【夢日記】「京都の着物文化」とかいう講義を受講してみたらエラいことになった
おそらく舞台は大学。特別講義的な感じで、オーソドックスな単位の取り方ではない、つまり、通っている大学で行われる講義に出席して単位を取得、ではなく、ある施設まで出向き、そこで、短期集中型、1日掛かりの講義を複数回受けて単位取得を目指す、そんなパターンの講義を受講していたように思われる。
ところが、周りの受講生は、中学校のクラスメイト、高校のクラスメイトばかりだった。特段、仲が良い人、というわけでもない。まさにクラスメイトだった。具体名は伏せることとするが、人数でいうと、20人ぐらいだったかと推察される。
講義の内容は「京都の着物文化」。どうやら、伝統文化の類いらしい。丹織物とか、陣羽織とか・・・。たぶん、そんなのをイメージしてもらえば、大体、間違っていないはず。
で。
いわゆる、歴史学習的な部分はそこそこにしておいて、その講義の最終目標は「自分がデザインした『マイ着物』をカッコ良く着付けられるようになりましょう!」だったらしい。なかなか、着物をちゃんと着こなせる若者が居ないぞ、と、関係者各位が危惧していること、加えて、伝統文化へのリスペクト、ならびに、存在そのものを認知していない人も増えて来たぞ、ますます危ないぞ、そんなこんなで、この講義が誕生した、とのこと。
そんなわけで「マイ着物」の製作に取り掛かる段に入ったわけだが、どうにもこうにも、上手く行かない。有り体に言えば、進みが悪い。僕は、周りの受講生の進捗状況を、逐一、目を配ってはため息、そんな愚行を繰り返していた。
で。
意味もなく、昔話を延々とただ語った、わけではない。なぜなら、僕の当時の思い出、ミニソーラーカー同様、他の受講生はマイ着物を製作して「着物をカッコよく着付けるぜ!」って段階に移っているにもかかわらず、僕だけ、マイ着物はどうすれば製作出来るのかしら、という段階のまま、全く前に進むことが出来ていなかったからだ。
ただ、小学生の頃の僕と、大学生の頃の僕とでは、諸々異なって来る。そんな思わしくない状況の中で、僕が閃いたのが、
「よし、金で釣って、代わりに製作してもらおう」
つまり「俺の代わりにマイ着物を製作してくれたら〇〇円やるよ」というわけだ。「自分だけ取り残されちゃった!」とアセアセするのではなく、どうせ製作出来ないのであれば金の力で解決してしまおうというわけだ。
また、この手法を採用すれば「俺は△△円でやってやるぞ!」とか「私は◇◇円でやってあげてもいいわよ!」などなど、マイ着物を製作する際の費用は、いったいどれぐらいが相場なんだろうか、ということもうかがい知ることが出来る。並びに、お金が絡んだ時の人間の動向も観察してみよう、そんな魂胆も、僕の中にはあったみたいだ。
で。
そんなこんなで、一番低い額を提示してくれたRに、マイ着物を製作してもらうことになったのだが、いざ完成してみると、コレジャナイ感、とでもいうのか、なんかあんまり映えないなあ、とでもいうのか・・・。とにかく、満足のいかない出来栄えだったのだ。
まあでも、せっかく頼んでおいて文句言ってたらバチ当たるよな、と、グッと溜め込んでいたのだが、マイ着物を着付けよう、の段階に入っても、着物を上手く着付けることは、やはり出来ず、なんとか着ることが出来たけど「着こなす」というよりも「着させられている」といった方が正しそうだ、みたいな着方になっていたりして、二重に映えない始末に。
上手く着付けることが出来ないのは、マイ着物の出来に問題があるのか、それとも、僕が着物を着こなす技術が欠けているからなのか。まぁ、いうまでもなく後者、僕が悪いことは分かり切ってはいるのだが、そもそもマイ着物自体に満足していなかったのもあったのか、僕は、癇癪を起こしてしまった。
「こんなものっ!」
僕は、何にも上手くコトが運ばないことに苛立ってしまい、思わず、マイ着物を投げつけてしまった。それで、Rに「おい!危ないじゃないか!それに周りの人もビックリしてるぞ!」などと、至極当たり前の注意を受けるハメになった。
僕は、前田智徳ばりに「言われんでも分かっとる!」といったようなテイで、投げつけたマイ着物には目もくれず、あろうことか、Rのマイ着物をバッと手に取って、そのまま、駆け出してしまったのだ。
当然、Rは追いかけてくる。そして、野次馬連中みたいな人も、数人、追いかけて来た。また、トラブルをおさめるために、先生らしき人達も、後から付いてきていた。
僕は走った。とにかく走った。無我夢中で走った。
僕の体は、一心不乱に走り続けているだけだが、心の中は、違った。後悔の念が渦巻いていた。「一体俺は何をやっているんだ?」と、自らに問い掛けていた。駆け出した瞬間から、あるいは、駆け出そうとする前から、後悔することになる未来が、ありありと想像出来た気がしてならない、にもかかわらず、僕は、一時の衝動に駆られて、つい、やってしまったのだ。
そしてまた、「むしゃくしゃしたからやった」としか言えない、稚拙な犯行動機を正直に打ち明けるのも、はばかられた。「〇〇が△△だから◇◇だと感じて愚行を犯してしまった」などと、明確な理由付けが欲しいと感じたのだ。この期に及んでお前は何を言っているんだ、と、セルフツッコミを入れてやりたい気分でもあるのだが、どうしても、筋が通る理由を言語化したい、面倒臭い性分なのである。
とはいえ、どれだけ逃げまどっても、良いアイデアが閃くどころか、心身が追い込まれるばかり。息も絶え絶え。もう走ることも出来ない。もう考えることも出来ない。僕はその場で嗚咽した。
ほどなくして、僕を追いかけていた集団が、僕のもとへ、群がるようにやってきた。僕は「ああ、悲嘆に暮れることすら叶わないのか」などと、心の中で独り言ちながら、容易に想像される、目を覆いたくなる未来を覚悟した。
まさに、絶望の淵に立たされたと形容するに相応しい状況の中で、僕は目を覚ました。
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