不食。君子得輿。小人剝廬。 人生の啓示:上九は剥卦の中で唯一の陽爻であり、上位に位置する。これは残された大きな果実のようなものである。「剥」の状況と戦うとき、上九は唯一の陽爻として試練を経て成功し、人民の支持を得る。その一方で小人は敗北する。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 「碩果不食」とは「大きな果実は食べられずに残る」という意味です。ここで言う「大きな果実」とは何でしょうか? それは、皆さん

まいにち易経_0725【腐敗を正す】甲に先立つこと三日、甲に後るること三日。[18䷑山風蠱:卦辞]

先甲三日。後甲三日。 甲乙丙丁戊己庚辛壬癸【甲】乙丙丁戊己庚辛壬癸…… 「甲」は天干の始まりを示し、事の発端を引き出す。甲の三日前は「辛」で「新」と同じ意味を持ち、甲の三日後は「丁」で、注意を促す意味がある。甲の三日前は、物事が盛んになりすぎて崩壊しそうなときに、自ら新たにする精神を持ち、未然に防ぐべきことを示している。甲の三日後は、問題が発生したばかりの時点で、まだ深刻でないうちに観察し、適時に制御し救済することが必要であることを示している。 先甲三日。後甲三日。:この

まいにち易経_0724【閉塞の時代】否はこれ人に匪ず、君子の貞に利ろしからず、大往き小来るとは、すなわちこれ天地交わらずして万物通ぜざるなり。[12䷋天地否:彖伝]

彖曰。否之匪人。不利君子貞。大往小來。則是天地不交而萬物不通也。 天地の交流が断たれ、万物が疎通しない状況を示している。君主が高位にあり、臣下が低位にあるため、国家が治まらないのだ。内側の卦は坤で陰、外側の卦は乾で陽、内は弱く外は強い。これは、小人の道が強くなり、君子の道が弱まっていることを表している。 このような状況では、君子が正道を守るのは不利である。孔子の人生がその典型例だ。孔子は仁義道徳を広めようとしたが、周室が衰退し、諸侯が権力を競い合う中で、仁義道徳に頼ること

まいにち易経_0723【創造的な摩擦】天地は睽けどもその事同じきなり。男女は睽けどもその志通ずるなり。[38䷥火澤睽:彖伝]

天地睽而其事同也。男女睽而其志通也。 天地は対立しているが、その働きは一致している。男女は異なるが、その志は通じている。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る まず、『睽』という字は「背く」「反目する」「疑う」「同じ方向を持たない」という意味を持っています。一見すると、ネガティブな印象を受けるかもしれませんね。しかし、実はこの「睽」という概念こそ、私たちの社会や組織を発展させる鍵なのです。 易経では、「天地は

まいにち易経_0722【利益を還元する】益は、上を損して下を益す。民説ぶこと疆りなし。[42䷩風雷益:彖伝]

彖曰。益損上益下。民説无疆。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 私も若い頃は、ビジネスの世界で成功することばかり考えていました。利益を上げること、会社を大きくすることが全てだと思っていたのです。しかし、長年経営に携わり、様々な経験を積む中で、本当の成功とは何か、持続可能な成長とは何かを考えるようになりました。 そんな時に出会ったのが、この「風雷益」の教えです。この卦は、私たちに非常に重要なことを教えてくれて

まいにち易経_0721【損して得をとる】損は、下を損して上に益し、その道上行す。[41䷨山澤損:彖伝]

彖曰。損。損下益上。其道上行。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 山沢損の「損」とは、一見するとネガティブに捉えられがちな「損失」や「減少」を意味しますが、実はその背後に深い哲学が隠れています。損をすることの目的は、「その道に上行する」、すなわち自らのステップアップを果たすためのものです。この「損」は、将来の自己投資と捉えるべきです。 例えば、資格を取得するために学費を支払い、勉強に励むことも一種の損です。

まいにち易経_0720【一陰一陽の道:中庸を知る者】仁者はこれを見てこれを仁と謂い、知者はこれを見てこれを知と謂い、百姓は日に用いて知らず。故に君子の道は鮮し。[繋辞上伝:第五章]

仁者見之謂之仁。知者見之謂之知。百姓日用而不知。故君子之道鮮矣。 仁もまた智も、広大な道の一部に過ぎない。人はどうしても、自分の見える範囲を全体だと思い込んでしまう。仁者はその道を見てこれを仁と呼び、智者はその道を見てこれを智と呼ぶ。しかし、それ以下の一般人は日常生活でその道を利用しているにもかかわらず、その存在に気づかない。だからこそ、君子を目指す者が進むべき道は、それを理解する者が極めて少ないのだ。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ

まいにち易経_0719【リーダーと組織】陽卦は陰多く、陰卦は陽多し。[繋辞下伝:第四章]

陽卦多陰。陰卦多陽。其故何也。陽卦奇。陰卦偶。其德行何也。陽一君而二民。君子之道也。陰二君而一民。小人之道也。 八卦には、震、坎、艮が陽卦に属し、巽、離、兌が陰卦に分類される。陽卦は一陽二陰で陰の爻が多く、陰卦は一陰二陽で陽の爻が多い。なぜこのように分かれているかというと、少数者が多数者を支配する構造に理由がある。 陽卦では、奇数の陽爻が一つと偶数の陰爻が二つで、少ない奇数爻が卦の主導権を握る。一方、陰卦では、偶数の陰爻が一つと奇数の陽爻が二つで、少ない偶数爻が卦を支配する

まいにち易経_0718【耳目聡明】巽にして耳目聰明なり。[50䷱火風鼎:彖伝]

巽而耳目聰明。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 『火風鼎』の「鼎」は、古代中国で天への供物を煮炊きする大鍋を意味します。この鼎は、ただの鍋ではなく、非常に重要な祭器であり、国家の威厳や統治者の実力を象徴するものでした。鼎が大きく重いほど、その国家やリーダーの権威が高いとされました。このため、鼎の重さを測ることでリーダーの実力が問われることを「鼎の軽重を問う」と表現します。 さて、ここで注目したいのが、「巽