日経産業新聞 寄稿コラム:VC投資、グローバル展開、Fintech(村松 竜)

GMOペイメントゲートウェイ 副社長 GMO VenturePartnersファウンデ…

日経産業新聞 寄稿コラム:VC投資、グローバル展開、Fintech(村松 竜)

GMOペイメントゲートウェイ 副社長 GMO VenturePartnersファウンディングパートナー。 99年、決済スタートアップを起業。05年にGMOベンチャーバートナーズ設立。12年よりシンガポール拠点にインド、東南アジア、北米への投資と事業開発

最近の記事

収益逓増型ビジネス

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC22B980S3A820C2000000/

    • 「資金調達の冬」にも効用

      • 取締役会おすすめアジェンダ2つ

        スタートアップ起業家におすすめの「取締役会のアジェンダ」について書いてみる。外部資金を募集しながら、いずれ上場を経て大きく成長することを目指しているとする。 資金調達ラウンドを重ねるごとに、取締役会に出席する外部メンバーは増えていく。毎月あるいは四半期に一度開く取締役会には多様なアジェンダがあり、その資料を作るわけだが、2つに絞っておすすめする。それは、 (1)業績について(2)人についてである。 (1)業績の報告は誰もがやると思うが、おすすめは、 主要な損益計算書(

        • ユニコーン量産に必要なもの 2つ

          日本にはユニコーンが少ないと言われている。 その理由を「挑戦する起業家が少ないから」「VCの資金供給が少ないから」とする声がある。日本と海外で長年この世界に漬かり様々な関係者と議論した経験から思うことを述べたい。ユニコーンの必要性についてはここでは触れない。 「国内に小ぶりなIPOができる新興市場があるから」「VCファンドへの機関投資家からの資金不足」も事実だが、その根底にあるものも確認したい。 米国371、中国138、インド33、英国29、韓国10、日本6。 なぜ日本

          五常・アンド・カンパニー

          ストイックにアグレッシブに、マイクロファイナンスで世界の貧困問題と向き合う起業家がいる。五常・アンド・カンパニーの慎社長だ。 世界には金融アクセスを持たない成人が17億人いるといわれている。 五常は貧困地域で低所得者、特に女性の経済的自立を支援する少額事業融資などを手掛けている。マイクロファイナンスの先駆者であるバングラデシュのグラミン銀行の名を知る人も多いだろう。グラミンの創設者は「スモールビジネスへの少額融資」の形で貧困に向き合い、2006年にノーベル平和賞を受賞した。

          戦国時代とスタートアップ

          「国盗り物語」「播磨灘物語」「関ケ原」。好きな本を3冊挙げろと言われたら必ずこの順番で答える。司馬遼太郎のどれも戦国時代の中期から末期を描いたものだ。飽きもせず20年間近く、折に触れてパラパラと読み直している。その都度はっと気づくことがあり、どの本も付箋やアンダーライン、コメントだらけである。 この順番が大事なので、歴史好きの人に会うと必ずこの順番で読むようお勧めしている。それにはスタートアップ業界に身を置く私の職業とも関係する理由がある。 「国盗り物語」は斎藤道三が主人

          「ふくらはぎ体操」の効用

          日本のテレビ番組をつけて娘が「これ見た方がいいよ」と言った。NHKの朝の情報番組が「座り方特集」をやっていた。 頭が一番さえている朝の貴重な時間をテレビで費やしたくないんだよね、と思いながらコーヒーを持って通り過ぎようとしたが、テレビ画面から聞き捨てならぬ言葉が聞こえてきた。 「正しくない座り方によって、腰痛や肩こり、眼精疲労など様々な不調が引き起こされることがわかってきました」とその特集は始まったのだ。 「ついついやってしまう、悪い座り方」と4つのタイプが紹介されたので

          シンガポールのCarTechスタートアップと日本の大手損保の提携

          初対面でとんでもない事業計画をぶち上げ、次に会った時その達成をあっさりと報告してくれる起業家が時々いる。 シンガポールのAaron Tan(アーロン・タン)もそのひとりだ。 タンは、AIを活用した CarTech × FinTech 領域のスタートアップ「Carro (カーロ)」の創業者。シンガポールの国費留学で米国カーネギー・メロン大学を卒業し、その後、シンガポール国営通信企業のベンチャーキャピタル部門に勤めた。東南アジアの名だたるスタートアップに自らエンジェル投資もする

          シンガポールのCarTechスタートアップと日本の大手損保の提携

          「課題先進国」でイノベーションの橋渡し

          インド・バンガロールの洒落た一軒家のオフィスで、その若者は「僕たちのサービスはインド史上、いやアメリカでも見たことがないスピードで広がっています」と自信たっぷりに言った。 1年前、米国のピッチイベント「YC Demo Day」で知り合った起業家を訪ねた時だ。 Khatabook(カタブック)というそのスタートアップは2018年の創業。 アメリカのトップベンチャー・キャピタル(VC)たちから投資を受け、今年5月には60億円以上を調達、時価総額は300億円を超えていると言われ

