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ユニコーン量産に必要なもの 2つ

日本にはユニコーンが少ないと言われている。

その理由を「挑戦する起業家が少ないから」「VCの資金供給が少ないから」とする声がある。日本と海外で長年この世界に漬かり様々な関係者と議論した経験から思うことを述べたい。ユニコーンの必要性についてはここでは触れない。

「国内に小ぶりなIPOができる新興市場があるから」「VCファンドへの機関投資家からの資金不足」も事実だが、その根底にあるものも確認したい。

米国371、中国138、インド33、英国29、韓国10、日本6。
なぜ日本は極端に少ないか。
それは「人口1.25億人という市場が大きくないから」
そして「チームとプロダクトが国内に最適化されているから」
だと私は思っている。

言い換えれば、
(1)自国だけで巨大な市場がある
(2)世界市場に出るチームとプロダクトがある

このどちらかがユニコーンの「量産」には必要なのだ。

インドと中国が(1)、英国、韓国が(2)、両方持ってるのが米国である。
ちなみに東南アジアのユニコーンたちも(2)である。シンガポールに本社を置く彼らはプロダクトも登記も英語で、幹部も社員も英語を話す。

多くのユニコーンが育つ米国、特にベイエリアは、起業家も多く資金調達のエコシステムが出来上がっている。しかし、本質はそこではない

3.3億人という成熟した国内市場のみならず、なんといっても母国語が世界の標準語である。

そしてここがポイントなのだが、かの地は人種のるつぼで、ベイエリアで生まれたプロダクトの多くは最初から多人種に対応している。つまり地方予選ベイエリアで優勝すれば全国大会で勝つ可能性は最初から高く、世界大会でも地方予選で作ったプロダクトがそのまま使える。

一方の日本は地方予選も全国決勝も日本人の市場である。そこで最適化したプロダクトができ上がる。それを世界に出す時、製造業以外の分野では、
言語の高い塀を見上げることになる。次に「このネーミングでは、この色ではウケない」といった「海外の感性との差」を指摘され、世界仕様に作り直しプロモートし直すことになる。

メディアや大学教授や政治家は、他国と比較して残念がるなら、英語を第2公用語にすることを考えて欲しい。登記や公式文書は英語と併記、年号も西暦併記になれば海外からの投資のバーが下がり国際金融センターへの道が見えてくる。

それでもhey、五常、Paidyのように海外資本の受け入れが進んでいるスタートアップだってある。「挑戦しない日本企業」という文脈でユニコーンを語るのも無責任だ。

投資家マネーを惹きつける起業家は、10年前から10倍になった肌感覚すらある。多くのVC関係者が同じ意見だろう。


[ 日経産業新聞 Smart Times「ユニコーンの地政学」 2021年7月30日付 ]

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