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むかしむかし、

 むかしむかし、あるところに二匹の魚がいました。神様は最初に作ったその二匹の魚に、名前をそれぞれ付けました。金色の尾びれがある方が「幸福」で、銀色の尾びれがある方が、「不幸」といいました。

 彼らは、同じ海の中に生まれ落ちました。幸福は海に落ちたことを喜びました。

「ああ、神様ありがとう。生きることができて本当によかったです。不幸と一緒に、これから先、幸せに生きることをあなたに誓いましょう」

 一方、不幸は海に落ちたことを呪いました。

「おい、お前。この野郎。お前のせいで俺の人生は台無しだ。お前が、俺を殺したんだ。生き殺しだ!お前は、お前は俺を、本当の意味で殺したんだ。俺は、あんたが嫌いだ。俺のことを産まなきゃ、俺を作り出さなきゃよかったのにな!」

「ねえ、どうして君はそうやって不幸になりたがるんだい?」
「なりたがっちゃいない。俺は、俺は不幸なんだ」
「僕は、君といれて幸せだけどね」
「うるさい!そういうお前が嫌いなんだ。お前みたいな幸せ者が嫌いなんだ」

神様は、不幸の口とえらを縫い合わせ、海の底へと沈めました。
めでたし、めでたし。

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