          「利益確保」を目的にコストセーブをすると、長期目標は遠のいていく

          思いがけないレベルの赤字や売り上げ計画の遅延に直面すると、動揺し、 場当たり的な対応策に走ってしまうことがある。 株主が「計画数字の達成」を迫れば、なおさらだ。 「想像以上に未回収金額が増えています。このままでは最大年間X億円の赤字になります」 沈痛な面持ちで新規事業の責任者が報告した。スタート以来3年間の赤字を経て、やっと通年で黒字転換した新決済事業だった。示された未回収金額はケタが違った。グラフにした時のシャープな下降線を想像して私と経営陣は息をのんだ。4年前のことだ。

          「利益確保」を目的にコストセーブをすると、長期目標は遠のいていく

          東南アジアの決済ビジネス動向

          「2C2P社は昨年、通年で黒字だったが、これは続くのか?」 2020年7月、東南アジアの有力オンラインメディアの記事は半信半疑だった。東南アジア決済代行の最大手、2C2P(ツーシー・ツーピー)社の黒字転換のニュースだ。 それもそのはず。この地では「ECや決済会社の黒字化なんて無理」という固定観念が投資家、ジャーナリスト、フィンテック分野の起業家の間に、長い間あったからだ。 しかし、現実に黒字になった。そして一度なればずっと黒字なのだ。 なぜか。ネットショッピングの決済代

          初のオンライン決算説明会

          「61回目にして、初の非対面での開催になりますが、ひとつよろしくお願い致します」。いつものように社長の挨拶で始まった当社の機関投資家向け決算説明会。2005年の上場来15年間、欠かさず毎四半期続けており、IR(投資家向け広報活動)チームと多くの経験値を積み上げてきた。 しかし、今回はいつもと違った。オンライン開催だったのだ。 本社会場にネット配信機材を持ち込み、200人近い機関投資家が自宅やオフィスからウェブ画面で中継を視聴した。私はシンガポールの自宅から参加した。 コロ

          顧客にとことん向き合う

          コロナ禍で多くのスタートアップは黒字化が急務になっている。言うまでもなく今後、投資家が激減するからだ。次の増資が成立せず「サドンデス」になる状態からすぐに抜け出す必要があるので、既存株主は「人員削減も選択肢に早急に黒字化を」と主張する。 しかし、実行する側からすると簡単なはずがない。私の起業時の話だが、ベンチャーキャピタル(VC)をやめて実行側に移った創業2年目に、ドットコムバブルが崩壊し大不況がやってきた。できたばかりのネット産業が壊滅しそうな衝撃波だった。 早い話が当

          リテンション・レートを見て身を乗り出してしまった話 【ラクスル】

          「PMF(Product Market Fit)という言葉が良くないんです。成長過程の一定期間であるように誤解してしまうがそうではない、終わりのない活動なんだ。」 と語るラクスル松本さんがPMFに猛烈に打ち込み、猛烈なグロースを始めた2012年にお会いした時のエピソードです。 * * * * * * *   「印刷機のシェアリング」で印刷業界に革新をもたらしたラクスル。 名刺やパンフレットを作りたい人と印刷会社をマッチングし、あらゆる印刷物を短期間で作ることを可能にした。

          リテンション・レートを見て身を乗り出してしまった話 【ラクスル】

          寺田さん自身が名刺の読み取りを・・・【Sansan】

          「では、私が御社の名刺をスキャンしに行きますよ」 Sansanの共同創業者の寺田親弘さんはこともなげに言った。導入したものの、我々が面倒がってやらずにいた「名刺の読み取り作業」を、代わりに自らが来てやってくれるという。 「それ、早く言ってよ~」のテレビCMで有名なSansanは、今や日本を代表するSaaS企業だが、創業後はひたすら節約に努めていた。 2007年、異業種に勤める学生時代の友人たちで共同創業した。まだSaaSという言葉もなかった頃だ。最初の2年はほとんど資金調

          海外の同業知っておこう、という話

          今回のコラムは、自身の99年起業当時の経験も思い出しつつ、書きました。 日本でネット系の急成長スタートアップを起こす場合は、海外の同業をなるべく早く調べておく必要がある。彼らがどのようなビジネスモデルかはもちろん、誰が出資しているのか。投資ラウンドはどれくらいかも調べた方がいい。後に死活問題になる事すらある。 彼らの投資(増資)ラウンドを見ると、日本進出までの時間が大まかに読める。シリーズBなら、あと2年半から3年くらいという具合だ。そしてそれが、起業家にとって「築城」の時