東南アジアの決済ビジネス動向
「2C2P社は昨年、通年で黒字だったが、これは続くのか?」
2020年7月、東南アジアの有力オンラインメディアの記事は半信半疑だった。東南アジア決済代行の最大手、2C2P(ツーシー・ツーピー)社の黒字転換のニュースだ。
それもそのはず。この地では「ECや決済会社の黒字化なんて無理」という固定観念が投資家、ジャーナリスト、フィンテック分野の起業家の間に、長い間あったからだ。
しかし、現実に黒字になった。そして一度なればずっと黒字なのだ。
なぜか。ネットショッピングの決済代行会社の成長に必要なのは「ECの市場規模」だからだ。
急成長した東南アジアのEC市場は、昨年ついに10兆円に達した。日本ではちょうど昨年20兆円になったと報じられたが、東南アジアは1年間で40%も伸びた。日本の年間成長率は10%にすぎない。成長率がこのペースで開いていけば、あと3年で日本と東南アジアのECの市場規模は逆転する。
この事態にグローバル投資家は気づき始めている。だからこそ、東南アジアのEC最大手のSEA社の時価総額は6兆円にまで急騰しているのだ。
これは楽天など日本のEC企業の3倍以上の数字である。
コロナ禍でネット購買が安定して伸びているため、オンライン決済代行会社は各国で急成長している。現在米国ではストライプ、欧州ではアディエン、そして東南アジアでは2C2Pがそれぞれ最大手集団となっている。
ところで、GMOペイメントゲートウェイは2C2Pと同様、決済代行を担っているが、投資家とのIR活動においてほぼ毎回聞かれる質問がある。
「御社はどうやってペイパルやアリペイと競争するのですか?」
という質問だ。
実は我々オンライン決済代行と、ペイパルやアリペイは競合しない別の業種なのである。「決済代行」「支払い手段」という2つの業種は、実は決定的に異なる。
「決済代行会社」はネットショップで購買する人からは見えない、裏方の存在。ネットショップをお店とすれば、いわばそのお店にあるレジの中で売上代金を動かす作業をソフトウエアで代行している会社だ。消費者から見えないので知名度が低い。地域に密着した事業なので、地域ごとに1位集団が存在する。
かたや「支払い手段」は消費者が持つ財布をネット上で提供している。消費者が持つものなので、ビザなどと同様に知名度勝負、ブランド力勝負になり寡占化が起こりやすい。
利用者には多重構造に見えるが、とにかく表裏の両者は競合せず実は協力関係にある。ネットショップの運営者からすると、「ビザもアリペイも使えるレジ」がありがたがられるのだ。
裏方である決済代行の2C2Pの黒字化は、世界のEC市場が拡大を続けていることを改めて実感させるようなニュースだった。
[日経産業新聞 Smart Times「ECの黒子 黒字化の訳」2020年9月4日付]