【2023年版】無名の日本人ActorがアメリカでアーティストVISAを取得するまで①
NY在住のアクター、演出家、脚本家、プロデューサー、起業家の松坂龍馬と言います。僕は2019年に初めてアメリカでアーティストVISA(O-1 VIZA)を取得した際にVISA取得までの流れをnoteに書いたのですが、あれから約4年が経ち少しだけ状況も変わったので現在のVISA取得までの状況と、その後の僕の状況も含めてアップデートしたいと思います。
何がなんでも絶対に取得するという覚悟
以前VISA取得の流れをnoteに書いた事もあり、その後いろんな方から相談を受けるようになったのですが、もしあなたがオスカーやグラミー賞を獲った人でない限りVISA取得は簡単じゃありません。
実際にあの渡辺直美さんですら取得するのは大変だったと言っていたほどです。
時間もお金も掛かるし、膨大な資料作りなど精神的にもタフさは必要です。
そしてコアの部分で重要なのがなぜアメリカで挑戦したいのか?という自分の夢。
この夢や目的がしっかりしてなければ仮にVISAを取得できたとしてもあっという間に3年は過ぎただの思い出づくりにしかならないと思います。
もし自分に強い想いと夢があればVISA取得までのプロセスがどんなに大変であっても絶対に乗り越えられるし、絶対に取得できます。
VISA取得に必要不可欠なのは何がなんでも絶対に取るという覚悟です。
僕は日本でもアメリカでも全く無名の日本人アクターですが、それでもVISAを取得できたのは夢を叶えるために絶対に取得するという強い意志と覚悟があったからだと思っています。
てか松坂龍馬って誰ですか?
簡単に自己紹介をさせてもらうと、日本での俳優活動を経て2014年に渡米し2019年にアーティストVISAを取得。2022年にVISAを更新。現在はアクター、演出家、脚本家、プロデューサー、そして2020年のコロナをきっかけにThe Japanese Artists Projectを立ち上げNYに住むアーティストの活動の場を広げる動画を作ったり
(下の動画は世界中でバズりYahoo!News UKでも取り上げられました)
長年の夢の一つ「オフブロードウェイで自分の作品を上演する」ための準備をしていたり(2022年には上演できず現在レーディング公演に向けて準備中)
趣味で始めたラーメン作りをパンデミック後に本格的にビジネスにし起業してみたりしています。ちなみに独身です。
1.弁護士選び
O-1VISA取得までの期間ですが、弁護士を雇ったところからほぼ丁度1年で実際にパスポートにVISAスタンプをもらう事ができました。それ以前はNYで学生をしていたので学生VISA(F-1 VISA)で滞在していて、その間にO-1VISAを取得された俳優の方とお会いして情報を仕入れたり、弁護士を紹介してもらったりググって自分で見つけて連絡したりしました。
弁護士に会う際には相手にVISA取得の可能性を判断してもらうため、箇条書きでいいのでA4用紙2枚ぐらいに自分の経歴をまとめおく必要があります。そして最低でも5人の弁護士と会ってVISAが取れるかどうかの意見をそれぞれからもらった方がいいと思います。
なぜ5人もの弁護士に会う事が必要なのか。
まず一つ目の理由は、自分の中でVISAが取れる!という自信を少しだけでも持つためです。なので最初から自信のある人は先に読み進めて下さい。
僕は有名な映画、TVなどで主役を演じたことはなかったし、ドラマでレギュラーで役をやった事もありませんでした。キャリアは18年ほどありましたが、大きな事務所に入っていたわけでもなくざっくり言うと小劇場、インディペンデント映画、商業映画にそこそこ出演していたぐらいのキャリアです。
もちろんアメリカでのキャリアも全くありません。
学生VISAの時にNYの学生映画に1本出演したくらい。
なので正直VISAが取れるかどうか本当に自信がありませんでした。弁護士を雇う金額も決して安くはありません。
自信がなければそのタイミングで踏み切る事もできなかったと思います。けどもし5人の違う弁護士がこの経歴なら取れるだろうと僕をクライアントとして引き受けてくれたとしたら自信を持てると思ったので5人の弁護士さんに意見をもらいに行きました。
もちろん5人とも初回の面談は無料です。中には初回の面談から$300以上取るところもたくさんあるので複数の人に会うなら日系、アメリカ系関係なく無料でコンサルをしてくれるところを探してアポイントメントを取るのがいいと思います。
結果僕が会った5人の弁護士全員が、これだったらVISAは取れるだろうと言ってくれたので自信にもなりましたし、その後の弁護士選びの基準にもなりました。
そして5人以上の弁護士と会う1番の理由は自分に合った弁護士を探すためです。
VISA取得のプロセスにおいて一番最初に最も重要なのは弁護士選びです。
VISA取得までの1年間、二人三脚で弁護士と密に連絡を取り合い数ヶ月に一回は会ってミーティングもしてきたんですが、信頼関係を築く事は本当に重要だと感じています。
この申請までにかかった1年間と言うのは本当に大変な1年です。中にはストレスを感じない人もいるかもしれませんが、普段あまりストレスを感じない僕でも調べたり準備しなければならない事があまりに多く、ものすごくストレスを感じていました。そんな精神状態の中で弁護士との相性が合わないと言うのは結構キツいと思っています。
僕の友達のアーティストでアメリカ人の弁護士に依頼した人も少なくありません。もちろんやりとりは全て英語です。その英語のやりとりも専門的な言葉が多く出てきたり、自分の過去の活動の事がなかなか伝わらなかったり、普段の外国人とのやり取りではあまり感じない部分でストレスを感じることが多かったと聞いた事があります(外国人の弁護士が良くないわけではありません)。
僕のケースは90%が日本での活動を元に資料を作るしかなかったので、日本の芸能事情がなるべく分かっている人にお願いしたいと最初から思っていました。
例えば日本のことを知っている人であれば月9(テレビドラマ)に出演していたと説明するだけで、そこそこ有名な作品に出ているんだなと伝わると思うんですが、もし知らない人であれば月9が何なのか、フジテレビとは何なのかなど全て1から説明する必要になってしまいます。それを考えた時にその手間は省きたいと思っていたので僕は日本の事が分かる弁護士を雇おうと決めていました。
あとは会って話した時の感覚です。日本人の弁護士でも話していて合わないなと思う人もいたし、物凄く信頼できそうだと思ったアメリカ人もいました。
金額も選定の基準になります。2023年のNYの弁護士費用の相場は$6000~。高ければいいと言うわけでもないですし、安いからと言って悪いわけでもありません。そこはそれぞれの感覚で決めるしかありません。
結局僕はアメリカ人で日本での弁護士経験も豊富で日本語も話せるNYの弁護士に決めました。その弁護士さんとはVISAを取得した後でもたまに自分の活動報告をしたり、1度だけですが外に一緒にご飯にも行ったりしました。1年という長い期間を一緒に資料作りをしていくことを考えると、弁護士との信頼関係を築く事は本当に重要だと思っています。
2.O-1VISA取得の条件(アクターの場合)
オスカー賞、グラミー賞、エミー賞などの有名な賞を受賞した事がある。これがO-1VISA取得の条件です。
本当です。
けどそんな人そうはいませんよね。そもそもそんな人はこのnoteも見てないでしょう。もちろんそれらの凄い賞を取っていればアメリカはVISAをすぐに発行してくれると思います。
またクリントイーストウッドやスティーブンスピルバーグからの推薦状をもらう事が出来るのであればそれだけでVISA取得は確実でしょう。
けどアメリカもそこまでは厳しくありません。オスカーを取っていなくても以下の6項目のうち3項目以上をクリアしていればO-1VISAに該当するとなっています。それがこちらです。
5人の弁護士に会った時、まず言われたのがここに記載してあるVISA取得の為の条件でした。そもそもO-1VISAというのは
『科学、芸術、教育、事業、スポーツにおける卓越した能力の持ち主、または映画やテレビ製作において卓越した業績を挙げた人ならびに、それらの遂行に必要な補助的な業務を行なう人に発給されます。』 となっていて
その判断基準が上記の表の6項目なんです。
どうですか3つ以上当てはまっていますか?
僕は5人の弁護士と会って自分の経歴を見せた段階では、この内の1番目と3番目の2項目しか該当していないとそれぞれの弁護士から言われました。先にも言いましたが僕は大きな作品で主役をやった事もないですし、ドラマのレギュラーもやった事はありません。
そうなるとこの2項目にも該当しないんじゃないの?
普通に考えるとそうでなんですけどね。(秘密があるんです)
弁護士が最初の面談時に僕を判断できる材料は経歴を箇条書きにした2枚の用紙だけです。なのでそこには自分が出演した作品がどんな作品で自分の役がどれくらいの役だったのかは書いておく必要があります。
僕は出演した映画が国内外の映画祭で賞を取っていたものが複数あったのでその事も書いていました。それでも最低ラインの3つのうち2つしか該当していないと言われたのにどうして弁護士からVISAは取得できるだろうと言われたのかというと、それは申請するまでの間にこの6項目のうちいくつかは該当に値する資料を作る事が出来るという弁護士の判断があったからです。
どういう事でしょうか?後ほど説明します。
弁護士との作業の進め方
弁護士との作業の進め方は色々あります。ただ大まかに言ってしまうと高い金額を払えばほぼ弁護士が資料を作ってくれて、金額が下がればその分自分でも資料を作っていかなければならない。
例えば重要な作業の一つとして日本語で書かれている記事や資料は全て英語に翻訳しなければならないんですが、それを自分でやるのか弁護士側がやってくれるのかとかです。もちろん過去の自分の資料を用意するのは金額が高かろうが自分でやらなければなりません。
僕は弁護士とGoogle driveを使ってデータを共有し資料を作成していきました。僕が自分の資料の写真を載せてその説明を英語で書き、弁護士がそれを見て間違っているところを添削したり綺麗に整えてくれました。なので常に自分の資料を自分で確認できていました。
中には弁護士に任せっきりにしていて何ヶ月も作業していなかった事が後から分かったとか、最悪なケースでは渡したはずの重要な資料が使われていなかったことに申請直前で気付いたなんて事もあると聞いていたので、個人的には共同作業で常にチェックしながら資料を作って行った方がいいと思います。
さてここからは実際にどんな資料が必要なのか具体的に見ていきましょう。続きは2019年無名の日本人ActorがアメリカでアーティストVISAを取得するまで②で